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第88話 贈り物
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「まあまあ……。あ、そうだ、ええと……」
私は持ってきて、テーブルの上に置いていた包みを取り上げた。
「ドラキュラさん、これ……」
「なんです?」
そう言いながらドラキュラはさすがに体を起こして包みを開く。
中には私が仕立て部屋に手伝ってもらったハンカチーフが入っている。
「いつものお礼です……こんなもので申し訳ないのですが……」
「いえ、素敵です。さすがお妃様です!」
そういうとさっそくヴァンパイアは服の胸ポケットから覗くハンカチーフを取り替えた。
「どうだ、ユリウス、似合っているか」
「……ミラベルが繕ったものだ、似合わないわけがない」
「お前、すねているな」
ドラキュラがニヤニヤしながら指摘する。
「すねてない」
すねていた。
なんて分かりやすい人だろう。
「はい、ユリウス」
私はもう一つの包みをユリウスに渡した。
「…………」
ユリウスの頬が思い切り緩む。かわいらしい。
その中からユリウスは花のあしらわれた壁飾りを取り出した。
「……ええと、あなたの私室ってなんだか飾り気がなかったから……その、余計なお世話なら、そこら辺に放っておいてくれていいから」
「まさか! 嬉しいよ!」
頬ずりせんばかりの勢いでユリウスは壁飾りを抱きしめた。
「ああ、すべての疲れが報われていく……」
「大げさな……」
私は苦笑しながら、空になったユリウスのティーカップにお茶をさらに注ぐ。
「……お妃様もすっかりここに慣れましたねえ」
しみじみとドラキュラがようやくお茶を飲みながら、そう言った。
「そうね、まだわからないことや知らないこともあるけれど……だいぶ慣れたと思うわ。あなたのおかげでもあります。ありがとう、ドラキュラ」
「どういたしまして。あなた方のお役に立てて何よりです」
「……成功させよう、結婚式」
ユリウスが静かに、しかし決意みなぎる声でそう言った。
「はい」
「ああ」
私達はうなずいた。
私は持ってきて、テーブルの上に置いていた包みを取り上げた。
「ドラキュラさん、これ……」
「なんです?」
そう言いながらドラキュラはさすがに体を起こして包みを開く。
中には私が仕立て部屋に手伝ってもらったハンカチーフが入っている。
「いつものお礼です……こんなもので申し訳ないのですが……」
「いえ、素敵です。さすがお妃様です!」
そういうとさっそくヴァンパイアは服の胸ポケットから覗くハンカチーフを取り替えた。
「どうだ、ユリウス、似合っているか」
「……ミラベルが繕ったものだ、似合わないわけがない」
「お前、すねているな」
ドラキュラがニヤニヤしながら指摘する。
「すねてない」
すねていた。
なんて分かりやすい人だろう。
「はい、ユリウス」
私はもう一つの包みをユリウスに渡した。
「…………」
ユリウスの頬が思い切り緩む。かわいらしい。
その中からユリウスは花のあしらわれた壁飾りを取り出した。
「……ええと、あなたの私室ってなんだか飾り気がなかったから……その、余計なお世話なら、そこら辺に放っておいてくれていいから」
「まさか! 嬉しいよ!」
頬ずりせんばかりの勢いでユリウスは壁飾りを抱きしめた。
「ああ、すべての疲れが報われていく……」
「大げさな……」
私は苦笑しながら、空になったユリウスのティーカップにお茶をさらに注ぐ。
「……お妃様もすっかりここに慣れましたねえ」
しみじみとドラキュラがようやくお茶を飲みながら、そう言った。
「そうね、まだわからないことや知らないこともあるけれど……だいぶ慣れたと思うわ。あなたのおかげでもあります。ありがとう、ドラキュラ」
「どういたしまして。あなた方のお役に立てて何よりです」
「……成功させよう、結婚式」
ユリウスが静かに、しかし決意みなぎる声でそう言った。
「はい」
「ああ」
私達はうなずいた。
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