モニターが殺してくれる

夜乃 凛

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第三章 アラシノナカ

二つのパーティーに別れます

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「そうだ、四方木さんだ!四方木さんがやったんじゃないのか!?」

 権田が叫ぶ。

「四方木さんは閉じ込められていますよ。落ち着いてください」

 平川はなだめるようにいった。

「わからないじゃないか。倉庫に入れられただけだ。あの扉は外側からなら鍵で開けられるって話じゃないか。そうだ、四方木さんは動けないと見せかけて、四方木さんを誰かが中から出したんだ。そして、四方木さんが単独行動で七雄さんを殺した。そして道間夫人も」

「権田さん、それはないと思う。四方木さんが動き回っていたら、どこかで誰かに見つかったら四方木さんから見たら終わりだ」

 滝瀬は否定的だった。

「いや、それが殺人の動機になる。私の妻が四方木さんの姿を見たんだ。だから殺した。四方木さんが動き回っていたらおかしな話になる。口封じだ。それしか考えられない」

 道間は合点がいった、というように頷いている。

「そうなればマスターキーを持った人間が疑われる。リスクが大きい。しかし四方木さんが動いているという可能性はあります。実は、この館内に悪意を持った人物がいるという証拠を俺は持っているんです」

 加羅は頭を回転させるためにコーヒーを飲みたかった。頭の使いどころだ。

「加羅さん」

 刀利が早口で加羅を呼んだ。

「どうした?」

「その証拠、言わないほうがいいと思います」

 咄嗟の判断だった。証拠とは、アキラの死体が無くなったことだったが、刀利はそれを全員に知らせないほうが良いと思ったのだ。

「こんな時に隠し事?言っちゃいけないことなわけ?」

 滝瀬がため息をついた。

「すみません」

 刀利が頭を下げた。

「全員がずっと集まっている、というのは確かに正確だと思いますけど、もし我々以外の脅威があると考えると怖いですね。警察には任せておけません。悪天候がいつ良くなるかもわからないし……少しでも謎を解き明かしたい所ですね」

 話をずっと黙って聞いていた白井が口を開いた。

「僕が捜査します。その間、皆さんは一ヶ所に集まっていてください。僕なら犯人に遅れは取りません。刑事ですからね」

 平川は内ポケットにしまってある拳銃をちらつかせた。

「俺も行こう。不意打ちされるということもあり得る。二つのグループで分かれれば良い。捜査組と待機組」

 加羅は一人一人を順番に見た。

「私もついていきます!この目で見た情報もあるので。少しは怖いですけど、これ以上被害者は出したくないです」

 刀利はついてくる覚悟のようだ。彼女の頭は強い味方になる。

「じゃあ、僕と加羅と刀利君が捜査組で、秋野さん、権田さん、滝瀬さん、白井さん、道間さんが待機組にしましょう。皆さん、絶対に応接室から出ないように。リーダーは、そうですね……滝瀬さんにお願いします」

 平川は滝瀬の方を見た。

「え、俺?」

「あなたが一番冷静に見えます。男ですしね」

「まあ、了解。権田さんより偉くなっちゃったな」

「お前の料理の腕じゃあ、俺には遠く及ばんぞ」

 権田は腕組している。

「決まりましたね。では捜査に行ってきます」

「平川、どこを捜査するんだ?」

「加羅の見た情報を直接見ておきたいが、お前はどこに行けばいいと考える?」

「俺なら?そうだな……四方木さんのいる倉庫だな。もし鍵が空いているようなことがあれば危険だ。四方木さんが脱出していたら問題だ」

 加羅はちらりと秋野の顔を見た。彼女は四方木をどう思っているだろうか。

「じゃあ倉庫に行きましょうよ。寝室の廊下の一番奥ですよね。まさかこんな事になるなんて、思いませんでした」

 刀利は頷いてみせた。

「ああ、行こう。それでは皆さん、くれぐれも全員一緒にいてください」

 加羅の言葉に待機組の面々は頷いた。
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