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16話 ゴブリン
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「あの洞窟だ」
レオと村長は木に隠れながら、洞窟の近くまで来た。洞窟の前には、二体のゴブリンが立っており、警備の役割をしているようだ。とても帰りたげな顔をしている村長に、レオは村に戻るように言った。
「私が引き付ける」
アメリアはそういうと、木の枝や小石をもってゴブリンに投げた。それに釣られて二体のゴブリンは、入口から離れる。姿の見えない何者かに戸惑いながら、石や枝が飛んでくる方向に、一生懸命矢を投げていた。
レオは、二匹の背後に近寄ると、腰から剣を抜いてばれないように振った。首を狙い、一発で仕留める。叫び声をだされる前に一気に息の根を止めた。
倒れたゴブリンの様子を、間近で見てみる。近づいて気づいたのだが、このゴブリンは変異種のようだ。ぱっと見は、通常の場合とそう変わらない。しかし、よく見ると小さい角が生えており、牙や筋肉も発達しているように見えた。
むやみやたらに攻撃し、正面から戦うよりは、背後を狙っていて良かったと思う。
アメリアがグッドのポーズをして、役に立てたことに喜んでいる。レオは壁に背中を付けながら、そーっと中に入った。どれぐらいのゴブリンがいるか分からないまま、無理に動くのは危険だ。
近くにあった岩に隠れると、そこから様子を伺った。しかし、見える範囲は限られてくる。
「私、奥まで確認してくるね」
アメリアは宙に浮かびながら、サッと奥へと進んだ。こういう仲間がいるのは、とても心強い。それと同時に、迷惑をかけているような気がして、なんだか申し訳なかった。
アメリアがいなければ、自分は何もできない。霊の良さをあてにしているような、いつも頼ってばかりだと感じてしまう。
◇◆◇◆◇
洞窟の奥に進むと、サイドに穴が作られ、ゴブリン一体ずつが入っていた。それぞれが槍や刃物を持ち、隠れて待ち伏せている。突然現れ、不意打ちをする作戦なのだろう。
小癪でずる賢いゴブリンの知性を感じた。
途中から下に向かって階段が掘られ、大きな広場になっていた。その広場には、ざっと四十匹はいそうな数のゴブリンが、それぞれで作業をして暮らしている。食料を倉庫にしまったり、武器を作ったり、服装を洗ったりしていた。
倉庫の様子を覗いてみると、村から盗んだ者と思われる作物があった。
しかし、一番気になったというか、目についたのは、武器や防具を身に着けたゴブリンだ。
ゴブリンたちのほとんどは、武器を身に着ける事が少ない。ところが、中には短剣を持っていたり、皮の鎧を纏ったものもいる。人間から奪った物がほとんどだろう。
そのゴブリンが通常よりも多いのだ。それに、なぜ門番は無防備だったのか、疑問に思った。弓だけで剣や鎧も持たず、「弱いです。どうぞ入って下さい」と言っているようなものだ。逆に、中に誘き寄せる罠とも考えられる。
ゴブリンキングを中心に、警備が厳しくなっいるようで、図体の大きい武器を持ったゴブリンが近くに多かった。
ゴブリンキングは、見た目からも分かるほどに、強そうな体格に大きな牙をはやしている。レオの身長をはるかに越して、喩えるなら大岩だ。まるで鬼のような顔をし、黄色い目は鋭い視線を感じてしまう。
霊は見えないと思いつつも、ばれてしまわないか怖くなってきた。
「早くレオの所に戻ろう」
一通り奥を探索し終えたアメリアは、急ぎ足で移動する。いつもは、避ける必要なんかないのに、なんとなくで避けて歩いているのだけど、今は、邪魔になるゴブリンの体や物を次々とすり抜けて進んだ。
とりあえず、ゴブリンの数と強さをレオに教えなければならない。もしかしたら、ゴブリンだからと、侮っているかもしれないのだ。
「四十匹もいるのか……」
アメリアがこれまでのことを全部伝えると、レオは顎に手を当て考えた。
その人数に一人で向かうのは、さすがに無理がある。
「あっ、ここだ」
「ゴブリン死んでんじゃん」
「本当だ。村長が言ってた子供の冒険者に、やられたのか」
「弱そー。中に入って、横取りしちゃお」
「それな。どうせ子供は信用ねぇから、横取りしてもばれねぇよ」
すると、不意に入り口から人の声が聞こえた。この方向を振り向くと、四人ほどの冒険者と思われる人がいる。剣士、タンク、ヒーラー、魔法使いの揃った本格的なパーティーだ。
このまま中に入れば、人数が多いと言ってもやられてしまう。強さも数も圧倒的にゴブリンが勝っているのだ。
「足跡も少なかったし、数は多くて十体くらいっしょ。そんじゃ、中に入るか」
ここにくる足音が聞こえた。パーティーは、堂々と真ん中を歩いて進んでいる。アメリアは、レオの方向とパーティーを交互に見て、おどおどとさせていた。
これは、やばいんじゃないかな、と直感的に思って戸惑ったからだ。レオは、岩の影に隠れながら、まだ顎に手を当てて考えている。
チラッと横目に見ていたが、すぐに興味ないような感じで、視線を元に戻した。
「レオ、大丈夫なのかな。どうするの?」
アメリアが心配になって声をかけた。レオは、閉じた口に人差し指を当てて、ニコッと笑った。
