平和への使者

Daisaku

文字の大きさ
上 下
2 / 180
平和への使者

1話 恐怖の出会い

しおりを挟む
山に囲まれ、たくさんの木々が風にゆられ、漆黒の夜を一人の少女が空を眺めていた。
たくさんの星々が自分にふりそそぐがごとく、その輝きを放っていた。
そのひとつ、ひとつの光は何千・何万・何億年も違う時から放たれた光であり、
今ここにいる自分が一つの時間の流れにいることを忘れてしまいそうだ。
少女は星空を見ながらこれからの自分の可能性を模索していたが、美しい星々を眺めているうちにそんなことはどうでもよくなっていた。

「今日は星がすごくいっぱいだな~」

絵を描くことが好きなこともあり、いつものように、今日は夜の景色をスケッチしていた。
地平のかなたのひとつの輝く星を見ていた時だった、その星の輝きがだんだん増してきた。

「あれ、なんだ、すごい光っている」

その輝きが自分の方に近づいてきたその瞬間

「シュ~」

すごい音ががなり、辺り一面が目を開けられないくらいに輝いた。
しばらくして閉じた目を開けると一人の男が立っていた。

「ふ~、無事に着いたか。あれ。夜か。予定した場所と時間が少しずれたな」

少女は突然目の前に現れた男に驚いた。

「あなた、だれ?」

男は辺りを見回しながら、目の前にいる少女に驚いたように

「あれ、目の前にいる・・、離れた場所じゃない」

男はつぶやいた。

しばらく考えてから男は

「僕は、人間だけど 」

おびえる少女にやさしい声で答えた。

「わたし、おうちに帰ります」

少女は突然、目の前に現れた男を怖れ、おそわれて、殺されるのではないかと考え、
震える声で話した。

「どうぞ、お帰りください。僕は怪しいものではありません」

少女はそんな言葉はとても信用できないと思い、急いで、丘の上にある自分の家に帰ろうと歩き出した。今いるところから歩いて10分のところだ。少女は早く両親のいる家に帰りたいと心底思い、
気が付いたら、全速力で走っていた。やっと緑道を抜け、愛しの我が家が見えてきて、
ほっとした。夜の10時にこっそりと家を抜け出して、家を出てきたことなど、もうどうでもよかった。早く家族に会いたい。怒られてもいい。
今のこの恐怖に比べたら、どうってことないと思った。家の前の小さな門をあけて、ほっとした時だった。ふと、後ろを見ると、さっきの男が笑顔で真後ろに立っているではないか。
その時、

「キャ~!」

「お母さ~ん」

叫んでしまった。家にいる母親がその声に気づき、

「マリどうしたの?」

母が家から出てきた。お母さんに抱き着き

「変な大人の男の人がずっと私を付けてきて、こわかった」

震える声で説明した。

「 、 、 、本当?」

母は急いで外に出て辺りを見渡した。

「そんな大人の男の人、どこにもいないじゃない」

すると、自宅の門の横にある壁の後ろに一人の男の子が立っていた。

「うちのマリに何か御用ですか。警察に連絡しますよ」

よく見るとマリと同じくらいの中学生くらいの男の子だった。

「うちの娘と同じ学校なの?それでも女の子を付け回すのは犯罪よ」

男の子はあまりにも怒られたのでびっくりした様子で

「すみません。最近、近所に引っ越してきたんですけど、親が共働きで遅いんです。お腹がすいて、近くのお店に買い物に行こうと思って歩いていたら、その子が急に大声をだしたので」

母は何となく、その言葉を信じた、マリは人見知りがひどくて、自分の気持ちを外に
出せない子供だからだ。

「あんたと同じくらいの男の子じゃない」

マリは恐る恐る、その男の人を見てみたら、
自分と同じ中学生ぐらいの男の子がそこに立っていた。
あれ、さっきの人はどこ?

