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第81話 対処すべきこと
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「大変申し訳ないのですが、俺の代わりにカーミラを護衛につけるので先に帰っていただけますか、お妃様」
「…………はい」
ドラキュラが怒っている。
笑顔を作っているものの、そのこめかみには青筋がピクピクと浮いている。
可哀想にカーミラ嬢は涙目になりながら私達を玄関へと導く。
馬車に乗り込んで、一息ついて、ようやく私は口を開いた。
「……あの、カーミラ嬢、ご両親は何をお考えなのかしら?」
「…………お妃様はよく考えれば陛下の義妹にあたるでしょう?」
「ああ、まあ、本来ならそうなるわね……?」
血のつながりはなかったとはいえきょうだいでの結婚はやはり不道徳な気がして、見て見ぬフリをしていたけれど、そうなってしまう。
「ですから、私が陛下に嫁げないなら、兄を陛下の義妹に嫁がせてしまえばいい、と……わ、私がいけないのです。陛下とお妃様が心から結ばれてるのを確認しておきながら認めたくないばかりに、両親の思惑を否定もできず……。勝手に盛り上がる両親を止められず……」
「……何か、苦労してそうね?」
「……あの人たちは、昔からああなので……」
カーミラ嬢は心底疲れたようにそう言った。
「……申し訳ありません、お妃様」
「いいわ、もう……。よくわかったから、自分が何をするべきか」
「お妃様?」
カーミラ嬢、ニンフ、シルフが困惑した顔をする。
「早く帰りたいわ、ねえ、ニンフ、シルフ、ペガサスを飛ばせる方法はある?」
「何があった! ミラベル!!」
城から駆け足でユリウスが血相を変えて飛び出してくる。
陸路で帰ってくるはずの私が空を飛んできたのだ。こうもなろう。
「ユリウス!」
私は彼に駆け寄る。
「ユリウス……お願いがあります」
「なんだ。俺にできることならなんでもしよう」
「……私と、結婚してください」
「……するが」
困惑した顔をしながらユリウスが私の両肩を抱く。
どうしたのかと聞きたそうな顔だ。
「今すぐにしてください。次のパーティーを結婚式にしてください!」
「…………話を、ちゃんと聞かせてくれ」
ユリウスは私の願いにまっすぐそう答えた。
カーミラ嬢のことはシルフとニンフに任せ、私とユリウスはユリウスの私室に入った。
ここに来るのは初めてだった。
私の部屋より調度品が少ない。
壁には小さな鳥の絵が飾ってあるだけだ。
ソファはさすがに座り心地がいい。
ユリウスが人払いをして、机を挟んで私と向かい合う。
「……ヴァンパイアの家で何かあったのか?」
「ありました。カーミラ嬢から聞きました……私達に不名誉な噂が数多く立っています」
「……ああ、それは、把握していた……カーミラ、喋ったのか」
「私が頼んだのです。……中にはアーダーベルトに私が穢された、なんてものもあるらしいですね」
「……ああ」
ユリウスは顔をしかめた。
ユリウスは噂のことを知っていたのだ。
知った上で普通に接し続けてくれていた。
「……そんな私がのうのうと王妃面をしてはいられません」
「大丈夫だ、君は俺が守る。……噂の払拭はなかなかに難しいと思うが……それでも、できる限りのことを……」
「噂の払拭を一撃でしようという提案です」
「……それが、結婚か」
「はい」
「…………はい」
ドラキュラが怒っている。
笑顔を作っているものの、そのこめかみには青筋がピクピクと浮いている。
可哀想にカーミラ嬢は涙目になりながら私達を玄関へと導く。
馬車に乗り込んで、一息ついて、ようやく私は口を開いた。
「……あの、カーミラ嬢、ご両親は何をお考えなのかしら?」
「…………お妃様はよく考えれば陛下の義妹にあたるでしょう?」
「ああ、まあ、本来ならそうなるわね……?」
血のつながりはなかったとはいえきょうだいでの結婚はやはり不道徳な気がして、見て見ぬフリをしていたけれど、そうなってしまう。
「ですから、私が陛下に嫁げないなら、兄を陛下の義妹に嫁がせてしまえばいい、と……わ、私がいけないのです。陛下とお妃様が心から結ばれてるのを確認しておきながら認めたくないばかりに、両親の思惑を否定もできず……。勝手に盛り上がる両親を止められず……」
「……何か、苦労してそうね?」
「……あの人たちは、昔からああなので……」
カーミラ嬢は心底疲れたようにそう言った。
「……申し訳ありません、お妃様」
「いいわ、もう……。よくわかったから、自分が何をするべきか」
「お妃様?」
カーミラ嬢、ニンフ、シルフが困惑した顔をする。
「早く帰りたいわ、ねえ、ニンフ、シルフ、ペガサスを飛ばせる方法はある?」
「何があった! ミラベル!!」
城から駆け足でユリウスが血相を変えて飛び出してくる。
陸路で帰ってくるはずの私が空を飛んできたのだ。こうもなろう。
「ユリウス!」
私は彼に駆け寄る。
「ユリウス……お願いがあります」
「なんだ。俺にできることならなんでもしよう」
「……私と、結婚してください」
「……するが」
困惑した顔をしながらユリウスが私の両肩を抱く。
どうしたのかと聞きたそうな顔だ。
「今すぐにしてください。次のパーティーを結婚式にしてください!」
「…………話を、ちゃんと聞かせてくれ」
ユリウスは私の願いにまっすぐそう答えた。
カーミラ嬢のことはシルフとニンフに任せ、私とユリウスはユリウスの私室に入った。
ここに来るのは初めてだった。
私の部屋より調度品が少ない。
壁には小さな鳥の絵が飾ってあるだけだ。
ソファはさすがに座り心地がいい。
ユリウスが人払いをして、机を挟んで私と向かい合う。
「……ヴァンパイアの家で何かあったのか?」
「ありました。カーミラ嬢から聞きました……私達に不名誉な噂が数多く立っています」
「……ああ、それは、把握していた……カーミラ、喋ったのか」
「私が頼んだのです。……中にはアーダーベルトに私が穢された、なんてものもあるらしいですね」
「……ああ」
ユリウスは顔をしかめた。
ユリウスは噂のことを知っていたのだ。
知った上で普通に接し続けてくれていた。
「……そんな私がのうのうと王妃面をしてはいられません」
「大丈夫だ、君は俺が守る。……噂の払拭はなかなかに難しいと思うが……それでも、できる限りのことを……」
「噂の払拭を一撃でしようという提案です」
「……それが、結婚か」
「はい」
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