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第44話 CDの打ち合わせ
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トライアングルアルファの3人も到着し、まずは新曲の打ち合わせとなった。
ライブで会ったレコード会社の井守さんとは久しぶりの再会だ。
そして外部の作曲家と作詞家さんがいらして、私は二人にあいさつをした。
「作曲家のANさんと作詞家の最上寵児さんです。お二人はデビュー曲『トライアングルα』のコンビでもあります。4枚目、今回はノンタイアップと言うこともあり、初心に返った楽曲作りをしていきたいと考えています」
深海さんが司会進行をつとめる。
「タイトルどうしようねえ~」
最上寵児さんは腕を組んだ。
「オレ、タイトルから決める派なんだよね。えっと『トライアングルα』『走り出した恋心』『トライアングル愛』『冬の落とし物』『春空の色』『telepathy rhythm』か……」
これまでのシングルのタイトルを最上さんは読み上げた。
「恋愛ソングはやっぱB面に入れる? 哲三?」
「需要を考えても、そうしたいね」
三角社長がどっしりとうなずいた。どうやら最上さんと三角社長は仲がよいらしい。
「うんうん……うーん、どう、高山さん? なんか案ない?」
「わ、私ですか!?」
「うん、ほら、僕らはもう凝り固まってるから。トライアングルアルファのイメージ。新しい風、ほしいなあって」
「え、えーっと、次のシングル発売は夏を予定しているんですよね……」
「はい。トライアングルアルファのデビュー1周年に合わせての発表になります」
私の確認に、瀬川さんが補足を入れてくれる。
「夏で……デビューで……一年で……うーん……」
『サマーバケーション』。安直すぎない? しかも休むの?
『夏の思い出』。もう思い出にしちゃう? 早くない?
自分の発想に即座に自分がツッコミを入れていく。
「さ、三人の成長とか……えっと……最近だとシュンのドラマとか……こういう別々の仕事とかもある中での結束とか……なんか、そこら辺を取り入れたらどうかなあ、と……」
しどろもどろで無難なことしか言えなかった。
しかし最上さんはウンウンと頷いてくれた。
「あーなるほどね。今の勢いなら多分これ出す頃にはもっと増えてるだろうね、別々の仕事」
「そうなんですか?」
リクくんがきょとんとして訊く。
「うん、この最上寵児が保障する。君らの仕事は増えるし、個々の仕事も増える。そうだね、なんかそういう感じ良いね。歌詞は行けそう。どうするANくん?」
「私は最上さんに従います。曲は何案もあるので、歌詞に合わせますよ。どうせ編曲もやりますしね」
「ANくんは頼もしいね~」
最上さんは嬉しそうに笑った。
「井守くんもそれでよいかな?」
「はい! 良い案だと思います!」
三角社長の確認に井守さんはニコニコと笑った。
「じゃあ、そっち方面で詰めていくか。となると問題はB面だなあ……恋愛ってほら、一辺倒になりがちだからね。パターンとか……よおし、トライアングルアルファの恋愛観とか聞いてみるか!」
「えー!」
リクくんがブーイングを出し、シュンくんとエイジくんが困り顔になる。
「俺ら恋愛禁止っスよ!」
「そんなん、表向きだろう18才」
「実際忙しくて彼女とか全員いないし……」
そういう話をしあう間柄のようだ、トライアングルアルファ。
「せめてハタチになるまでは交際関係は清く、というのがうちの方針ですね」
深海さんが補足を入れる。
「未成年って言ったってさあ、溜まるだろ、18才だぞ」
「寵児、女性がいるところではそういうの控えようね」
三角社長がさっと言う。コンプライアンスわりとちゃんとしてる……。
「おっと失礼。昭和のおっさんの悪い癖。アップデートしていかねえとなあ」
「でも、寵児さんの歌詞、古くさくないですよね」
ANさんが自発的に初めて喋った。
「おだてても何も出ねえぞ」
と言いつつ寵児さんは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、瀬川。瀬川ならいいだろ。お前の恋愛観」
「ぼ、僕ですか……」
深海さんはめちゃくちゃ困った顔をした。
「聞きたい! フカミンの恋愛話聞きたい!」
「いつもごまかしますもんね、深海さん」
「まあまあ」
リクくんが食いつき、エイジくんが追い打ちをかけ、シュンくんがなだめる。
私は、顔に感情が出ないよう必死にこらえていた。
「恋愛観と言われても……じょ、女性を大切にするとか?」
「ショボい」
最上さんは切って捨てた。
「自然を大切に、みたいな熱量で言いやがって……大切にするってたとえば何だ?」
「えーっと……あー……たとえば……元カノがいるとするじゃないですか……」
追い詰められた深海さんが思いっきり本当の話をし始めた。
この人、大丈夫か?