「あんた、ただ歩いている子に驚いたの?本当に憶病なんだから。
だいたい、夜中にこそこそ家を出て、こんな時間に何を考えてるの」

母にしかられて、いつもなら、腹が立つのに
今日はこの声がとてもあたたかく感じた。

「あら、あら、ごめんなさいね。最近、近所に越して来たなんて知らなかったわ、そうだ。
あなた、今晩のごはんのあまりがあるから、もしよかったら、持っていく?
ちょっとこっちに来て、待ってて」

暗がりからその少年が玄関口まで歩いてきた。たしかに自分と同じくらいだなとマリは思ったが、
明るいところでその顔をみたら、さっきの大人の男と同じ顔ではないか。
マリは体が震えて、その場から動けなくなった。

「ひどいな~急に走っていなくなっちゃうんだから」

マリは何が起きているのかわからず相変わらず震えていた。

「どう、さっきの話し方、中学生っていう感じだったでしょ」

マリは何で急に若くなったの?この人なんなのともう訳がわからなくなった。

「ごめんね。残り物でこんなので良かったら持って帰って」

マリは震えながらも母が見ず知らずの人でも優しく対応してくれているのを見ると
私、ママのそういったところは好きだなと思った。

「ありがとうございます。こんなにいっぱい」

「育ち盛りなんだからね。いっぱい食べなきゃね」

その少年は笑顔で

「今度、士留場中学に転校する、ユウキと言います。これからよろしくお願いします」

マリを見て笑いながら頭を下げてあいさつをして、その少年は出ていった。

「イケメンでいい子だね」

マリは震えが止まらず、リアクションも取れずにいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

公爵に媚薬をもられた執事な私

天災
恋愛
 公爵様に媚薬をもられてしまった私。

お兄様、奥様を裏切ったツケを私に押し付けましたね。只で済むとお思いかしら?

百谷シカ
恋愛
フロリアン伯爵、つまり私の兄が赤ん坊を押し付けてきたのよ。 恋人がいたんですって。その恋人、亡くなったんですって。 で、孤児にできないけど妻が恐いから、私の私生児って事にしろですって。 「は?」 「既にバーヴァ伯爵にはお前が妊娠したと告げ、賠償金を払った」 「はっ?」 「お前の婚約は破棄されたし、お前が母親になればすべて丸く収まるんだ」 「はあっ!?」 年の離れた兄には、私より1才下の妻リヴィエラがいるの。 親の決めた結婚を受け入れてオジサンに嫁いだ、真面目なイイコなのよ。 「お兄様? 私の未来を潰した上で、共犯になれって仰るの?」 「違う。私の妹のお前にフロリアン伯爵家を守れと命じている」 なんのメリットもないご命令だけど、そこで泣いてる赤ん坊を放っておけないじゃない。 「心配する必要はない。乳母のスージーだ」 「よろしくお願い致します、ソニア様」 ピンと来たわ。 この女が兄の浮気相手、赤ん坊の生みの親だって。 舐めた事してくれちゃって……小娘だろうと、女は怒ると恐いのよ?

離縁してほしいというので出て行きますけど、多分大変ですよ。

日向はび
恋愛
「離縁してほしい」その言葉にウィネアは呆然とした。この浮気をし、散財し、借金まみれで働かない男から、そんなことを言われるとは思ってなかったのだ。彼の生活は今までウィネアによってなんとか補われてきたもの。なのに離縁していいのだろうか。「彼女との間に子供ができた」なんて言ってますけど、育てるのも大変なのに……。まぁいいか。私は私で幸せにならせていただきますね。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪

百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。 でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。 誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。 両親はひたすらに妹をスルー。 「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」 「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」 無理よ。 だって私、大公様の妻になるんだもの。 大忙しよ。

夫が大人しめの男爵令嬢と不倫していました

hana
恋愛
「ノア。お前とは離婚させてもらう」 パーティー会場で叫んだ夫アレンに、私は冷徹に言葉を返す。 「それはこちらのセリフです。あなたを只今から断罪致します」

処理中です...