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私のお母様と妹は、びっくりするほど金遣いが荒い。
元々お母様は上流貴族出身で、下級貴族のお父様とは結婚するはずのない人だった。
だけどどういう運命のイタズラか、2人は恋に落ち貴族では珍しい恋愛結婚をすることになり、お母様はお父様の家に嫁いで来た。


恋愛結婚なんてロマンチックだという人もいるかもしれない。だけど話はめでたしめでたしでは終わらない。


元々上流貴族として育ってきたお母様の金銭感覚はお父様とは違い過ぎた。
下級貴族で稼ぎもそこそこしかない家で、上等なドレスや宝石などを好き勝手買っていればどうなるかなんて火を見るよりも明らか。


お金はすぐに尽きていく。
だけど、お母様は買う事を止められなかった。
いや、止めようとはしなかった。
そしてお父様も、お母様の悲しむ顔かみたくなくて止めようとはしなかった。


そんな両親のせいで、我が家は私が生まれた頃には立派な貧乏貴族と成り果てていた。
前世の記憶を持って生まれた私は、これアカンやつや!と早々に察して両親にお金の使い方を諭そうと何度も試みたが暖簾に腕押し。


そして後から生まれた妹はお母様そっくりで幼い頃からお買い物大好き。お母様と一緒にドレスや宝石を買い漁って、借金がどんどん膨らんでいった。


私はそんな二人を見て、身体がしっかりと動くようになってからは、家がいつ没落しても大丈夫な様にバイトをしてお金を貯め初めた。


私がバイトをし始めて十数年。
案外家は没落しなかった。
私もいつしか学校へ行く歳となり、学校へ入学。
の前に、バイトで稼いだお金を隠していたマジックバックの中身を確認しておいた。


十数年も貯めていたからそれなりの額になっているだろ。
そう思って開けたマジックバックはーーー。


「空だったんです」
「……どういうこと?」


そう思いますよね。
それを知った時、私も同じことを思いました。


「実は…お母様と妹が、ずっとそこからお金を取って遣っていたんです」
「…………嘘だろ?」
「本当です。2人に問い詰めたら、私達のためにお金を入れてるれてるんだと思った、って悪びれることも無く言うですよ。もう愕然とし過ぎて怒ることすら出来ませんでしたよ」


隠していたはずのものを自分たちの為に置いてくれていると思ったって、一体どう言う感覚なのか私には理解で来ない。
本当にあの二人とは性格が合わないとつくづく思う。


だけど、あんな二人でも私の家族。
あと金が絡まなければそれなりに良い母親で可愛い妹なんだよね。だから嫌いにはなりきれないし、完璧に縁を切りたいともまでも思えない。


でも、お金が絡むと本当に無理。
きっと今回の売上の事もどこかで聞き付けて自分たちの言いように解釈して搾取しようとしてくるはず。
売上とはいえ、推しからもらうものを奪われるなんて本当に無理!


「エマが売上の受け取りを拒否したのはその2人が理由?」
「概ねの理由はそうですね」


残りの理由は前世で電卓を初めて作った人に申し訳ないから。


「そう…。じゃあ、計算魔道具にエマが関わっているって言うのは俺とエマだけの秘密にしておく」
「?エリオット様以外は、私が関わっている事を知らないんですか?」
「ああ。もしエマが考えたものだって知ったら、他にも何か有るだろうと思ってエマを奪いに来ようとする奴らもいるだろうからね」


私がどうして前世の知識を使おうとしなかった理由を的確に察してくれている…!


いや、前世とかは知らないだろうけど、私が発案者だということを言わないでほしいと言った理由に気付いていたんだ。
流石、好きな人の表情を見ただけで色々察せる人!


「目立っていい事なんてあまりありませんよね。私は平穏に暮らせればそれでいいので、発案者だなんて大それた肩書きは荷が重いです」
「分かった。エマの平穏は俺が守るって約束するよ」
「ありがとうございます」


よかった。これであの2人からまたお金を奪われる可能性が低くなった。
だけどまだ油断しちゃダメだ。どこから嗅ぎつけてくるか分からないもんね。
前に貯めていたお金だって、本当に見えにくい場所に隠していたはずなのにバレていたし。


「エマが小さい頃から働いていたのって、もしかしなくても母親と妹のせい…?」
「そうですねぇ。元を正せばそうなりますかね。あ、お茶が無くなりそうなので用意します…ね?」


あれ、立ち上がろうとしたのに腰をがっちりホールドされてて立ち上がれない。


どうして?


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