「その存在が今カノにバレたとき……あー、真っ向から向き合うとか……です……か……ね?」
「何でそんないきなり具体的なんだ?」
「実体験! 実体験だ!」
最上さんが苦笑し、リクくんがはしゃぐ。
「まあ、いいかもな、元カノの歌」
「いえ! 元カノではなく今カノを大事にすべきだと思います! 元カノの歌だとなんというかアイドルとのリアルタイム恋愛感がありません! トライアングルアルファにまだ元カノは早いかと!」
深海さんの熱量がヤバい。
なまじ本当のことを言ってしまったせいで、元カノの歌になるのはなんとしても避けたいようだ。
「まあ、そうだな」
最上さんはあっさりうなずいた。
「うん。歌詞のイメージはだいたいもらえた。ちょっと書いてくる。食堂借りるわ」
言うが早いが、最上さんは退室した。
嵐のような人である。というか今から書くのか……早い……。
「じゃあ、井守くんとプロモーションの話に移ろっか。ANくんはどうする?」
三角社長が司会進行を引き継いだ。
「勉強になりそうなので、よろしければ同席させていただきたいです」
「おっけー。いいよね、井守くん」
「はい、もちろんです」
『春空の色』の売り上げ報告から始まり、ノンタイアップの4枚目をどのように売り出すか、ひいてはどんなイベントを行っていくか、具体的な話を詰めていく。
「……ということで各店舗特典も充実させたいですね」
「いいね、いいねえ」
三角社長はニコニコしていた。
プロモーションの話は私にはよく分からない。
ただトライアングルアルファの3人がイベントを楽しみそうにしているのが印象的だった。
ライブで会ったレコード会社の井守さんとは久しぶりの再会だ。
そして外部の作曲家と作詞家さんがいらして、私は二人にあいさつをした。
「作曲家のANさんと作詞家の最上寵児さんです。お二人はデビュー曲『トライアングルα』のコンビでもあります。4枚目、今回はノンタイアップと言うこともあり、初心に返った楽曲作りをしていきたいと考えています」
深海さんが司会進行をつとめる。
「タイトルどうしようねえ~」
最上寵児さんは腕を組んだ。
「オレ、タイトルから決める派なんだよね。えっと『トライアングルα』『走り出した恋心』『トライアングル愛』『冬の落とし物』『春空の色』『telepathy rhythm』か……」
これまでのシングルのタイトルを最上さんは読み上げた。
「恋愛ソングはやっぱB面に入れる? 哲三?」
「需要を考えても、そうしたいね」
三角社長がどっしりとうなずいた。どうやら最上さんと三角社長は仲がよいらしい。
「うんうん……うーん、どう、高山さん? なんか案ない?」
「わ、私ですか!?」
「うん、ほら、僕らはもう凝り固まってるから。トライアングルアルファのイメージ。新しい風、ほしいなあって」
「え、えーっと、次のシングル発売は夏を予定しているんですよね……」
「はい。トライアングルアルファのデビュー1周年に合わせての発表になります」
私の確認に、瀬川さんが補足を入れてくれる。
「夏で……デビューで……一年で……うーん……」
『サマーバケーション』。安直すぎない? しかも休むの?
『夏の思い出』。もう思い出にしちゃう? 早くない?
