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第47話 3人の仕事
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生放送は昼からなので、私はまず事務所に出勤した。
三角社長はまだ来ていなかった。重役出勤のようだ。
「おはようございます」
深海さんは自分のデスクで私に微笑みかけた。
手元のキーボードの打鍵が止まらない。
「おはようございます!」
「モラル藤原さんに連絡を入れました。前向きに考えていただけるそうです。もしかしたら午後に社長に話しに行くときには原稿いただけるかもしれません」
「す、すごい……」
「なかなかに仕事の早い方です。もちろん、3人の動画が収益化したら構成作家代はお支払いします……つまり、収益化できるように頑張らなければいけません」
「おお……」
「僕は社長に提出する企画書の作成中です。モラル藤原さんが動画配信を始めた頃のノウハウなども教えてくださりました」
「モラル藤原さんに感謝ですね……」
「あ、あと、作詞家の最上寵児さんから『三本の矢』の歌詞の第一稿をメールでいただきました。コピーしてきてもらえますか? 僕ら二人と社長とトライアングルアルファの3人分でとりあえず」
「はい! 昨日の一稿じゃなかったんですね……」
「昨日のはたたき台、というのがふさわしい感じですね。韻も特に踏んでいませんし。気になるところにチェックを入れていきます。是非、高山さんの意見もお願いします」
「が、がんばります」
私はコピー機に向かい、歌詞の紙を取ってデスクに戻り、『三本の矢』の歌詞を確認し始めた。
「おはよう、みんな!」
三角社長が重役出勤してきた。
深海さんが時間を確認し、私にアイコンタクト。出掛ける時間だった。
「社長! 最上寵児さんからの『三本の矢』の第一稿、デスクに置いておきます」
「お、了解! 生放送ガンバレ!」
「はい! 行ってきます!」
慌ただしく事務所を出る。
今日はバンではなく深海さんの車、深海さんの運転だ。私は助手席。
「おはよー! 由香ちゃんフカミン」
「おはようございます」
「おはようございます!」
リクくんシュンくんエイジくんは今日も元気だ。
「『三本の矢』の歌詞が届いています。配ります」
「やったー! さすが最上さん仕事早い!」
3人はワイワイと歌詞についてああだこうだ言い出した。
「ここ、俺パートかな?」
「『黄色い太陽燦々と』だし、まあそうだろうな」
リクくんの疑問にエイジくんが答える。シュンくんはウトウトし始めていた。
大学とドラマとアイドル業、疲れているのだろう。
「どんな曲つくんだろー。フカミンこれANさんにも行ってるんだっけ?」
「ANさんはたたき台はともかく歌詞になったのなら決定稿しか見たくないとおっしゃっているから行っていないよ。僕たちが早く最上さんにフィードバックしないとな」
「はーい!」
「リク、しーっ」
「おっと」
シュンくんが寝返りを打つけど、目覚めない。
そうこうしているうちに、テレビ局に着いた。
3度目のテレビ局、さすがにだいぶ慣れてしまった。
「おはようございます!」
「トライアングルアルファさん、生放送よろしくおねがいします!」
「さっそく着替えてください!」
本日の生放送はお昼のバラエティ番組。
3人で衣装を着て、1分30秒の短縮バージョンを生放送のスタジオで歌い、その前後にトークを挟むという形式だ。
リハーサルはなしのぶっつけ本番だ。
「よし! 久々にあれ行っとこうぜ!」
「マジか」
「了解!」
着替えながらリクくんが叫ぶ。
シュンくんとエイジくんは苦笑いしながらも受け入れる。
「いつも心に太陽を!」
「爽やかな風のような笑顔を!」
「木陰のように安らげる場所を!」
「トライアングルアルファ! 出陣!」
3人の笑顔がまぶしかった。
その様子を深海さんが写真に収める。
「あー着替え中!」
「これは載せない。プライベート用」
深海さんは笑いながらリクくんにそう返す。
「……うん、お前らはやっぱ3人でいるときが楽しそうだ」
深海さんがしみじみとうなずいた。
「えへへー! でもCMがんばる! CD関連除けば、子役の時以来だなあ。がんばろ!」
「行ってきます」
「がんばってきます!」
メイクを終えた3人が慌ただしく控え室から出て行く、向かうはスタジオだ。
私と深海さんも急いでそれを追った。
「黄色い太陽あなたに煌めく! リクでーす!」
「青い風が心を奪う。シュンです」
「緑の木陰に癒やされて! エイジです」
「3人合わせてー」
「トライアングルアルファ!!!」
バラエティーの3人の出番はそのお決まりのあいさつから始まった。
司会の芸能人がうまいこと回してくれて、3人が次々に『春空の色』のセールスポイントを喋っていく。
そしてシュンくんにはもちろん、ドラマの話。
「もう明後日ということですが、緊張されます?」
「明後日放映分の撮影は終わっているのでそこまで……。あ、でも『telepathy rhythm』がどう流れるかは楽しみにしています」
「『刑事藤野の初恋』! 月曜9時からご覧のチャンネルで! お願いしまーす! それじゃあ、そろそろ歌ってもらいますか!」
カンペに目を配りながら司会者がよどみなくトークを回す。
3人は定位置に着く。
今日歌うのは『春空の色』の方だ。
『telepathy rhythm』はドラマでお楽しみください、と締める予定なのだ。
最初に出会ったとき以来の『春空の色』。
卒業シーズンの歌。少し、旬を過ぎた歌。
3人はなんだか、とても楽しそうだった。
大勢のスタッフさんの後ろで、私達はそれを見守る。
