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第52話 パーティーに向けて
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翌朝、ユリウスの部屋で朝食をとり、自分の部屋に戻って刺繍をしていると、パーティーのドレスを選びたいから仕立て部屋に来てほしいとエルフから伝言があった。
ニンフを引き連れ仕立て部屋に向かうと、エルフがまずは服ではない何かを運んできた。
「お妃様。例の宝石で作ったネックレスが届いております」
「ああ……」
ユリウスのことでいっぱいいっぱいになっていたせいで、宝石を預けていたことすら忘れかけていた。
「これをまずはつけてもらって、好みなどの参考にしたいそうです」
箱に入ったネックレスを見せてもらう。
緑色の宝石が埋まっている銀のネックレス。
「つけてみましょう、ぜひ!」
ニンフが声を弾ませそう言った。
「だ、大丈夫?」
「ええ、もちろんですとも」
エルフがにっこり笑った。
着てきたシンプルなドレスのままネックレスをつけてもらい、鏡を覗き込む。
「ああ、お美しいです! ……すっかり髪も艶めき、肌荒れや唇の荒れもなくなりましたねえ、お妃様」
ニンフがどこかしみじみしながらそう言った。
確かに、魔王城に来た頃の私と比べれば雲泥の差だろう。
「あなたたちが世話してくれたおかげよ、ニンフ。いつもありがとう」
「もったいないお言葉でございます」
そう返してきながらも、ニンフはまんざらでもなさそうだった。
「こちらのネックレスでしたら、ここら辺のドレスがこの季節は合うかと」
そういえばもうそろそろ秋なのだ。
今着ているものより、布が厚いように見えた。
「ええ、それにするわ」
私は即決した。
衣装を選ぶのも王妃の役目と言われもしたけれど、未だに私はそれをこなすほどに衣装のことを知らなかった。
「では、パーティーの日に着られるようにとっておきますね」
「お願いするわ」
午前を仕立て部屋で過ごし、久しぶりのひとりでの昼食をとる。
今頃、ユリウスはどうしているだろうか?
お昼をとれているだろうか、それとも執務に追われているのだろうか。
そして午後には賢者の元へ行く。
「お妃様、本日はこのような本をご用意しました」
賢者が差し出してきた本の見出しを読む。
「儀礼用の……衣装……?」
「合っています」
表紙は素っ気ない文字だけだったけれど、開いてみるとそれは図と文字が一緒になっていた。
女性ものと男性もの、どちらの衣装についても載っている。
魔界のものなのだろう、どれも黒い衣装ばかりだった。
「これからお妃様もパーティーに出る機会が増えますでしょうし、ぜひに」
「ありがとうございます、先生」
私は本を抱き寄せた。
「今日はこれを読む時間にいたしましょうか。わからない文字があればお声がけください」
「はい」
ああ、パーティーが近付いている。それを私は実感した。
その夜、ユリウスは訪ねてこなかった。
休んでいた分の仕事が溜まっているのだろう。
しばらくユリウスが訪ねてこない夜が続いた。
ニンフを引き連れ仕立て部屋に向かうと、エルフがまずは服ではない何かを運んできた。
「お妃様。例の宝石で作ったネックレスが届いております」
「ああ……」
ユリウスのことでいっぱいいっぱいになっていたせいで、宝石を預けていたことすら忘れかけていた。
「これをまずはつけてもらって、好みなどの参考にしたいそうです」
箱に入ったネックレスを見せてもらう。
緑色の宝石が埋まっている銀のネックレス。
「つけてみましょう、ぜひ!」
ニンフが声を弾ませそう言った。
「だ、大丈夫?」
「ええ、もちろんですとも」
エルフがにっこり笑った。
着てきたシンプルなドレスのままネックレスをつけてもらい、鏡を覗き込む。
「ああ、お美しいです! ……すっかり髪も艶めき、肌荒れや唇の荒れもなくなりましたねえ、お妃様」
ニンフがどこかしみじみしながらそう言った。
確かに、魔王城に来た頃の私と比べれば雲泥の差だろう。
「あなたたちが世話してくれたおかげよ、ニンフ。いつもありがとう」
「もったいないお言葉でございます」
そう返してきながらも、ニンフはまんざらでもなさそうだった。
「こちらのネックレスでしたら、ここら辺のドレスがこの季節は合うかと」
そういえばもうそろそろ秋なのだ。
今着ているものより、布が厚いように見えた。
「ええ、それにするわ」
私は即決した。
衣装を選ぶのも王妃の役目と言われもしたけれど、未だに私はそれをこなすほどに衣装のことを知らなかった。
「では、パーティーの日に着られるようにとっておきますね」
「お願いするわ」
午前を仕立て部屋で過ごし、久しぶりのひとりでの昼食をとる。
今頃、ユリウスはどうしているだろうか?
お昼をとれているだろうか、それとも執務に追われているのだろうか。
そして午後には賢者の元へ行く。
「お妃様、本日はこのような本をご用意しました」
賢者が差し出してきた本の見出しを読む。
「儀礼用の……衣装……?」
「合っています」
表紙は素っ気ない文字だけだったけれど、開いてみるとそれは図と文字が一緒になっていた。
女性ものと男性もの、どちらの衣装についても載っている。
魔界のものなのだろう、どれも黒い衣装ばかりだった。
「これからお妃様もパーティーに出る機会が増えますでしょうし、ぜひに」
「ありがとうございます、先生」
私は本を抱き寄せた。
「今日はこれを読む時間にいたしましょうか。わからない文字があればお声がけください」
「はい」
ああ、パーティーが近付いている。それを私は実感した。
その夜、ユリウスは訪ねてこなかった。
休んでいた分の仕事が溜まっているのだろう。
しばらくユリウスが訪ねてこない夜が続いた。
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