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プロローグ

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 柊理沙は小さい頃から疑問に思ったことをすぐに調べたり、検証してみたりと理科が大好きな女性だった。
 真っ直ぐな性格で恋愛や遊びにはほとんど興味を示さず、小中学校では一人で本を読んでいるか、理科の先生に疑問を質問したりお喋りするのがほとんどだった。

「理科だけ勉強しても社会ではやっていけないぞ」

「そこまで調べて何になるの?」

「どれだけ調べまくるんだよ、キモいぞ」

 いつ頃からだったか、小さい時は知識があるとよく褒められていたのに高校生ぐらいの年齢になると周りには気持ち悪がられていた。

 そんな私は今では分析化学者となり、人生のほとんどを仕事のためだけに生きている。
 しかし、科学者になっても自分が望む研究が自由にできないという不満があった。絶対面白くなるはずの構想や仮説をお金や周りの理解、組織内の政治的な理由で検討すらできない、試したいのに試せないということを辛いと感じるのは私だけだろうか。

「はぁ……」
 仕事の帰り、凍てつくように寒いこの夜の中、私のため息が白く目立った。
 仕事をするのが疲れたわけではない、研究が嫌になったわけではない。ただ、それを言うのならばわがままなのだろうが、私は何にも縛られずに、時間やお金に制限されずに自由に研究したいのだ。

 そんな不可能なことを考えながら月日は流れ、ある日の仕事中、理沙の運命が大きく変わる出来事が起ころうとした。
 研究結果の報告をしようと立った瞬間、ふらっと目眩がし床に倒れたのだ。

 ぼんやりとした意識に感覚が遠のいていき、私の名を呼ぶ声や周囲の音がだんだん聞こえなくなっていく。

気がついたら私は何もない真っ白な空間にいて、目の前には十歳ぐらいの男の子が立っていた。白い服に金色の癖毛がある髪で天使のような雰囲気だった。
「僕は生命の神ヴィオスです」
とその男の子は神と名乗った。
「生命の神……。私がここにいるということは、死んでしまったのですね?」
と私はヴィオス様に質問した。
「はい、そうです。残念ながら、理沙さんは仕事のし過ぎで過労死してしまいました」
 仕事のために寝ず休まずのことが連続で続いた日がたくさんあったので、いつか体を壊し早死にするとは思っていたが、本当のこととなるとあまり現実味がない。

「それで、私はこれからどうなるのでしょうか?」
私がそういうと、ヴィオス様はニコっと笑いながら、
「理沙さんには異世界に転生してもらいたいと思っています。来世での生活はどのような環境が良いのか、契約書に書いてもらって良いですか?」
とペラペラと話し出した。
 おおー、異世界! 楽しそうだなと私はテンションが一気に上がった。
「年齢や身分、職、能力などなんでも好きな設定を記入してください。新しい職や能力を考えて書いても良いですよ」
と契約書を渡され、私は職に元素使いと書き、元素を自由自在に操れる能力と書いた。
 この世の全ては元素によって構成されている。元素使いという職を手に入れたら絶対チート説だ。
「おおー!これは面白そうな職を作りましたね」
とヴィオス様も興奮している。
 年齢は子供に戻って暮らしたいと思ったため八歳と記入し、最後にサインをした。
 すると、契約書の文字が青白く光りだし、体がだんだん透明になっていく。
「これで契約完了ですね! 今から転生しますので、異世界生活を楽しんでください」
と言われ、私はありがとうございますとお礼を言い、目をつぶった。
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