ちらりと隣の深海さんを見る。
深海さんは相変わらず「そこの振り付けはもうちょっと……ああ、音が……」などとぶつぶつ呟いていた。
三角社長はまだ来ていなかった。重役出勤のようだ。
「おはようございます」
深海さんは自分のデスクで私に微笑みかけた。
手元のキーボードの打鍵が止まらない。
「おはようございます!」
「モラル藤原さんに連絡を入れました。前向きに考えていただけるそうです。もしかしたら午後に社長に話しに行くときには原稿いただけるかもしれません」
「す、すごい……」
「なかなかに仕事の早い方です。もちろん、3人の動画が収益化したら構成作家代はお支払いします……つまり、収益化できるように頑張らなければいけません」
「おお……」
「僕は社長に提出する企画書の作成中です。モラル藤原さんが動画配信を始めた頃のノウハウなども教えてくださりました」
「モラル藤原さんに感謝ですね……」
「あ、あと、作詞家の最上寵児さんから『三本の矢』の歌詞の第一稿をメールでいただきました。コピーしてきてもらえますか? 僕ら二人と社長とトライアングルアルファの3人分でとりあえず」
「はい! 昨日の一稿じゃなかったんですね……」
「昨日のはたたき台、というのがふさわしい感じですね。韻も特に踏んでいませんし。気になるところにチェックを入れていきます。是非、高山さんの意見もお願いします」
「が、がんばります」
私はコピー機に向かい、歌詞の紙を取ってデスクに戻り、『三本の矢』の歌詞を確認し始めた。
「おはよう、みんな!」
三角社長が重役出勤してきた。
深海さんが時間を確認し、私にアイコンタクト。出掛ける時間だった。
「社長! 最上寵児さんからの『三本の矢』の第一稿、デスクに置いておきます」
「お、了解! 生放送ガンバレ!」
「はい! 行ってきます!」
慌ただしく事務所を出る。
今日はバンではなく深海さんの車、深海さんの運転だ。私は助手席。
「おはよー! 由香ちゃんフカミン」
「おはようございます」
「おはようございます!」
リクくんシュンくんエイジくんは今日も元気だ。
「『三本の矢』の歌詞が届いています。配ります」
「やったー! さすが最上さん仕事早い!」
3人はワイワイと歌詞についてああだこうだ言い出した。
「ここ、俺パートかな?」
「『黄色い太陽燦々と』だし、まあそうだろうな」
リクくんの疑問にエイジくんが答える。シュンくんはウトウトし始めていた。
大学とドラマとアイドル業、疲れているのだろう。
「どんな曲つくんだろー。フカミンこれANさんにも行ってるんだっけ?」
「ANさんはたたき台はともかく歌詞になったのなら決定稿しか見たくないとおっしゃっているから行っていないよ。僕たちが早く最上さんにフィードバックしないとな」
「はーい!」
「リク、しーっ」
「おっと」
シュンくんが寝返りを打つけど、目覚めない。
そうこうしているうちに、テレビ局に着いた。
3度目のテレビ局、さすがにだいぶ慣れてしまった。
「おはようございます!」
「トライアングルアルファさん、生放送よろしくおねがいします!」
「さっそく着替えてください!」
本日の生放送はお昼のバラエティ番組。
3人で衣装を着て、1分30秒の短縮バージョンを生放送のスタジオで歌い、その前後にトークを挟むという形式だ。
リハーサルはなしのぶっつけ本番だ。
「よし! 久々にあれ行っとこうぜ!」
「マジか」
「了解!」
着替えながらリクくんが叫ぶ。
シュンくんとエイジくんは苦笑いしながらも受け入れる。
「いつも心に太陽を!」
「爽やかな風のような笑顔を!」
「木陰のように安らげる場所を!」
「トライアングルアルファ! 出陣!」
3人の笑顔がまぶしかった。
その様子を深海さんが写真に収める。
「あー着替え中!」
「これは載せない。プライベート用」
深海さんは笑いながらリクくんにそう返す。
「……うん、お前らはやっぱ3人でいるときが楽しそうだ」
深海さんがしみじみとうなずいた。
「えへへー! でもCMがんばる! CD関連除けば、子役の時以来だなあ。がんばろ!」
「行ってきます」
「がんばってきます!」
メイクを終えた3人が慌ただしく控え室から出て行く、向かうはスタジオだ。
私と深海さんも急いでそれを追った。
「黄色い太陽あなたに煌めく! リクでーす!」
「青い風が心を奪う。シュンです」
「緑の木陰に癒やされて! エイジです」
「3人合わせてー」
「トライアングルアルファ!!!」
バラエティーの3人の出番はそのお決まりのあいさつから始まった。
司会の芸能人がうまいこと回してくれて、3人が次々に『春空の色』のセールスポイントを喋っていく。
そしてシュンくんにはもちろん、ドラマの話。
「もう明後日ということですが、緊張されます?」
「明後日放映分の撮影は終わっているのでそこまで……。あ、でも『telepathy rhythm』がどう流れるかは楽しみにしています」
「『刑事藤野の初恋』! 月曜9時からご覧のチャンネルで! お願いしまーす! それじゃあ、そろそろ歌ってもらいますか!」
カンペに目を配りながら司会者がよどみなくトークを回す。
3人は定位置に着く。
今日歌うのは『春空の色』の方だ。
『telepathy rhythm』はドラマでお楽しみください、と締める予定なのだ。
最初に出会ったとき以来の『春空の色』。
卒業シーズンの歌。少し、旬を過ぎた歌。
3人はなんだか、とても楽しそうだった。
大勢のスタッフさんの後ろで、私達はそれを見守る。
ちらりと隣の深海さんを見る。
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