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第36話 背徳の玄関
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事務所ではなくマンションに直行した。
2人を起こす。
「エイジのジャージは必ずまた使うから、クリーニング出す……から着替えてくれ。リクのもいっしょに出しておく」
「はい」
エイジくんが勢いよくジャージを脱いだ。
私は目をそらす。
リクくんが同じく着替えながら口を開く。
「あ、そうだ、フカミン、アルちゃんに会ったよ~」
「ああ。高山さんから聞いたよ。レッドウェルの役者さんも来てたからその付き添いかな」
「元気そうだった~」
「そっか」
瀬川さんがいつもより淡々としてるように見えたのは、気のせいだろうか。
私がそう思ってしまうだけだろうか。
2人の着替えが終わり、車から降りていく。
2人は手を振りながらマンションの中に入っていった。
「事務所にバンを戻したら、今日はもう帰宅しましょう」
「あ、はい」
「今日も送りますよ。どこか寄りたいところありますか?」
「……ない、です」
「そうですか」
事務所の駐車場から瀬川さんの車が発進する。助手席の私は瀬川さんの横顔を見る。
いつもの瀬川さんに戻っている。そんな感じだった。
瀬川さんが口を開いた。
「……明日はお休みですね」
「あ、はい。事務所にも行かなくていい感じですか?」
「ええ、休めるときに休め、と言われていますので」
「なるほど」
「…………あの、由香さん」
呼ばれた下の名前に、私の胸が一回跳ねる。
「……よかったら、ウチ来ませんか?」
「…………」
明日は休み。私達は、付き合っている。お家への、お誘い。
普通だ。当たり前のことだ。
だけど私の頭に赤井アルファさんが浮かぶ。
赤井アルファさんのことを聞いたときの瀬川さんが浮かぶ。
こんなモヤモヤした気分じゃ、嫌だ。断ろうかな。
違う。だからこそ、行こう。行って、話をしよう。
「……お邪魔します」
「やった」
瀬川さんの顔に笑みがこぼれた。
花が綻ぶようなかわいらしい笑顔だった。
モヤモヤした胸が、高鳴った。
瀬川さんのマンションは事務所にほど近い場所にあった。
地下駐車場に車を停車し、エレベーターで上がる。
20階。そこそこお高いところに住んでいる。
「ああ、ここ、親父のマンションなんですよ。さすがにお給料で住めるほどではないですね」
「へえ……? えーっとあれですか資産運用のためにマンション数室買ったとかそういう……」
「あ、一棟です。このマンション一棟、親父の」
「!?」
お金持ち!?
そういえば常連仲間のお姉さんが瀬川さんの身だしなみはお金持ってそうとか言っていたような……。
「ああ、服も仕事ならちゃんとしたもの着ろっていろいろ勝手に送られてくるんですよね……。腕時計も入社祝いですし……まあ、場違いなものは来ないから、ありがたく着ますけど」
苦笑の瀬川さん。
瀬川さんのこと、そういえば私はあまり知らない。
アイドル事務所のマネージャーをやっていて、カメラが趣味。
そのくらいだろうか?
赤井アルファさんとの関係を勘ぐっている場合じゃない。
もっと、もっと、知らなくちゃ。知りたい。知っていかなくちゃ。
エレベーターが止まる。
瀬川さんに先導されてお部屋に向かう。
角部屋だった。
「どうぞ」
「お邪魔します」
玄関に入って、私は、前を行く瀬川さんに、靴を脱いでいる瀬川さんに。
「あ、あの、深海さん」
「え?」
名前を呼んで、彼が振り返って、私は背伸びをして、その口にキスをした。
メガネに顔が当たらないように横向きのキス。
「…………!」
瀬川さんは驚きに目を見開いたけれどすぐ目を閉じて、それなりにお高いはずのカバンを落として、私の背中に腕を回す。
長いキスの後に、どちらからともなく舌を絡め合い始めた。
「ん……ぷはっ……」
息が止まりそうになる直前、絶妙なタイミングで瀬川さんが唇を離す。
「……そんなに積極的だと、僕、めちゃくちゃにしたくなりますよ?」
「お願いします……深海さん」
「分かりました、由香さん」
瀬川さんがメガネを外して靴箱の上に置いた。
そして私を抱き上げる。私は足をばたつかせてハイヒールを脱ぎ捨てる。
黒くて、そんなに高くもなくて、ピンヒールでもない、私のハイヒール。
赤井アルファさんのとは、大違い。
そんな自分のハイヒールを横目に私は瀬川さんが私の服の中に手を滑らせてくるのを受け入れた。
私は瀬川さんにすべてを預けた。
スーツが脱がされる。ワイシャツのボタンを一個一個丁寧に外していくのがもどかしい。
タンクトップを付けた状態で、瀬川さんはブラを外す。
ずらされて、タンクトップに乳首が浮く。
タンクトップ越しにそこをいじられる。
「ん……やあん」
もじもじと太ももを擦り合わせれば、めざとくそれを見抜かれ、足が割り入れられる。
「乳首、勃ってますね」
嬉しそうに笑いながら、瀬川さんはぐいぐいと乳首を抓む。
「もしかして、ずっとほしかった?」
「はい……」
「タンクトップ、まくり上げて」
私は素直に従う。
上に上がるタンクトップ、ズレたブラ、丸見えになる胸。
「すごいエロいですよ、由香さん」
そう言って、瀬川さんが私の胸にしゃぶりついた。
「あ……ああ!」
