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観光が楽しいです

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「アリア嬢、トルーアで行きたい所などありますか?」


 昨晩の宣言通り、朝から迎えに来てくださったシャル様が質問をしてくれる。
 ちなみに、お父様とお母様は私が起きる前に出発したようで、部屋には私が今日着ていく服を置いて消えていた。


 シャル様が来て下さると言ったとはいえ、娘にも告げずに出掛けてしまうのはどうなんだろ。
 両親の行動に少しだけ眉にシワがよりそうになるが、せっかく外国へ来たのだから、今は楽しむことだけを考えよう。


「では、トルーアの海の近くにある市場を見てみたいです。確かそこでは取れたての海鮮が食べれる屋台が沢山あると聞きました。それに、木苺のパイも有名だとか」
「よくご存知ですね!まだまだ観光地として市場が他国に浸透していないと思っていたのですが、知っていただけていたなんて光栄です」


 まるで、この国を代表するかのように喜ぶシャル様に笑みがこぼれる。


「シャル様はこの国を愛していらっしゃるのですね」
「あはは、そうですね。なので、アリア嬢にも沢山トルーアのいい所を知って欲しいと思っています。では、まずは市場へ行きましょうか」
「はい」


 ホテルからそう遠くない市場へ、馬車を使わずにシャル様と並んで歩く。
 馬車を使わずに移動するなんて、すごく新鮮な気分だ。それに、歩いている間もシャル様がトルーアのことを教えて下さるから、すごく楽しい。


「見てください。あそこは今建設中なのですが、もうすぐたくさんの屋台が並べれる広場が出来るんです。広場の真ん中には我が国屈指の彫刻師が手がけた噴水が設置される予定なんですよ」
「それは楽しみですね。完成した際には、又トルーアに訪れたいです」
「是非そうしてください。なんなら、こちらからお迎えの馬車も用意しますよ」


 冗談っぽく言うシャル様に笑いが漏れる。
 シャル様はトルーアの事をよく知っていて、更に気さくな方なので、観光案内をお願いして本当に良かった。


「トルーアは観光地として力を入れているんですね。もしかして、これも王太子様の案ですか?確か、今から行く市場も王太子様が造られたと聞きました」
「そんなことまでご存知なのですか?流石、次期王妃候補であった方ですね」
「あはは、恐縮です」


 私にこんな知識があるのは、少しでも知らないことがあれば王妃殿下が「こんな事も知らないで息子の婚約者を名乗るなんて恥ずかしくないの?」とチクチク言ってくるからだ。
なので、この知識はあのババ…ごほん、王妃殿下に嫌味を言われないために必死に勉強した賜物だ。


 ちなみに、エーリッヒ様は私に聞いて全て済ませてしまうので、こんなトルーアの市場の事なんて全く知らないだろう。
 ホント、扱いの差が酷すぎて嫌になる。


 でも、その知識のおかげで観光が更に楽しい物になっているから、無駄ではなかったと今なら思える。


「着きました。ようこそ、こちらがトルーアの海鮮市場です」
「わぁ、凄い…!」


 市場と聞いていたので、乱雑に商品が置かれたイメージを勝手に持っていたけど、全然予想と違った。
 地面は綺麗にレンガが敷かれ、歩道と車道がきちんと別れている。


 そして、商品は綺麗に並べられ、売り場の隣には、直ぐに調理して食べれるようにカウンター席が設けられている。
 他にも、食べ歩きができるようにクシに刺さった物や、カップに入れた物が売ってあったり、見ていて飽きない。


「食べ物以外も販売してるんですね!この服なんて、イカの絵を書いて"イカしてるぜ"なんて書いてますよ!」


 あまり他では見たことの無い変わった服まで置いていてすごく面白い。
 屋台を見ながら、周りの人達に当たらないように進んでいくと、気付けば市場の端から端まで歩き切っていた。

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