どうやら、何か案が閃いたようだ。
レオと村長は木に隠れながら、洞窟の近くまで来た。洞窟の前には、二体のゴブリンが立っており、警備の役割をしているようだ。とても帰りたげな顔をしている村長に、レオは村に戻るように言った。
「私が引き付ける」
アメリアはそういうと、木の枝や小石をもってゴブリンに投げた。それに釣られて二体のゴブリンは、入口から離れる。姿の見えない何者かに戸惑いながら、石や枝が飛んでくる方向に、一生懸命矢を投げていた。
レオは、二匹の背後に近寄ると、腰から剣を抜いてばれないように振った。首を狙い、一発で仕留める。叫び声をだされる前に一気に息の根を止めた。
倒れたゴブリンの様子を、間近で見てみる。近づいて気づいたのだが、このゴブリンは変異種のようだ。ぱっと見は、通常の場合とそう変わらない。しかし、よく見ると小さい角が生えており、牙や筋肉も発達しているように見えた。
むやみやたらに攻撃し、正面から戦うよりは、背後を狙っていて良かったと思う。
アメリアがグッドのポーズをして、役に立てたことに喜んでいる。レオは壁に背中を付けながら、そーっと中に入った。どれぐらいのゴブリンがいるか分からないまま、無理に動くのは危険だ。
近くにあった岩に隠れると、そこから様子を伺った。しかし、見える範囲は限られてくる。
「私、奥まで確認してくるね」
アメリアは宙に浮かびながら、サッと奥へと進んだ。こういう仲間がいるのは、とても心強い。それと同時に、迷惑をかけているような気がして、なんだか申し訳なかった。
アメリアがいなければ、自分は何もできない。霊の良さをあてにしているような、いつも頼ってばかりだと感じてしまう。
◇◆◇◆◇
洞窟の奥に進むと、サイドに穴が作られ、ゴブリン一体ずつが入っていた。それぞれが槍や刃物を持ち、隠れて待ち伏せている。突然現れ、不意打ちをする作戦なのだろう。
小癪でずる賢いゴブリンの知性を感じた。
途中から下に向かって階段が掘られ、大きな広場になっていた。その広場には、ざっと四十匹はいそうな数のゴブリンが、それぞれで作業をして暮らしている。食料を倉庫にしまったり、武器を作ったり、服装を洗ったりしていた。
倉庫の様子を覗いてみると、村から盗んだ者と思われる作物があった。
しかし、一番気になったというか、目についたのは、武器や防具を身に着けたゴブリンだ。
ゴブリンたちのほとんどは、武器を身に着ける事が少ない。ところが、中には短剣を持っていたり、皮の鎧を纏ったものもいる。人間から奪った物がほとんどだろう。
そのゴブリンが通常よりも多いのだ。それに、なぜ門番は無防備だったのか、疑問に思った。弓だけで剣や鎧も持たず、「弱いです。どうぞ入って下さい」と言っているようなものだ。逆に、中に誘き寄せる罠とも考えられる。
ゴブリンキングを中心に、警備が厳しくなっいるようで、図体の大きい武器を持ったゴブリンが近くに多かった。
ゴブリンキングは、見た目からも分かるほどに、強そうな体格に大きな牙をはやしている。レオの身長をはるかに越して、喩えるなら大岩だ。まるで鬼のような顔をし、黄色い目は鋭い視線を感じてしまう。
霊は見えないと思いつつも、ばれてしまわないか怖くなってきた。
「早くレオの所に戻ろう」
一通り奥を探索し終えたアメリアは、急ぎ足で移動する。いつもは、避ける必要なんかないのに、なんとなくで避けて歩いているのだけど、今は、邪魔になるゴブリンの体や物を次々とすり抜けて進んだ。
とりあえず、ゴブリンの数と強さをレオに教えなければならない。もしかしたら、ゴブリンだからと、侮っているかもしれないのだ。
「四十匹もいるのか……」
アメリアがこれまでのことを全部伝えると、レオは顎に手を当て考えた。
その人数に一人で向かうのは、さすがに無理がある。
「あっ、ここだ」
「ゴブリン死んでんじゃん」
「本当だ。村長が言ってた子供の冒険者に、やられたのか」
「弱そー。中に入って、横取りしちゃお」
「それな。どうせ子供は信用ねぇから、横取りしてもばれねぇよ」
すると、不意に入り口から人の声が聞こえた。この方向を振り向くと、四人ほどの冒険者と思われる人がいる。剣士、タンク、ヒーラー、魔法使いの揃った本格的なパーティーだ。
このまま中に入れば、人数が多いと言ってもやられてしまう。強さも数も圧倒的にゴブリンが勝っているのだ。
「足跡も少なかったし、数は多くて十体くらいっしょ。そんじゃ、中に入るか」
ここにくる足音が聞こえた。パーティーは、堂々と真ん中を歩いて進んでいる。アメリアは、レオの方向とパーティーを交互に見て、おどおどとさせていた。
これは、やばいんじゃないかな、と直感的に思って戸惑ったからだ。レオは、岩の影に隠れながら、まだ顎に手を当てて考えている。
チラッと横目に見ていたが、すぐに興味ないような感じで、視線を元に戻した。
「レオ、大丈夫なのかな。どうするの?」
アメリアが心配になって声をかけた。レオは、閉じた口に人差し指を当てて、ニコッと笑った。
どうやら、何か案が閃いたようだ。
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