瀬川さんは胸をなぶりながら器用に私のパンツのチャックを下ろす。
服が、玄関に脱ぎ散らされていく。
2人を起こす。
「エイジのジャージは必ずまた使うから、クリーニング出す……から着替えてくれ。リクのもいっしょに出しておく」
「はい」
エイジくんが勢いよくジャージを脱いだ。
私は目をそらす。
リクくんが同じく着替えながら口を開く。
「あ、そうだ、フカミン、アルちゃんに会ったよ~」
「ああ。高山さんから聞いたよ。レッドウェルの役者さんも来てたからその付き添いかな」
「元気そうだった~」
「そっか」
瀬川さんがいつもより淡々としてるように見えたのは、気のせいだろうか。
私がそう思ってしまうだけだろうか。
2人の着替えが終わり、車から降りていく。
2人は手を振りながらマンションの中に入っていった。
「事務所にバンを戻したら、今日はもう帰宅しましょう」
「あ、はい」
「今日も送りますよ。どこか寄りたいところありますか?」
「……ない、です」
「そうですか」
事務所の駐車場から瀬川さんの車が発進する。助手席の私は瀬川さんの横顔を見る。
いつもの瀬川さんに戻っている。そんな感じだった。
瀬川さんが口を開いた。
「……明日はお休みですね」
「あ、はい。事務所にも行かなくていい感じですか?」
「ええ、休めるときに休め、と言われていますので」
「なるほど」
「…………あの、由香さん」
呼ばれた下の名前に、私の胸が一回跳ねる。
「……よかったら、ウチ来ませんか?」
「…………」
明日は休み。私達は、付き合っている。お家への、お誘い。
普通だ。当たり前のことだ。
だけど私の頭に赤井アルファさんが浮かぶ。
赤井アルファさんのことを聞いたときの瀬川さんが浮かぶ。
こんなモヤモヤした気分じゃ、嫌だ。断ろうかな。
違う。だからこそ、行こう。行って、話をしよう。
「……お邪魔します」
「やった」
瀬川さんの顔に笑みがこぼれた。
花が綻ぶようなかわいらしい笑顔だった。
モヤモヤした胸が、高鳴った。
瀬川さんのマンションは事務所にほど近い場所にあった。
地下駐車場に車を停車し、エレベーターで上がる。
20階。そこそこお高いところに住んでいる。
「ああ、ここ、親父のマンションなんですよ。さすがにお給料で住めるほどではないですね」
「へえ……? えーっとあれですか資産運用のためにマンション数室買ったとかそういう……」
「あ、一棟です。このマンション一棟、親父の」
「!?」
お金持ち!?
そういえば常連仲間のお姉さんが瀬川さんの身だしなみはお金持ってそうとか言っていたような……。
「ああ、服も仕事ならちゃんとしたもの着ろっていろいろ勝手に送られてくるんですよね……。腕時計も入社祝いですし……まあ、場違いなものは来ないから、ありがたく着ますけど」
苦笑の瀬川さん。
瀬川さんのこと、そういえば私はあまり知らない。
アイドル事務所のマネージャーをやっていて、カメラが趣味。
そのくらいだろうか?
赤井アルファさんとの関係を勘ぐっている場合じゃない。
もっと、もっと、知らなくちゃ。知りたい。知っていかなくちゃ。
エレベーターが止まる。
瀬川さんに先導されてお部屋に向かう。
角部屋だった。
「どうぞ」
「お邪魔します」
玄関に入って、私は、前を行く瀬川さんに、靴を脱いでいる瀬川さんに。
「あ、あの、深海さん」
「え?」
名前を呼んで、彼が振り返って、私は背伸びをして、その口にキスをした。
メガネに顔が当たらないように横向きのキス。
「…………!」
瀬川さんは驚きに目を見開いたけれどすぐ目を閉じて、それなりにお高いはずのカバンを落として、私の背中に腕を回す。
長いキスの後に、どちらからともなく舌を絡め合い始めた。
「ん……ぷはっ……」
息が止まりそうになる直前、絶妙なタイミングで瀬川さんが唇を離す。
「……そんなに積極的だと、僕、めちゃくちゃにしたくなりますよ?」
「お願いします……深海さん」
「分かりました、由香さん」
瀬川さんがメガネを外して靴箱の上に置いた。
そして私を抱き上げる。私は足をばたつかせてハイヒールを脱ぎ捨てる。
黒くて、そんなに高くもなくて、ピンヒールでもない、私のハイヒール。
赤井アルファさんのとは、大違い。
そんな自分のハイヒールを横目に私は瀬川さんが私の服の中に手を滑らせてくるのを受け入れた。
私は瀬川さんにすべてを預けた。
スーツが脱がされる。ワイシャツのボタンを一個一個丁寧に外していくのがもどかしい。
タンクトップを付けた状態で、瀬川さんはブラを外す。
ずらされて、タンクトップに乳首が浮く。
タンクトップ越しにそこをいじられる。
「ん……やあん」
もじもじと太ももを擦り合わせれば、めざとくそれを見抜かれ、足が割り入れられる。
「乳首、勃ってますね」
嬉しそうに笑いながら、瀬川さんはぐいぐいと乳首を抓む。
「もしかして、ずっとほしかった?」
「はい……」
「タンクトップ、まくり上げて」
私は素直に従う。
上に上がるタンクトップ、ズレたブラ、丸見えになる胸。
「すごいエロいですよ、由香さん」
そう言って、瀬川さんが私の胸にしゃぶりついた。
「あ……ああ!」
瀬川さんは胸をなぶりながら器用に私のパンツのチャックを下ろす。
服が、玄関に脱ぎ散らされていく。
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