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旅
六話
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「ここが十階か」
十階に着くと、そこは今までの階と少し雰囲気が違い、地下なのに霧で奥が見えづらい。
キュウキュウ……。
すると、奥から弱々しい鳴き声が聞こえ、影が見えた。
この鳴き声は……!
「ガティの鳴き声か?」
とデネブさんが呟いた。
いや、違うこの鳴き声はガティの鳴き声に似ているがコトティグリという虎に似た魔獣の仕掛けだ。コトティグリは魔物でも賢い方でガティという弱い魔物の鳴き声を真似て敵を油断させる。わずかだがガティよりも鳴き声が高い。
このパーティーメンバーでは無理がある。危険だ!
「コトティグリの罠だ!」
と僕は叫んで、結界魔法を瞬時に展開する。
この結界は、相手からの攻撃を防ぎつつ、相手の出した攻撃の三倍の衝撃を食らわせることができるのだ。
ガオォォー
コトティグリが勢いよく飛びかかり鋭い爪で攻撃してくる。
「ウワァァァァッ」
と叫びデネブさんは恐怖で体が震えている。
しかし、強度の高い結界魔法を展開しているので相手の攻撃に結界は傷一つつかず三倍の衝撃を与えた。
コトティグリは、その衝撃に大きなダメージを喰らい態勢を崩す。
今だ!
僕は身体強化と剣に火魔法で高温の熱を伝わらせ、コトティグリの首を跳ねた。コトティグリの首は硬く強化しているため簡単には切れない。しかし、身体強化で威力をあげ、高温の鋭い剣を使うことで切りやすくなるのだ。
すると、
「コトティグリを倒した⁉︎ すごい! プロでも手こずるのに一瞬で!」
と皆が騒いでいる。
プロでも手こずるは少し大袈裟すぎると思うけれど、師匠なら気配に気付いた瞬間首を刎ねているだろうな。
僕は自分の判断の遅さを改めて見詰めた。
そして、僕達は話し合いこれ以上進まないことにした。特にデネブさんが絶対に嫌だと断り続けて意見を変えないので戻ることになったのだ。
ギルドに戻った僕達は、倒した魔物達を受付人に渡した。僕は全ての魔物を四次元空間袋に入れていたため、その中に入っている魔物を全て出して渡した。
「え⁉︎ 何この袋‼︎」
と受付人が驚いて目を丸くしている。
「え? あ、これですか。この袋の中は空間を歪ます魔法をかけて四次元にする事で立体の物質を通常より多く入れることができるんですよ」
と説明すると受付人は理解できない顔でいるので、僕はどう説明すれば良いのか困った。
とりあえず、細かく丁寧に説明し、次元とは何かと最初から詳しく話した。
すると、
「あなたは理解の範疇を超えています」
と受付人は気を取り戻してそう言い、パーティーの皆は今も驚いていたまま固まってしまっている。
そこまで驚くことなのだろうか? 僕は元科学者ということもあるし、この世界は魔法ばかりで科学の知識が遅れているせいなのかも……。
すると、受付人からこの袋のことを論文としてまとめて欲しいとお願いされ紙を渡された。
「あっ、ペンのインクが切れていますね。今持ってきます」
と受付人はインクが切れていることに気づき、席を立とうとした。
「あ、いえ、大丈夫です。ペン無しでも書けますので」
と僕は断り、風魔法と火魔法を微調整で操って、火を使って温めた空気に紙を焼き付けて焦げで文章を書いた。
まず、最初に次元のことを書き、四次元にすることで立体の物を多く収容できることを説明した。そして、どのような魔法をどういう風に使うと袋の中を四次元にできるかも書きあげた。
この世界では貴重な紙を三枚も使ってぎっしりまとめ、受付人にこの説明で良いかと渡すと、受付人は唖然としてまじまじと僕を見つめる。
「あなたは何者? どうしてこんなすごいことを当たり前のようにやっているの?」
と受付人は僕を常人ではないと言った。
しかし、論文を書いただけでどうしてそんなにすごいというのだろうか?
「えーと、その論文の内容がそんなにすごいですか?」
と僕は戸惑いながら質問する。
「いいや、リベル。論文もすごいけど、もっとすごいのは何も無しで紙に文字を書いたことだよ」
と横からカペラさんが僕に言った。
「え? 別に特殊な魔法を使ったわけではないですよ。風と火の魔法を使って、火で温めた空気を紙に焼き付けて文字を書いただけです」
と僕が説明すると、
「だから、その発想がすごいのよ」
とアークさんが言った。
うーん、この町の普通の基準が理解しにくいな。特に生まれつきの天才的な魔力も持っていないチートな能力も持っていない僕が少し工夫をしただけで何でもすごいと言ってくるなんて……。
僕はこのインク無しの方法も論文として受付人に書かされる羽目になってしまった。
うぅっ、ここにいたら何でもすごいって言われて、いつの間にか、調子に乗って自惚れるかもしれない。
それなら、他の町のダンジョンに行った方が良いや。
僕は、三日後にこの町を出て強者が多くいることで有名なジィナミという国に行くことにした。
十階に着くと、そこは今までの階と少し雰囲気が違い、地下なのに霧で奥が見えづらい。
キュウキュウ……。
すると、奥から弱々しい鳴き声が聞こえ、影が見えた。
この鳴き声は……!
