97 / 105
番外編
番外編1話
しおりを挟む
結婚してからも、私達の生活は大して変わりはしなかった。
私は学び、ユリウスは働き、夜にはふたり愛しくも激しい時間を過ごす。
私にはまだ懐妊の兆しはなく、それだけが少し不安として残っていたけれど、それ以外は、まぎれもなく幸せだった。
季節は秋を過ぎ、冬になろうとしていた。
「そう心配することありませんわ!」
「魔族はなかなか妊娠しないものですもの!」
ニンフとシルフはそう言ってくれた。
「陛下は長らく魔界にいて、かつては人間であったお体も次第に魔族化してますからね……」
「お妃様も、魔族と人間の子ですから、魔族としての形質が出ているのかもしれませんわ!」
「…………そう、ね」
けれども、そもそも、私は子供を産むためにここに来た。
いや、今となってはもちろん私とユリウスの間柄はそれだけではない。
そう信じている。
ただ、申し訳なさが、つきまとう。
いや、それよりも、もっと……。
たぶん、私はユリウスとの子供がほしいのだ。
幸せな、両親と子供という家族。
幼い頃から私になかったもの。
それに憧れている。
そういうことなのだ、きっと。
夜が来た。
堅牢な城の中にあっても、肌寒さを感じるようになってきていた。
私は毛布にくるまりながら、ユリウスの訪れを待つ。
ユリウスは仕事が長引いたようで、私の部屋に少し遅れて入ってきた。
その顔は、少し申し訳なさそうだった。
「待たせた……眠そうだな」
ユリウスは優しく微笑むと静かにベッドに入ると、私を毛布ごと柔らかく抱きしめた。
「無理をしなくていいんだぞ、ミラベル。今日はもうゆっくり休んで……」
ユリウスがそう言う唇を、私は無理矢理奪い去った。
激しい動きで、毛布が脱げる。
いつになく強引な私の振る舞いにユリウスが目を丸くする。
だけど慣れ親しんだ唇の感覚に、ユリウスは私の唇の奥へと舌を伸ばした。
私の口内で、ふたりの舌が絡み合う。
「ん……んっ……」
口を塞ぎ合ってるので、声にはならない。
ただ艶めかしいユリウスの声に、私の体は火照っていく。
いつもより長いキスは、私が酸欠で気を遠くする直前にほどかれた。
「はあ……」
声が漏れる。
ユリウスが気遣わしげに私を見る。
「何かあったか?」
「……いえ……ただ、ただ、あなたに触れたくて」
「……そうか」
ユリウスはすっかり火照った私の体の輪郭を撫でた。
敏感になっている体はゾクゾクと震えていく。
ああ、その手を、もっと、もっと気持ちいいところに……。
すっかりユリウスに知り尽くされた私の体。
なのに、ユリウスは焦らすように、胸の頂や、足の間を避けていく。
「いじわる……」
そうせがむと、ユリウスはニヤリと笑った。
「どうしてほしい?」
「いつもみたいに……もっと、私の……私の中に、触れて」
「ああ」
ユリウスはネグリジェの裾に手を潜り込ませた。
私の太ももが、歓喜に震えた。
私は学び、ユリウスは働き、夜にはふたり愛しくも激しい時間を過ごす。
私にはまだ懐妊の兆しはなく、それだけが少し不安として残っていたけれど、それ以外は、まぎれもなく幸せだった。
季節は秋を過ぎ、冬になろうとしていた。
「そう心配することありませんわ!」
「魔族はなかなか妊娠しないものですもの!」
ニンフとシルフはそう言ってくれた。
「陛下は長らく魔界にいて、かつては人間であったお体も次第に魔族化してますからね……」
「お妃様も、魔族と人間の子ですから、魔族としての形質が出ているのかもしれませんわ!」
「…………そう、ね」
けれども、そもそも、私は子供を産むためにここに来た。
いや、今となってはもちろん私とユリウスの間柄はそれだけではない。
そう信じている。
ただ、申し訳なさが、つきまとう。
いや、それよりも、もっと……。
たぶん、私はユリウスとの子供がほしいのだ。
幸せな、両親と子供という家族。
幼い頃から私になかったもの。
それに憧れている。
そういうことなのだ、きっと。
夜が来た。
堅牢な城の中にあっても、肌寒さを感じるようになってきていた。
私は毛布にくるまりながら、ユリウスの訪れを待つ。
ユリウスは仕事が長引いたようで、私の部屋に少し遅れて入ってきた。
その顔は、少し申し訳なさそうだった。
「待たせた……眠そうだな」
ユリウスは優しく微笑むと静かにベッドに入ると、私を毛布ごと柔らかく抱きしめた。
「無理をしなくていいんだぞ、ミラベル。今日はもうゆっくり休んで……」
ユリウスがそう言う唇を、私は無理矢理奪い去った。
激しい動きで、毛布が脱げる。
いつになく強引な私の振る舞いにユリウスが目を丸くする。
だけど慣れ親しんだ唇の感覚に、ユリウスは私の唇の奥へと舌を伸ばした。
私の口内で、ふたりの舌が絡み合う。
「ん……んっ……」
口を塞ぎ合ってるので、声にはならない。
ただ艶めかしいユリウスの声に、私の体は火照っていく。
いつもより長いキスは、私が酸欠で気を遠くする直前にほどかれた。
「はあ……」
声が漏れる。
ユリウスが気遣わしげに私を見る。
「何かあったか?」
「……いえ……ただ、ただ、あなたに触れたくて」
「……そうか」
ユリウスはすっかり火照った私の体の輪郭を撫でた。
敏感になっている体はゾクゾクと震えていく。
ああ、その手を、もっと、もっと気持ちいいところに……。
すっかりユリウスに知り尽くされた私の体。
なのに、ユリウスは焦らすように、胸の頂や、足の間を避けていく。
「いじわる……」
そうせがむと、ユリウスはニヤリと笑った。
「どうしてほしい?」
「いつもみたいに……もっと、私の……私の中に、触れて」
「ああ」
ユリウスはネグリジェの裾に手を潜り込ませた。
私の太ももが、歓喜に震えた。
0
お気に入りに追加
1,045
あなたにおすすめの小説
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛
らがまふぃん
恋愛
人の心を持たない美しく残酷な公爵令息エリアスト。学園祭で伯爵令嬢アリスと出会ったことから、エリアストの世界は変わっていく。 ※残酷な表現があります。苦手な方はご遠慮ください。ご都合主義です。笑ってご容赦くださいませ。 *R5.1/28本編完結しました。数話お届けいたしました番外編、R5.2/9に最終話投稿いたしました。時々思い出してまた読んでくださると嬉しいです。ありがとうございました。 たくさんのお気に入り登録、エール、ありがとうございます!とても励みになります!これからもがんばって参ります! ※R5.6/1続編 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛 投稿いたしました。再度読み返してくださっている方、新たに読み始めてくださった方、すべての方に感謝申し上げます。これからもよろしくお願い申し上げます。 ※R5.7/24お気に入り登録200突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。 ※R5.10/29らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R5.11/12お気に入り登録300突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。 ※R6.1/27こちらの作品と、続編 美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れる程の愛(前作) の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.10/29に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
※R6.11/17お気に入り登録500突破記念といたしまして、感謝を込めて一話お届けいたします。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる