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プロローグ
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僕の名前は、アーサー・ヴィンガー。ソアード王国出身の四十二歳、世界最強賢者でした。
うん、過去形になってるよね?
その理由は、元世界最強賢者だからです。別に弱くなったわけではありません。その理由は今に分かるので、ひとまず僕の話を聞いて下さい。
ーついさっきー
アーサーは、地下迷宮の最深部、何十年もの苦労をついに、着くことができた。
魔法剣士である世界最強の賢者として、王から出された長年の任務を、やっと果たすことができる。最深部に住んでいるドラゴンを倒すと、その気持ちで奥に秘められた宝の山々を見上げた。
そう。王からの任務はこうだ。
『地下迷宮の最深部にあるとされる、ドラゴンの宝を持ってこい』
最初は馬鹿げていると思ったが、実際に目の前にされると、この任務を成し遂げることができて良かったと十分な満足感に包まれた。
しかし、こんな山積みの宝、全て持っていくのは無理だ。自分の持っている四次元袋でも限りというものはある。
とりあえずアーサーは、どんな物があるのか見てみることにした。
金、ダイヤ、指輪、レックレス、王冠。キラキラと目に刺激する物ばかりの詰め合わせで、色々な物を見ていくと、一番目に止まったのは、どこにでも売っていそうな剣だった。
他の金銀財宝とは大違いの地味な剣。綺麗な飾りもなく、ただシンプルに作られているのが不思議だ。
なぜここにあるのだろうと思い、剣を様々な方向からまじまじと見た。
「ん?」
すると、その剣の刃の部分に、何か文字が書かれているのを見つけた。しかし、読むには時間がかかってしまいそうな、黒く煤けて分かりにくい。けれども、気になる気持ちが勝ってしまったアーサーは、一文字一文字をよく見て必死に読んだ。
「転生……の……剣? 刺せば……転生……で……きる」
そう書かれていた。何とも雑な説明だが、書かれていないよりはマシだろう。しかし、本当に転生できる物なのだろうか。
ガガガガアァ!
すると、突然地面が揺れ出した。
「地震だ!」
アーサーは、中に入る分いっぱいの宝を急いで入れると、ここから出て行こうと走り出した。
ドオォン!
しかし、上から落ちてきた割れた天井により、道を塞がれてしまう。出口にも向かえなくなったアーサーは、宝の山々の方へ戻った。
先程の『転生の剣』を思い出したからだ。これ以外に方法は無いと思い、地味な姿のその剣を見つけると急いで手にした。
ドオオォン!
しかし、その直後、アーサーの頭上に崩れた天井が降ってきた。
このままでは確実に、死ぬ。
もう迷っている場合ではない、とアーサーは成功することを祈りながら自分の腹を刺した。その瞬間、カッと青白い光がアーサーの周り包んだ。
彼は目を瞑ると、祈り続ける。
頼む。成功してくれ!
うん、過去形になってるよね?
その理由は、元世界最強賢者だからです。別に弱くなったわけではありません。その理由は今に分かるので、ひとまず僕の話を聞いて下さい。
ーついさっきー
アーサーは、地下迷宮の最深部、何十年もの苦労をついに、着くことができた。
魔法剣士である世界最強の賢者として、王から出された長年の任務を、やっと果たすことができる。最深部に住んでいるドラゴンを倒すと、その気持ちで奥に秘められた宝の山々を見上げた。
そう。王からの任務はこうだ。
『地下迷宮の最深部にあるとされる、ドラゴンの宝を持ってこい』
最初は馬鹿げていると思ったが、実際に目の前にされると、この任務を成し遂げることができて良かったと十分な満足感に包まれた。
しかし、こんな山積みの宝、全て持っていくのは無理だ。自分の持っている四次元袋でも限りというものはある。
とりあえずアーサーは、どんな物があるのか見てみることにした。
金、ダイヤ、指輪、レックレス、王冠。キラキラと目に刺激する物ばかりの詰め合わせで、色々な物を見ていくと、一番目に止まったのは、どこにでも売っていそうな剣だった。
他の金銀財宝とは大違いの地味な剣。綺麗な飾りもなく、ただシンプルに作られているのが不思議だ。
なぜここにあるのだろうと思い、剣を様々な方向からまじまじと見た。
「ん?」
すると、その剣の刃の部分に、何か文字が書かれているのを見つけた。しかし、読むには時間がかかってしまいそうな、黒く煤けて分かりにくい。けれども、気になる気持ちが勝ってしまったアーサーは、一文字一文字をよく見て必死に読んだ。
「転生……の……剣? 刺せば……転生……で……きる」
そう書かれていた。何とも雑な説明だが、書かれていないよりはマシだろう。しかし、本当に転生できる物なのだろうか。
ガガガガアァ!
すると、突然地面が揺れ出した。
「地震だ!」
アーサーは、中に入る分いっぱいの宝を急いで入れると、ここから出て行こうと走り出した。
ドオォン!
しかし、上から落ちてきた割れた天井により、道を塞がれてしまう。出口にも向かえなくなったアーサーは、宝の山々の方へ戻った。
先程の『転生の剣』を思い出したからだ。これ以外に方法は無いと思い、地味な姿のその剣を見つけると急いで手にした。
ドオオォン!
しかし、その直後、アーサーの頭上に崩れた天井が降ってきた。
このままでは確実に、死ぬ。
もう迷っている場合ではない、とアーサーは成功することを祈りながら自分の腹を刺した。その瞬間、カッと青白い光がアーサーの周り包んだ。
彼は目を瞑ると、祈り続ける。
頼む。成功してくれ!
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