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73、無事でよかった
しおりを挟む「おはようございます。ルビア様」
「っ!ジェーン!それに、ミリアナも!」
目を覚ました私に気付いたジェーンが挨拶をしてくれる。その後ろでミリアナも私に笑いかけてくれてるのが目に入り飛び起きる。
「2人とも無事だったんだね!」
「はい。私たちはただ眠らされていただけですので、なんともありません」
「心配していて頂きありがとうございます。ルビア様とアイリ様がご無事で本当に良かったです」
元気そうな二人を見てホッとする。二人とも無事でよかった…。
「皇帝陛下が身を呈して私達を守ってくださったから…。そのせいで、陛下が怪我を負ってしまった、けど……」
「そのようですね…。やはり、愛する人に危険が迫っているのを見て身体が勝手に動かれたのでしょうね」
リアム様の落馬の時も皇帝は身を呈して守っていたし、今回もアイリが危険に晒されて咄嗟に動いてくれたんだろうな。とミリアナの言葉に納得する。
だけど、私があの時素早く回避出来ていたら、皇帝が怪我をする事はなかったはずなのに…。
皇帝の怪我の具合はどうだったんだろう…。
ジェーンとミリアナがいつも通り過ごしている所を見ると、皇帝が亡くなった、という事は無さそうだけど。
「私は少し前からルミリオ陛下がルビア様に恋愛感情を抱かれていているのではないかと疑っていたんですよね…。今回の事で、私の勘は正解だったと証明されましたね」
「…………?何を言っているの?皇帝陛下が私にそんな感情を抱くはずがないでしょ?陛下はただ、アイリを守ろうとしてくださっただけだよ」
いきなり何を言われたのか理解出来なくて反応が遅れる。少し間を置いてから楽しそうに話すジェーンにそう言えば、ジェーンだけでなくミリアナまでなんとも言えない複雑そうな顔をされた。
その顔は一体どういう意味なんだろう…。
「それより、皇帝陛下の容態がどうかわかる?」
「それでしたら、命に別状は無いそうです。傷は残るそうですが、奇跡的に臓器などに損傷はなく、今は部屋でゆっくりとされています」
「そっか…。それなら、良かった…」
命に関わるような傷じゃなくて本当に良かった…。
「後でお見舞いに行かれますか?」
「うん、そうしようかな。それと、リアム様にも会えるかな?」
「リアム様は現在、皇帝陛下の部屋で休まれているので、お見舞いに行かれた際にお会い出来ると思います」
「そっかぁ…」
リアム様は皇帝の部屋に移してもらったんだ。大好きなお父さんと一緒の部屋になれて良かったね。後は、元気だったら言うことがないんだけど。
「リアム様は、まだ目を覚まされてない?」
「はい、そのようです…」
「そっかぁ…。それじゃあ、メリーの様子はどう?」
「昨夜、ルミリオ陛下が運ばれた後に、アレックス様によりお医者様に診ていただいた様ですが、まだ意識は取り戻せていないそうです」
「そう…」
リアム様もメリーもまだ目を覚まさないのは心配だ。リアム様に関しては毒で目を覚まさないのだから、本当に目を覚ますのか、目を覚ましても後遺症が残らないのか気が気じゃない。
「朝食後にアイリと一緒に皇帝陛下の部屋に訪れても良いか聞いてきてもらえる?」
「かしこまりました」
「ルビア様の訪問なら断る事はないと思いますけどね」
「そうかなぁ?」
何を根拠にそう言うのかは分からないけど、ジェーンが茶化すようにそう言ってくる。立場を考えるなら注意した方が良いのだろうけど、軽口を言い合えるほど仲良くなれたのは嬉しいのでそのままにしておく。
「私の目に狂いはありません!ルミリオ陛下はルビア様を愛しておられますから!」
「ふふふ、またそんなこと言って…」
思えば、ルビアの身体に入ってから、この2人にはすごく助けられた。ルビアがあそこまで耐えることが出来たのも、きっとこの2人が居てくれたからだろうな。
どれだけイライラしてキツイ言い方をしたとしても、ここに来てからずっと一緒に居てくれて支えてくれたのは、この2人だけだったのだから。
「ジェーン、ミリアナ、いつもありがとう。2人がここに付いてきてくれて本当に良かった」
「いきなりどうされたのですか…。私はルビア様に感謝していただくようなことは何もしておりませんよ」
「そうです。それに、ルビア様と共に城へ参りたいと申し出たのは私達なのですから、私達の方こそ、連れてきていただいて感謝しております」
「そう、なの…?」
2人が付いてきたいと言ってくれたなんて、初めて知った。多分、これはルビア自身も知らなかったんじゃないかな…。
「ルビア様は知らないと思いますが、ルビア様と共に行きたいと言う人は結構いたんですよ?」
「本当にあの時は大変でしたよ。屋敷中の使用人がルビア様と城へ行く席を奪いあって、やっとの事で私達が選ばれたんですから」
「そんな事があったんだ…」
ルビアの記憶が曖昧だから、公爵家での記憶がほぼ無くて分からないけど、ルビアは相当屋敷で慕われていたみたいだ。
それなら、ここで不等な扱いを受けていたと知ったら屋敷の人達はかなり怒るんじゃないかな…。
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