「ガティの鳴き声か?」
とデネブさんが呟いた。
いや、違うこの鳴き声はガティの鳴き声に似ているがコトティグリという虎に似た魔獣の仕掛けだ。コトティグリは魔物でも賢い方でガティという弱い魔物の鳴き声を真似て敵を油断させる。わずかだがガティよりも鳴き声が高い。
このパーティーメンバーでは無理がある。危険だ!
「コトティグリの罠だ!」
と僕は叫んで、結界魔法を瞬時に展開する。
この結界は、相手からの攻撃を防ぎつつ、相手の出した攻撃の三倍の衝撃を食らわせることができるのだ。
ガオォォー
コトティグリが勢いよく飛びかかり鋭い爪で攻撃してくる。
「ウワァァァァッ」
と叫びデネブさんは恐怖で体が震えている。
しかし、強度の高い結界魔法を展開しているので相手の攻撃に結界は傷一つつかず三倍の衝撃を与えた。
コトティグリは、その衝撃に大きなダメージを喰らい態勢を崩す。
今だ!
僕は身体強化と剣に火魔法で高温の熱を伝わらせ、コトティグリの首を跳ねた。コトティグリの首は硬く強化しているため簡単には切れない。しかし、身体強化で威力をあげ、高温の鋭い剣を使うことで切りやすくなるのだ。
すると、
「コトティグリを倒した⁉︎ すごい! プロでも手こずるのに一瞬で!」
と皆が騒いでいる。
プロでも手こずるは少し大袈裟すぎると思うけれど、師匠なら気配に気付いた瞬間首を刎ねているだろうな。
僕は自分の判断の遅さを改めて見詰めた。
そして、僕達は話し合いこれ以上進まないことにした。特にデネブさんが絶対に嫌だと断り続けて意見を変えないので戻ることになったのだ。
ギルドに戻った僕達は、倒した魔物達を受付人に渡した。僕は全ての魔物を四次元空間袋に入れていたため、その中に入っている魔物を全て出して渡した。
「え⁉︎ 何この袋‼︎」
と受付人が驚いて目を丸くしている。
「え? あ、これですか。この袋の中は空間を歪ます魔法をかけて四次元にする事で立体の物質を通常より多く入れることができるんですよ」
と説明すると受付人は理解できない顔でいるので、僕はどう説明すれば良いのか困った。
とりあえず、細かく丁寧に説明し、次元とは何かと最初から詳しく話した。
すると、
「あなたは理解の範疇を超えています」
と受付人は気を取り戻してそう言い、パーティーの皆は今も驚いていたまま固まってしまっている。
そこまで驚くことなのだろうか? 僕は元科学者ということもあるし、この世界は魔法ばかりで科学の知識が遅れているせいなのかも……。
すると、受付人からこの袋のことを論文としてまとめて欲しいとお願いされ紙を渡された。
「あっ、ペンのインクが切れていますね。今持ってきます」
と受付人はインクが切れていることに気づき、席を立とうとした。
「あ、いえ、大丈夫です。ペン無しでも書けますので」
と僕は断り、風魔法と火魔法を微調整で操って、火を使って温めた空気に紙を焼き付けて焦げで文章を書いた。
まず、最初に次元のことを書き、四次元にすることで立体の物を多く収容できることを説明した。そして、どのような魔法をどういう風に使うと袋の中を四次元にできるかも書きあげた。
この世界では貴重な紙を三枚も使ってぎっしりまとめ、受付人にこの説明で良いかと渡すと、受付人は唖然としてまじまじと僕を見つめる。
「あなたは何者? どうしてこんなすごいことを当たり前のようにやっているの?」
と受付人は僕を常人ではないと言った。
しかし、論文を書いただけでどうしてそんなにすごいというのだろうか?
「えーと、その論文の内容がそんなにすごいですか?」
と僕は戸惑いながら質問する。
「いいや、リベル。論文もすごいけど、もっとすごいのは何も無しで紙に文字を書いたことだよ」
と横からカペラさんが僕に言った。
「え? 別に特殊な魔法を使ったわけではないですよ。風と火の魔法を使って、火で温めた空気を紙に焼き付けて文字を書いただけです」
と僕が説明すると、
「だから、その発想がすごいのよ」
とアークさんが言った。
うーん、この町の普通の基準が理解しにくいな。特に生まれつきの天才的な魔力も持っていないチートな能力も持っていない僕が少し工夫をしただけで何でもすごいと言ってくるなんて……。
僕はこのインク無しの方法も論文として受付人に書かされる羽目になってしまった。
うぅっ、ここにいたら何でもすごいって言われて、いつの間にか、調子に乗って自惚れるかもしれない。
それなら、他の町のダンジョンに行った方が良いや。
僕は、三日後にこの町を出て強者が多くいることで有名なジィナミという国に行くことにした。
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