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しおりを挟むとりあえず、適当に誤魔化しておこう。
「でん、たく?私、そんなこと言いました?」
「うん、後、ヒョウケイサンソフト?も」
うわぁ、全く誤魔化せないやつだこれ。
初めて聞いた単語なのにちゃんと聞き取れて復唱出来るなんて流石天才キャラ。流石私の推し!
だけど今は聞き流してほしかった…。
「で、それってなんなの?この書類見て言ってたみたいだけど、これとなにか関係があるの?」
書類見てたのまでバレていたのか…!
流石、ヒロインが落ち込んでいることを一目見て気付ける当て馬!洞察力がすごい!
洞察力がすごいって事は、下手に誤魔化してもバレる可能性が高いってことですよね…。
「電卓というのは、数字と計算記号を打ち込めば自動で計算してくれ道具のことです」
どうせ誤魔化しても追求されれば直ぐにゲロっちゃうだろうから潔く話した方が楽。人間あきらめが肝心。
「そんな道具があるんだ。ふーん」
私の頭に顎を置いて、なにかを考えるように書類を手放して私を両手で抱きしめてくる。
いやいや、待って!
考えるにしてもこの体制はおかしい!
書類のことが気になってこの体制のことを忘れていた私もおかしいけど!なにゆえ私を膝に乗せて抱き締めるのですか!?
「ねぇ、その見た目とかここに書ける?」
「た、多分…」
もう心臓が口から出そう!
電卓の絵を描けって、描いたら解放してくれるのかな。
ならすぐにでも描きますとも!
よく売ってる一般的な電卓を…。
「なるほどね。この数字達を打って横にある計算記号を打ち込むのか…。なら、例えばこの書類に書かれてる数字を計算するなら、こんな感じで打つの?」
エリオット様が電卓の絵の電卓に、書類に書かれた数字と計算記号を打つ仕草をする。
初めて電卓というものを知っただろうに、使い方が完璧だ。
流石天才!
だけど、数字を打つために少し前のめりになるのは分かるけど、そのせいで背中の密着度が上がった気がするんですが!
え?なに!?すごいい匂い!推しの匂いに包まれるなんて、魔術大会以来なのだけど!まさかこんな幸福をまた味わえるとは!もうこのまま眠りにつきたい…。
じゃなくて!
どうしてまだ私の事を抱き抱えているんですか。
電卓の絵を書いたんだから離してよ…もう心臓が持たないよ…。
「これであってる?
「は、はい!流石エリオット様、飲み込みが早いですね」
「エマの説明がわかり易かっただけ。で、これってどこで買えるんだ?これがあれば計算が早く終わりそうだから欲しいんだけど」
「えっと…」
多分、この世界には無いです…。
むしろ、そろばんさえも見た事が無いこの世界で見つけるのは恐らく不可能。
だけど、電卓について説明しちゃったし、この世にないなんてどうやって伝えればいいんだ。
うーん…なんて言えばいいんだろう…。
とりあえず、数字を押していたはずの指を私の髪に絡めたりするはやめて下さい。電卓のことについて集中出来ませんから!
「え、えっと………これについては……ゆ、夢で見ただけなので、どこに売っているかまでは分からないんです……」
「夢?」
「はい、夢です」
夢なんて苦しい言い訳だって分かってる。
だけど、どんな場所にでも買いに行けそうな人に売っている場所を偽れるわけもない。それに、髪をいじるエリオット様の指が頬を掠めたりするから、全然考えに集中出来ないんです!
「夢…って事は、デンタクはエマが考えたものって事?」
「え、え~っと…そういう事に、なるん、ですかね?」
「なるだろ。だけど、よくこんな便利なもの思い付いたね」
いや、思いついてないです、思い出しただけです。
なんて言えるわけもないので、曖昧に笑っていよう。
「あはは、でも、思い付いても作れないので意味ないですけどね」
「…………多分だけど、作れると思う」
マジですか!どんだけチートキャラ何ですか。
どうすれば作れるかを考えているのかな?また私の頭に顎を置いて両腕で私を抱き抱え始めちゃいましたよ…。
なんだろう…私の事を大きいぬいぐるみか何かだと思っているのかな。
机に向かっている時に大きいぬいぐるみを膝に置いて顎を乗せたりするのって楽な体制なのは分かる。それに、考え事をする時に何かを抱きしめたりするのって落ち着く。
つまり、私はエリオット様にとっては楽な体制をするためのぬいぐるみ的存在…?
それなのに私はエリオット様の膝の上でドキドキしちゃったりして…なんだか恥ずかしいな。
エリオット様からすれば私はぬいぐるみのような物。
それなら、余計なことは考えずにぬいぐるみの様になにも気にせずこの体制でいること努めよう。
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