自分の発想に即座に自分がツッコミを入れていく。
「さ、三人の成長とか……えっと……最近だとシュンのドラマとか……こういう別々の仕事とかもある中での結束とか……なんか、そこら辺を取り入れたらどうかなあ、と……」
しどろもどろで無難なことしか言えなかった。
しかし最上さんはウンウンと頷いてくれた。
「あーなるほどね。今の勢いなら多分これ出す頃にはもっと増えてるだろうね、別々の仕事」
「そうなんですか?」
リクくんがきょとんとして訊く。
「うん、この最上寵児が保障する。君らの仕事は増えるし、個々の仕事も増える。そうだね、なんかそういう感じ良いね。歌詞は行けそう。どうするANくん?」
「私は最上さんに従います。曲は何案もあるので、歌詞に合わせますよ。どうせ編曲もやりますしね」
「ANくんは頼もしいね~」
最上さんは嬉しそうに笑った。
「井守くんもそれでよいかな?」
「はい! 良い案だと思います!」
三角社長の確認に井守さんはニコニコと笑った。
「じゃあ、そっち方面で詰めていくか。となると問題はB面だなあ……恋愛ってほら、一辺倒になりがちだからね。パターンとか……よおし、トライアングルアルファの恋愛観とか聞いてみるか!」
「えー!」
リクくんがブーイングを出し、シュンくんとエイジくんが困り顔になる。
「俺ら恋愛禁止っスよ!」
「そんなん、表向きだろう18才」
「実際忙しくて彼女とか全員いないし……」
そういう話をしあう間柄のようだ、トライアングルアルファ。
「せめてハタチになるまでは交際関係は清く、というのがうちの方針ですね」
深海さんが補足を入れる。
「未成年って言ったってさあ、溜まるだろ、18才だぞ」
「寵児、女性がいるところではそういうの控えようね」
三角社長がさっと言う。コンプライアンスわりとちゃんとしてる……。
「おっと失礼。昭和のおっさんの悪い癖。アップデートしていかねえとなあ」
「でも、寵児さんの歌詞、古くさくないですよね」
ANさんが自発的に初めて喋った。
「おだてても何も出ねえぞ」
と言いつつ寵児さんは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、瀬川。瀬川ならいいだろ。お前の恋愛観」
「ぼ、僕ですか……」
深海さんはめちゃくちゃ困った顔をした。
「聞きたい! フカミンの恋愛話聞きたい!」
「いつもごまかしますもんね、深海さん」
「まあまあ」
リクくんが食いつき、エイジくんが追い打ちをかけ、シュンくんがなだめる。
私は、顔に感情が出ないよう必死にこらえていた。
「恋愛観と言われても……じょ、女性を大切にするとか?」
「ショボい」
最上さんは切って捨てた。
「自然を大切に、みたいな熱量で言いやがって……大切にするってたとえば何だ?」
「えーっと……あー……たとえば……元カノがいるとするじゃないですか……」
追い詰められた深海さんが思いっきり本当の話をし始めた。
この人、大丈夫か?
「その存在が今カノにバレたとき……あー、真っ向から向き合うとか……です……か……ね?」
「何でそんないきなり具体的なんだ?」
「実体験! 実体験だ!」
最上さんが苦笑し、リクくんがはしゃぐ。
「まあ、いいかもな、元カノの歌」
「いえ! 元カノではなく今カノを大事にすべきだと思います! 元カノの歌だとなんというかアイドルとのリアルタイム恋愛感がありません! トライアングルアルファにまだ元カノは早いかと!」
深海さんの熱量がヤバい。
なまじ本当のことを言ってしまったせいで、元カノの歌になるのはなんとしても避けたいようだ。
「まあ、そうだな」
最上さんはあっさりうなずいた。
「うん。歌詞のイメージはだいたいもらえた。ちょっと書いてくる。食堂借りるわ」
言うが早いが、最上さんは退室した。
嵐のような人である。というか今から書くのか……早い……。
「じゃあ、井守くんとプロモーションの話に移ろっか。ANくんはどうする?」
三角社長が司会進行を引き継いだ。
「勉強になりそうなので、よろしければ同席させていただきたいです」
「おっけー。いいよね、井守くん」
「はい、もちろんです」
『春空の色』の売り上げ報告から始まり、ノンタイアップの4枚目をどのように売り出すか、ひいてはどんなイベントを行っていくか、具体的な話を詰めていく。
「……ということで各店舗特典も充実させたいですね」
「いいね、いいねえ」
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