上 下
32 / 57

第32話 お食事

しおりを挟む
 トライアングルアルファ行きつけの焼き肉屋のレディースランチはなかなかにボリュームたっぷりであった。
 私は三分の一をシュンくんにあげた。
 ……私、ここ最近、肉かカップ麺しか食べていない気がする……?
 ちょっと健康が気になってきたぞ。

「そういえばシュンくんたち3人は自分たちで自炊してるんだっけ?」
「はい。食べたものを写真撮って瀬川さんに報告してます」
「そうなんだ……! 私も瀬川さんに報告しようかな……」

 そうしたら、健康的な生活を送れるようになる気がする。

「あはは、いいですよ」

 瀬川さんが3人分のお肉を焼いてくれながら笑う。
 しかしその目が微妙に笑ってない。
 お仕事モードが抜けきってない感じの顔だ。

「……すごく厳しく見ますからね、その場合」

 なんか先日のカップ麺→コンビニ弁当のコンボがバレたらめちゃくちゃ叱られそうだった。

「……考えておきます。そういえば瀬川さんは料理は……?」
「こう見えて得意です」

 こう見えてというが、けっこうイメージ通りである。

「大学からひとり暮らしでしたし……まあ、家庭の一通りのことは。そういえば、明日から大学だな、シュン。一足先に、入学おめでとう」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「いろいろあると思うが、怪しいのには近付くなよ……本当いろいろあるから……大学……」

 なんだか瀬川さんが遠い目をした。
 いろいろあったらしい。気になるが、なんだか聞きにくい。

「深海さんの学生時代気になる」

 シュンくんがズバッと私の気持ちを代弁してくれた。

「あはは、この表情を見て聞くかー……まあいちばん大きかったのは結局社長に会ったことかなあ」
「就活の話……ですか?」
「はい、まあそんなところです」

 それは大学の話と呼べるのだろうか……?
 結局、瀬川さんはそれ以上、話はせず、シュンくんにサークルに入ることは禁止しないけれど、このご時世に未成年飲酒をさせるようなサークルにだけは入るなと口酸っぱく言い続けた。

「サークルは入るつもりはないです。アイドル活動と大学の両立でいっぱいっぱいですよ」
「そうか、まあサポートはしていくから、何でも言うんだぞ。高山さんもいるしな」
「あ、はい! 私がんばるね!」
「お願いします、高山さん、深海さん」

 シュンくんは深々と頭を下げた。
 真摯なその態度に気が引き締まる思いがした。



 事務所に到着、地下のダンススタジオに直行する。

「あー! 焼き肉のにおい!」

 ダンススタジオに入ってそうそうリクくんがそう叫んで駆け寄ってきた。
 鼻がいいのかよっぽど匂うのか。

「いいなー! フカミン、焼き肉! 俺も焼き肉ー!」
「今度な、今度リクとエイジも連れてくから」
「やったー!」

 リクくんとエイジくんがハイタッチをした。
 ハイタッチの姿勢のまま、エイジくんが口を開く。

「あ、そうだ。ジャージ届いてましたよ、深海さん」
「おお、じゃあ、さっそく着て記念撮影するか。明日のスポーツバラエティーでたぶん汚れるしな」
「今度は鏡のないとこで、写り込み厳禁!」
「はい、気を付けます」

 リクくんの注意に瀬川さんが頭をかいた。
 ダンススタジオは鏡だらけだ。ジャージを着て廊下に移動する。
 イメージカラーのお揃いのジャージ。胸元には三角形のロゴがついている。

「あれやろーぜ! あれ!」

 リクくんがジャージを着てはしゃぐ。

「はいはい」
「やろうか!」

 シュンくんエイジくんがリクくんに応える。

「黄色い太陽あなたに煌めく! リクでーす!」
「青い風が心を奪う。シュンです」
「緑の木陰に癒やされて! エイジです」
「3人合わせてー」
「トライアングルアルファ!!!」

 その一連の動作を、瀬川さんはせわしなくシャッターを切って写真に収めた。

「うん、いい感じ」
「あとで写真ちょうだい、フカミン。グループメッセージに送って!」
「はいはい」



 瀬川さんからの写真が送られてくる通知が鳴り止まない『トライアングルアルファ+スタッフ』と書かれたグループメッセージを私はニコニコと見つめた。
 そこにはキラキラに輝く彼らがいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚なんてお断りです! ─強引御曹司のとろあま溺愛包囲網─

