平和への使者

Daisaku

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セーヴルの老女

62話 来日した理由

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マリ達は月曜日になり、また長~い学校の授業が終わり、警護官である葉子が迎えに来た車で学校から居住用として滞在しているホテルに向った。マリは体力は無尽蔵というぐらいにあるが、頭の体力はそんなには無いため、今日も学校の授業についていくため、クタクタになっていた。しかし、今日はエマさん達の勲章授与があるため、深呼吸をして、気を引き締めて、
ホテル前に着いた車から降りた。マリの滞在しているワシントンホテルは入り口に車を止められるスペースやエントランスのロビーなど通常のホテルよりも大きく非常に便利な造りになっている。いつも通りエントランスを抜けて部屋に行こうとした時に松田マツがニコニコして
そこに立っていた。

「マリさん、こんばんは」

マリはびっくりして

「マツさん、今日は来られたんですね」

「はい、昨日、葉子から連絡を受けて、驚きましたが、妹分のエマの晴れ舞台と聞いては来ないわけにいきませんもの」

「でも、久しぶりにお会いになるんですよね」

「はい、あの情報部がなくなり、解散後、今までの仕事ではなく、普通の生活をして、平和で穏やかで幸せに暮らしてください。という姐さんの指示をまじめに受け止め、エマ達とは急に連絡が取れなくなったんですよ。フランス情報部のみんなは誠実で本当にすばらしい人達ばかりでしたから」

「そうだったんですか」

「マリさん、それとすみません。今日はおまけが付いてきてしまって、葉子から電話が昨日会った時にちょうどこの子と話していたものですから」

「おまけですか?」

「あんたね~わたしはおまけじゃないわよ」

マツの後ろからヒョイと松田祥子が顔を出した。マリは久しぶりに会った祥子に

「久しぶり~」

とフランス式で抱き着いてほっぺにチュ~をした

「あんた、気持ち悪いのよ。くっつかないでよ」

「いいじゃない。別にここでは女友達はみんなこうしてるのよ」

祥子は顔を赤くして照れた様子でマリを見た。

「ハハハ、祥子も来たのか!久しぶり!」

「ユウキくん、久しぶり、マリと一緒にいるから、毎日大変でしょ」

「いや~マリは優しいし、すばらしい人だよ。大変なのはこっちだよ。こっち」

「こっちじゃないわよ。イブという名前があるのよ。本当あんたは私をイライラさせるのが好きよね」

イブは葉子とそっくりの祥子を見てニコニコして祥子に近づいた。

「あら~葉子がプリティーになったみたいな子、私はイブよろしくね」

祥子も隣にいたマツもこの金髪でとても美しい少女に目をパチパチして驚いた様子で見た。

「マリさん、この人が例の方ですか」

マツは確認するようにマリに尋ねた。

「そうですよ。イブといって、ユウキから聞いてた情報とは全く違い、頼りになるすばらしい人ですよ」

「あの~マリと同級生のイブさんですか?」

「そうね~同級生は仮の姿、私はマリの従者よ。だから、これからもずっとマリの使命をサポートをする存在よ」

「従者?」

「祥子、ちょっとイブの話をしていると時間が無くなっちゃうから、とりあえず私達は部屋に戻って着替えて準備するから、ロビーでちょっと待ってて、マツさんもしばらくここでお待ちください」

「はい、お待ちしてます」

マリはニコっと笑って部屋に戻って行った。祥子はイブを見て不思議そうな顔をしていたが、
エントランスの前で待機している葉子を見つけ走って近づいた。

「姉さ~ん」

「久しぶりね、祥子」

「久しぶり姉さん、姉さんずるいよ。私に内緒でフランスに来るなんて」

「ごめんね。あなたに言うと、だだをこねて、すぐに付いてきそうだったから」

「姉さんだって、前に警護の仕事は退屈だから、本庁に戻りたいって、言ってたじゃない」

「あの時はね、まだ、マリさんが動き出す前だったし、そういう時もあったけど、今はね~」

「今はなんなの。姉さん」

葉子は毎日ではないが、今日も含め、色々な事件や想像を絶することに遭遇して、自分がその場に立ち会い、活躍できる場があることに異常なほどの喜びを感じていた。世界広しといえど、
宇宙人やら、歴史の神秘、人類を凌駕する科学技術などに接することができる自分はチョーラッキーなんて、いつも思っていた。葉子は祥子の前でニヤニヤしてしまった。

「姉さん、ニヤニヤして気持ち悪い」

「あら、ごめんなさい。とにかく、私はマリさんの警護官をやめるつもりはないわ」

「はあ~、なんか姉さんは生きがいのある仕事を見つけったって感じでいいな~」

「祥子もそのうちに見つかるわよ」

「おばあさまが何度、お願いしても、ここで生活するのを許してくれないんだよね」

「あんた、おばあさまの学校に入ったばかりなんだから、そこをすぐに出たら、おばあさまだってお父様だって悲しむわよ。絶対」

祥子はものすごく葉子がうらやましかった。マツも祥子に近づいてきて

「葉子!」

「おばあさま、お久しぶりです。昨日は急な連絡ですみませんでした」

「なに、行ってるんだい、エマに合わせてくれるんだから、こっちが礼を言いたいぐらいだよ」

「おばあさま、昨日は細かく話せなかったんですけど、実は今日、アベル大臣の他にもう一人エマさん宅に来られる方がいまして・・・」

「なんだい、ベル坊だけじゃなかったのかい?」

「はい、セキュリティーの関係で当日ギリギリに直接、おばあさまに合って話すことになって申し訳ありません。マリさんの交渉した結果、来ていただけるようになったものですから」

「姉さん、マリが呼びつける人って誰なの」

祥子も隣で興味深々で葉子に聞いてきた。

「誰なんだい、葉子その人ってのは」

「あの~こんなロビーの真ん中で話すことではないので、あちらの隅のソファーで話をしましょう」

3人はモダニズム建築で造られた奥のテラスのアンティークなソファーに腰を下ろした。

「いいですか。我々以外にこの話はぜ~ったいにしないでください」

「なんだよ、葉子もったい付けて」

葉子は一息、間を空けて小さい声でつぶやくように

「大統領がきます」

「え~姉さん、誰がくるの?」

「祥子、声がでかいわよ」

「フランスのフレデリック大統領が20時にエマさん宅にお忍びで来られ、直に勲章を授与されます」

「なんだって、マリさんが交渉して来る人が大統領だって!」

マツは頭をかかえた。

「はあ~全く、やっぱり姐さんの孫だね。頭に血が上るとこれ以上ないといった人まで呼んで事を収めようとする」

「姉さん、マリが呼びつける人って、フランス大統領なんですか?」

「そうよ。だから、あんたには前から言っているけど、なぜ、おばあさまがマリさんに敬語で接しているか。それは、この世界、人類の救世主として選ばれた方だからよ。マリさんはここに来てから、次々と偉大な協力者を増やしていっているわ。祥子も同級生のマリさんに敬語を使えとは言わないけど、何もしてないマリさんに生意気な口だけはきかないようにしてよ。これは姉として、いや、松田家としての命令よ」

祥子は日本の学校でマリのことを真っ先に気に入らない子だと思っていたのは、たぶんマリが自分には持っていない物を持っていたからなんだと、この時はじめて、わかったような気がした。
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