上 下
93 / 105

第93話 ほとばしる欲情

しおりを挟む
 祖母と話して落ち着いたと思っていた私の体は、ユリウスに抱き締められたせいか火照りを取り戻していた。

「ゆ、ユリウス……」

 赤らんだ顔をユリウスの肩に埋める。
 ユリウスがそんな私の顔を持ち上げる。

「……顔が真っ赤だ。体調は?」

「……変な夢を見たの……あなたじゃないあなたに……その、襲われる夢」

 モゴモゴとしながらも本当のことを言う。

「……夢魔だ」

 ユリウスは顔をしかめた。

「インキュバスだ。あいつは俺に反抗的な方だから……」

「そういえば、アーダーベルトの名前も口にしてたわ……」

「そうか……ところで、ミラベル……こんな服、持っていたか?」

 ユリウスの言葉で、自分の服装が白いワンピースのままなのに気付く。
 そしてその布を胸が押し上げていることも。

「あっ……」

 慌てて胸元を隠す。

「こ、これはその後おばあさまの夢も見て……」

「先々代魔王の王妃様?」

「その時に戴いてきたワンピースなのだけれど……あ、そこのハサミもそう」

「そうか……」

 ベッドに落ちていたハサミをユリウスはサイドボードに置いた。

「…………」

 ユリウスの私を抱く手が変化していく。
 強く、離さないように抱き締めていた手が、輪郭を確かめるように体を撫でていく。

「あ、あの、ユリウス……?」

 問いかけた口をキスで塞がれた。

「ん……」

 そう、そうだ。キスだ。キスがなかったから、私は夢の中のあの男をユリウスじゃないと思ったんだ。

 口を離して、ユリウスは私の顔に手を添えた。

「……ミラベルが、そんな顔をしているから……」

 ユリウスの顔は切なく赤らんでいた。

「お、お仕事は……?」

「もう夕食の時間だ……」

「じゃ、じゃあ食べに行かなくちゃ……」

「その前に……君を、食べたい」

 耳元で囁くと同時に、ベッドに押し倒された。

「ひゃっ……」

「……すまない」

「はう……」

 白地のワンピースに、私の胸が透けている。
 ユリウスは布越しに私の胸に食らいついた。

「あっ……ああっ……!」

 薄い布越しの愛撫は、私の体を火照らせていく。

「ユリウス……っ!」

 ユリウスはワンピースの裾から手を伸ばしてくる。
 ぐちゃぐちゃになっている私の下半身は、下着を着けていなかった。
 そのままユリウスが直接私に触れてくる。

 淫らな水音が寝室に響く。

「んん……」

 私は口を手の平で覆った。

「今更……何を恥ずかしがることがある?」

「だ、だって……」

 夕食をまだ取っていないのだ。
 ニンフやシルフが耳を澄ませているかもしれない。

「うん……じゅうぶんにとろけたな」

 そういうとユリウスはさっさと服を脱ぎ捨てた。
 ユリウス自身はすでにそそり立っていた。

「挿れるぞ、ミラベル」

「はい……」

 消え入りそうな声で返事をする。
 ユリウスの動きが一瞬止まった。

「……嫌なのなら……」

「い、嫌じゃないです……こ、こんなになっちゃってるのに放っておかないでください……」

「うん」

 ユリウスははにかんだように笑うと、私にキスをした。
 キスをしながら器用に私の中にゆっくり入ってくる。

「……っ……っ」

 キスをしながらだとなかなか息がしづらい。
 必死にユリウスの背をかき抱く。
 ユリウスもそれに応えて、私を抱き締める。

 私の中を熱い塊が押し進んでくる。
 私の中は蠢きそれを抱き締める。

「……っ……っ」

 止めどないキスの間、私の中に収まったユリウスから、精が放たれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る

束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。 幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。 シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。 そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。 ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。 そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。 邪魔なのなら、いなくなろうと思った。 そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。 そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。 無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。

【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される

吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。

処理中です...