平和への使者

Daisaku

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古代の悪魔

33話 協力者

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車に乗り込み松田邸へ向かった。外は5月というのに蒸し暑く、汗が少し出るような温度だったが、車の中はひんやりと冷えており、日本の高級車ということもあり、快適な乗りごこちだった。

「ユウキさん、先ほどの話のつづきよろしいですか」

「そうでしたね、葉子さんも見たと思いますが、あの赤い球体の件です、詳しくはいえませんが、マリと僕は今日からフランスに行くことになりました、しばらく、準備ができるまでは、日本と往復しますが、数日後からは本格的に向こうで生活するようになります」

「本当ですか!」

「はい、そういうことなので、短い間でしたが、警護は松田邸に着きましたら、終了ということになります。お疲れさまでした」

「ちょっと待ってください。そんないきなり、一方的に言われても困ります。上司に報告して今後の対応を検討します」

「お手数をかけることはありませんよ。これで葉子さんも本庁に戻り、エリート官僚になれるじゃないですか」

「とにかく、松田邸に着きましたら、確認を取りますので、勝手に向こうに行かないでください」

「こちらは一刻を争う事態なので、葉子さんや警察のご都合に合わせて行動などできませんので、とにかく松田邸までよろしくお願いします」

しばらくして、松田邸に到着した。入り口にはめずらしく、マツが立って待っていた。

「お二人とも、おはようございます、1階の応接室で話は伺います」

そう言われて、屋敷の入り口に近い、応接に案内され、大きめのソファに腰をおろして、

「それで、マリさん、これから、どうされますか」

「さっきユウキくんと話したんだけど、あの赤い球体はとても危険で、人類の存亡に関わる重大なことであり、どうやらその発信元はフランスのパリ付近だということはわかっています。そのため、二人でしばらくフランスに行き、原因調査と人類に被害がでないように対処したいと考えています」

「マツさん、急で申し訳ないですが、ユウキくんと私をしばらく休学にするか、もしくは、フランスの学校に留学という形にしてもらえないですか?」

マツはしばらく考えた様子で

「そうね、やはり休学より、留学の方がいいかもしれないわ、けれど、1か月ぐらいなら休みを取ったとしても、テストの点さえよければ、問題ないけど、とにかく、しばらくは病欠ということにして、今後の対応は考えましょう。とにかく、今は原因となるものは突き止めて
解決することに集中した方がいいでしょ」

「ありがとうマツさん、それと、フランスで昔の知り合いでもいいんだけど、諜報員のような情報収集能力にたけた人材を紹介してもらえないですか?」

「そうねえ・・・」

マツはしばらく考えた

「フランスだと国内では国土監視局DSTに頼んだ方がいいんだけど、融通の利く人ねえ」

「そうだわ、フランスの坊やに頼もうかしら」

「坊や?」

「そう、アベル坊やに」

マツは執事の黒川に急いで、またあの電話を持ってこさせた。

「プルルルル・・・・」

「こちら、アベル邸でございます」

「こんばんは、わたくしは松田マツと言いますが、アベル坊やはそちらにいるかしら」

「坊や?」

「あら、あなた、私を知らないの、雇われて日が浅いのかしら、いいからアベルにつないで」

「誠に申し訳ありません。この電話は重要な回線電話になっております、見ず知らずの方はお取次ぎできかねます」

そう言って電話を切られてしまった。マツはがっかりした様子で

「相変わらず、何においても詰めの甘い坊やだね」

そう言ってため息をついた。

「マリさん、また、悪いけど、フランスパリ在住アベル・オルクレール邸まで、ユウキさんに頼んで、私も一緒に移動させてもらえないですか」

「はい、わかりました。ユウキくん、お願い」

「アベル邸?元首相で現国防大臣のアベルだね。了解」

三人の体が赤く光、瞬間移動が発動した。

アベル・オルクレール、第二次世界大戦終結時にフランスにおいて、10歳にして情報局のお手伝いをしていた子供、子供のため、警戒されることもなく、あらゆるところに潜り込み、秘匿な情報を収集していた、少年部隊で活躍、飛島ヤエや松田マツの情報局にも大変重宝がられ、
戦後、成人してからは、飛島ヤエの資金提供と人脈をもらい、政治家として、その名をはせた人物、しかし、誰かの部下として働くのは優秀だが、リーダーのような、人をたくさん使う仕事になると、いつも詰めが甘く、失敗をする、本来なら、その功績から、大統領になっていてもおかしくはなかったが、やはり、最後の詰めがあまく、参謀に甘んじてきた男である。

パリは深夜0時30分、アベルは邸宅のラウンジで大好きなワインとクラシックの音楽を聞きながら、読書にいそしんでいた。もう80歳になるが、まだ、活力は衰えず、その前向きな思考力も健在だった。そんな時、深夜だというのに、急に部屋が明るくなった。アベルはまぶしくなり、目を閉じた。そして、目を開けた瞬間

「ベル坊!、起きてるか!」

松田マツがアベルに声をかけ、アベルの前に急に3人が現れた。アベルはびっくりした様子で

「誰だ、勝手に部屋に入ってきて」

と大声を出し、机下の緊急の非常ボタンを押した、邸内・外にに非常警報がなり、発信源となるラウンジに5人ほどの守衛が飛び込んできた。

「おい、お前ら、何をしてたんだ、侵入者がいるぞ、ただちに捕まえろ!」

マリやユウキはビックリした顔で

「マツさん、あの~お知り合いじゃないんですか?」

「マリさん、50年ぶりぐらいだからね、どうやら、あれだけ助けてやった恩人の顔も見忘れるなんて、相変わらず、詰めの甘い男だね、ふ~」

「マツさん、どうします?守衛がきますよ」

「マリさん、彼らは防護服も着込んでいるみたいだから、思い切り倒して結構ですよ」

マリは笑みを浮かべながら

「思い切り・・・いいんですね」

そう言った瞬間、マリは神風のように守衛に走っていった。

「バチン、バチン・・・」

と風を切るような音がなり、松田松濤館流気功波で次から次へと天井高く、気持ちのいいぐらい、守衛は飛んで行った。1分もしないうちに守衛全員、気を失ってしまった。
アベルはそのマリの動きを見て、ようやく、過去の恩人のことを思い出した。

「その動き、強さ、もしかしてヤエさんとマツさん・・・」

「ベル坊、あんたは気づくのが遅すぎるよ」

アベルは目に涙を浮かべながら

「マツさんですか、ずいぶんお年を召されましたね」

「あんただって、もう老人じゃないか」

懐かしいあまり、二人は言葉がしばらくでなかった。

「あれ?ヤエさんとユウキさんは昔のままですね?どうしてですか?」

「あの~、再会して、感激するのはいいんですけど、守衛のみなさん、早く救急車を呼ばないと、皆さん、骨折や打撲、かなり重症の人もいますよ」

マリは大きい声で二人に向かって声をかけた。

「わかりました。すぐに救急車を呼びます」
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