平和への使者

Daisaku

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古代の悪魔

32話 赤い悪魔

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マリは松田グループや武術の決闘、そしてイギリス女王への謁見など、めまぐるしい1日が終わり、やっと自宅に帰宅した。外はもう薄暗くなっており、せっかくの休日が終わろうとしていた。だが、おばあちゃんの話をたくさん聞くことができてマリは大変有意義な1日だったと思った。ユウキとも先ほど別れ、今日は早く寝ることとした。

翌日、いつも通り、朝稽古を行い、自宅主屋に戻る時に空に気になるような物体を感じ、空を見上げたら、不思議な赤い球体が飛び回っているのを確認した。無数に飛び回る球体に異変を感じ、マリはユウキにすぐに連絡した。

「もしもし、ユウキくん、ねえ外を見てみて。たくさんの赤い球体が飛び回っているよ。虫とかじゃないとおもうけど、ユウキくん、これ何かわかる?」

ユウキは慌てて、窓を開けて、空を見た。そして、はるか昔、恐ろしい異星人の記憶が蘇ってきた。そして、人類への脅威がすぐそこに近づいているのを悟った。

「ユウキくん、見えた。すごい数だよね。テレビでも大騒ぎだよ。ここだけでなく、世界中のいたるところにこの球体は現れているみたいだよ」

ユウキは信じられない思いで、しばらくその球体を見つめながら、マリに回答すらできないほど色々な考えが頭をかけめぐった。

「マリちゃん、今から家に行くよ。そこで話そう」

「うん、わかった。待ってるね、朝ご飯もうちで食べていきなよ」

「そうだね」

ユウキはいつも元気でクールな男だが、今だけは、考えがまとまらない、異常事態に戸惑う気持ちを抑えることに努めていた。

「ピンポ~ン」

「あ、ユウキくん、おはよう」

「おはよう、マリ」

「中に入って、別室に朝食も用意してるから」

ユウキは頷きながら、奥の客間に上がった。

「ふ~、なにから話せばいいかな」

ユウキはめずらしく、考えた様子でしばらく黙ってしまった。

「赤い球体はさっきニュースでみたけど、ヨーロッパの方から飛んできたみたい、誰かが、実験でもしているのかな」

「実験じゃあないよ。もう1万年近く前に絶滅した星サターン人の技術だよ」

「サターン人?なんか悪魔と同じ名前だね」

「そう、悪魔というべき存在、我々も永きにわたり、あらゆる対処をしてきたけど、まるでイナゴのように次から次へと惑星を侵略していき、この銀河系すべての生態系を破壊する勢いがあったけど、なんとか食い止めることに成功したんだ」

「こわいね。人や生き物をたくさん殺して、侵略してしまうなんて」

「殺す?」

「悪魔のような存在なら、当然、生物を殺して侵略するんでしょ」

「サターン人は直接、だれも殺さないよ」

「悪魔なら、殺すでしょ、普通」

「直接、手を汚して殺したりは絶対にしないよ」

「それじゃあ、悪魔じゃないでしょ。どういこと?」

「彼らは、僕達と同じ、不老不死の技術を得てから、基本的に地球人とは時間の概念が違うんだ。すぐに生命体を直接殺さなくても、時間をかけて、減らしていき、最後にはいなくなってもらえばいいんだ。そして、都市や街をこの世界でいうと、そうだな、居ぬき物件のように、すべての施設を再利用させてもらうんだ。なにしろ、都市を作るには、大変な時間がかかる、そこのシステムもその世界の生命体がいなくなる時間で無数のアンドロイドに覚えさせるんだ」

「なんか、すごい話だね」

「ユウキくん、ごはん食べないと冷めちゃうよ」

「あ~、いただきます」

ユウキは朝ご飯を食べながら、また話し出した。

「マリ、急なんだけど、この件は人類存亡に関わる重大なことなんだ。高校入学したばかりで、悪いんだけど、マツに言ってフランスにしばらく留学という形で日本を離れ、むこうで
調査して、原因となる物を見つけ、ただちに対応しなければ、この世界から人間は消えてしまうことになる」

「留学!やっと高校になれてきたところなのに、でもユウキくん、前にも言ってたけど、人類滅亡する重大事はまだ、10年以上は先だと言ってなかったっけ」

「そう、そのはずなんだけど、どこかの間抜けな人間が起こさなくていいものをどうやったかはわからないけど、起こしてしまったんだ、幸いなことにサターン人はこの赤い球体でこの世界をサーチしてから、ゆっくりと準備に入るから、比較的、時間的な猶予はあるんだけど」

ユウキは朝ご飯を食べ終わって

「ごちそうさま、さあ、マリ、これからすぐにマツさんのところに行こう。とりあえず、僕が連絡しておくから、準備ができたら、すぐに行こう」

「ちょっと、待って、準備って今日これからフランスに行くの?」

「そうだよ」

「そんな、今行くって、そんなにすぐ準備できないよ」

「マリ、とりあえず今は着替えて準備して、あとで、瞬間移動で戻ってきて、今日の夕方にでも準備すればいいし、ご両親にも、学校の先生から話してもらえるようにすれば、大丈夫でしょ」

マリは急な話にとてもついていけないと思ったが、おばあちゃんの想いがいつも心にあり、
どんなことがあっても負けないという気持ちが自分の体を奮い起こした。

「ユウキくん、わかったわ。すぐに支度して行きましょう」

ユウキはマリがすぐに対応したことがとてもうれしかった。すぐに、外で警護で待機している松田葉子にユウキは連絡した。

「もしもし、ユウキです。おはようございます」

「おはようございます。どうしました?ユウキさん」

「今日の警護は葉子さんでしたよね」

「そうですよ」

「悪いんですけど、今日はこれから、マツのところに緊急で伺いますので、自宅まで車で送っていただけませんか」

「はい、もちろんかまいませんよ。でも急にどうしたんですか」

「とりあえず15分したら、出発しますので、詳しくは車内で話しますよ」

「承知しました」

「プルルルル」

「はい、こちら松田邸です」

「おはようございます。ユウキです。黒川さん、すみませんがマツは在宅でしょうか」

「はい、会長なら、今、こちらで朝食を取られていますが」

「大変、急ですみませんが、マツに電話をつないでいただけませんか」

「承知しました。しばらく、お待ちください」

「ユウキさん、おはようございます」

「おはよう。マツ・・・」

マツはすべて見透かしたように、ユウキの言葉を遮り、

「赤い球体の件で、緊急事態ということでしょ」

「フ、そうです」

「どれくらいで、こちらに来るのかしら?」

「そうですね、あと30分くらいでしょうか」

「わかったわ。お待ちしてるわ」

ユウキは相変わらずのマツの対応の良さに緊急事態だというのに昔を思い出してすこし笑ってしまった。

「ユウキくん、準備できたよ」

「それじゃあ、行こう」

玄関では母エリが不思議な顔で

「あら、マリ今日は学校じゃないの?私服で行くの?」

「お母さん、学校の理事長と話があって、今日は特別なの」

エリはまた、不思議そうな顔をして

「まあ、いいわ、ユウキくんも一緒みたいだし、気を付けていってらっしゃい」

「お母さん、朝食、おいしかったです。ありがとうございます」

「あら、半分はマリも作ったのよ、ユウキくんも気を付けてね」

「はい、行ってきます」

二人は家の前で待機していた、松田葉子の黒塗りの車に乗り込んだ。
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