立花 吉野
恋愛
25歳の瀬村花純(せむら かすみ)は、ある日、母に強引にお見合いに連れて行かれてしまう。数時間後に大切な約束のある花純は「行かない!」と断るが、母に頼まれてしぶしぶ顔だけ出すことに。  お見合い相手は、有名企業の次男坊、舘入利一。イケメンだけど彼の性格は最悪! 遅刻したうえに人の話を聞かない利一に、花純はきつく言い返してお見合いを切り上げ、大切な『彼』との待ち合わせに向かった。 『彼』は、SNSで知り合った『reach731』。映画鑑賞が趣味の花純は、『jimiko』というハンドルネームでSNSに映画の感想をアップしていて、共通の趣味を持つ『reach731』と親しくなった。大人な印象のreach731と会えるのを楽しみにしていた花純だったが、約束の時間、なぜかやって来たのはさっきの御曹司、舘入利一で──? 出逢った翌日には同棲開始! 強引で人の話を聞かない御曹司から、甘く愛される毎日がはじまって──……

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

狡くて甘い偽装婚約

本郷アキ
恋愛
旧題:あなたが欲しいの~偽りの婚約者に心も身体も囚われて~ エタニティブックス様から「あなたが欲しいの~偽りの婚約者に心も身体も囚われて」が「狡くて甘い偽装婚約」として改題され4/14出荷予定です。 ヒーロー視点も追加し、より楽しんでいただけるよう改稿しました! そのため、正式決定後は3/23にWebから作品を下げさせて頂きますので、ご承知おきください。 詳細はtwitterで随時お知らせさせていただきます。 あらすじ 元恋人と親友に裏切られ、もう二度と恋などしないと誓った私──山下みのり、二十八歳、独身。 もちろん恋人も友達もゼロ。 趣味といったら、ネットゲームに漫画、一人飲み。 しかし、病気の祖父の頼みで、ウェディングドレスを着ることに。 恋人を連れて来いって──こんなことならば、彼氏ができたなんて嘘をついたりしなければよかった。 そんな時「君も結婚相手探してるの? 実は俺もなんだ」と声をかけられる。 芸能人みたいにかっこいい男性は、私に都合のいい〝契約〟の話を持ちかけてきた! 私は二度と恋はしない。 もちろんあなたにも。 だから、あなたの話に乗ることにする。 もう長くはない最愛の家族のために。 三十二歳、総合病院経営者 長谷川晃史 × 二十八歳独身、銀行員 山下みのり 切ない大人の恋を描いた、ラブストーリー ※エブリスタ、ムーン、ベリーズカフェに投稿していた「偽装婚約」を大幅に加筆修正したものになります。話の内容は変わっておりません。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

誤算だらけのケイカク結婚 非情な上司はスパダリ!?

奏井れゆな
恋愛
夜ごと熱く誠実に愛されて…… 出産も昇進も諦めたくない営業課の期待の新人、碓井深津紀は、非情と噂されている上司、城藤隆州が「結婚は面倒だが子供は欲しい」と同僚と話している場面に偶然出くわし、契約結婚を持ちかける。 すると、夫となった隆州は、辛辣な口調こそ変わらないものの、深津紀が何気なく口にした願いを叶えてくれたり、無意識の悩みに 誰より先に気づいて相談の時間を作ってくれたり、まるで恋愛結婚かのように誠実に愛してくれる。その上、「深津紀は抱き甲斐がある」とほぼ毎晩熱烈に求めてきて、隆州の豹変に戸惑うばかり。 そんな予想外の愛され生活の中で子作りに不安のある深津紀だったけど…

隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません

如月 そら
恋愛
旧題:隠れドS上司はTL作家を所望する! 【書籍化】 2023/5/17 『隠れドS上司の過剰な溺愛には逆らえません』としてエタニティブックス様より書籍化❤️ たくさんの応援のお陰です❣️✨感謝です(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) 🍀WEB小説作家の小島陽菜乃はいわゆるTL作家だ。  けれど、最近はある理由から評価が低迷していた。それは未経験ゆえのリアリティのなさ。  さまざまな資料を駆使し執筆してきたものの、評価が辛いのは否定できない。 そんな時、陽菜乃は会社の倉庫で上司が同僚といたしているのを見てしまう。 「隠れて覗き見なんてしてたら、興奮しないか?」  真面目そうな上司だと思っていたのに︎!! ……でもちょっと待って。 こんなに慣れているのなら教えてもらえばいいんじゃないの!?  けれど上司の森野英は慣れているなんてもんじゃなくて……!? ※普段より、ややえちえち多めです。苦手な方は避けてくださいね。(えちえち多めなんですけど、可愛くてきゅんなえちを目指しました✨) ※くれぐれも!くれぐれもフィクションです‼️( •̀ω•́ )✧ ※感想欄がネタバレありとなっておりますので注意⚠️です。感想は大歓迎です❣️ありがとうございます(*ᴗˬᴗ)💕

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

処理中です...