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第27話 テレビ局
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3人のマンションは事務所にほど近いお高そうなマンションだった。
このマンションの3LDKの部屋に3人暮らし。
地下駐車場の一角に停車する。3人が借りている部屋の駐車場だそうだ。
携帯を鳴らしながら、瀬川さんが口を開く。
「僕はたまに泊まることもありますが……高山さんはそういうことはしないでくださいね。絶対ですよ」
「そうですよね」
三角家は絵里子さんもいたからいいが、さすがに男の子3人の家に泊まるほど世間知らずではない。
「あとそうだ。仕事が遅くなったら社用車でそのまま家に帰ってもらうこともあるので、その場合用に駐車場を見繕っておいてください。経費で落ちます」
「分かりました」
「引っ越すのが一番早いと思いますけどね」
「それまだ諦めてないんですね……」
「一挙両得じゃないですか」
「何と何が得なんだろう……」
そう言い合っている内に、トライアングルアルファの3人が降りてきた。
「おはよう、みんな。改めて紹介するよ。本日から君たちのマネージャーとして正式に就任した高山由香さん。今後は僕と高山さんで君たちのマネジメントをしていきます。よろしくね」
「よろしくお願いしまーす!」
小さめの声でそれでも元気にトライアングルアルファの3人が私に頭を下げた。
こうして私のマネージャーとしての初仕事、テレビ局に到着した。
テレビ局は『刑事藤野の初恋』を放送する局だった。
「今日のお仕事はCDの宣伝と番宣を兼ねた音楽番組向けの撮影です。コメント撮りして一曲歌って帰ってきます」
「なるほど」
「今のうちに一週間の予定をお伝えしますね」
火曜日:朝からシュンくんがドラマ撮影。二人はダンスの自主練(事務所にて)。
水曜日:シュンくんは大学、エイジくん・リクくんはスポーツバラエティーの予選参加。
木曜日:オフ。
金曜日:朝、シュンくんはドラマの番宣、生放送。午後は新曲の打ち合わせ。
土曜日:3人揃ってお昼の番組生放送。
日曜日:オフ。
シュンくん忙しいな……。
「明日のドラマ撮影は早いので僕が担当する……つもりだったんですが、ドラマの現場にお詫びと紹介もかねて高山さんにも同行してもらいます」
「はい」
「スポーツバラエティーの予選は全体は長いですが、出番自体はそう多くはならないので、のんびりいきます。リク、エイジ、着替え必須な」
「はーい!」
「はい!」
「金曜の朝は僕が担当します。高山さんは定時に事務所に出勤しておいてください。とりあえず以上です」
「なんだかんだ週休二日ですね」
「酷いときは月休1日とかにもなりうるのがこの世界ですね……」
瀬川さんは遠い目をした。
想像もつかないが、そう言うこともあるのだろう。
……あれ? これブラックでは? ブラックからのブラック転職では?
入り口で入館証を示し、テレビ局の地下に入る。
瀬川さんの指示で停車場所を決める。
「トライアングルアルファさん、おはようございます!」
スタッフさんが待ち構えていてくれた。
「おはようございます!」
皆で元気な挨拶。
「控え室ご案内します!」
控え室は畳だった。
「着替えてお待ちください! メイクさん呼んできますね!」
「はーい!」
トライアングルアルファの3人は即座に服を脱ぎ始めた。
「お、おう……」
私は目をそらすが、退室はしない。
ライブの現場で言われたことを覚えていた。
着替え中に指示を出すことはあり得るから慣れてくれ、そう言われた。
ちゃんと覚えている。
慣れねば。
瀬川さんが3人の脱ぎ捨てた服を丁寧に畳んでいく。
手伝おうと手を伸ばしたが、首を横に振られた。
「フカミン、背中のチャック上げてー」
「はいはい」
あっという間にトライアングルアルファの3人は衣装に着替え終えた。
土曜日にライブで見たのと同じ衣装だ。
「毎回この衣装ですか?」
「サードシングルの間はそうなりますね。シュンは鑑識の衣装のときもありますが、そのときはテレビ局側が用意してくれます。ライブ衣装は持参です」
「なるほど」
こう言うのってメモ取った方が良いのかな……。
メイクさんが飛び込んできて、素速く3人の顔を仕上げていく。
ライブの時より若干メイクは薄めだ。
「ライブだと観客から遠くなるのに対し、テレビはアップで撮れる、その違いですね。ガチで新人の頃は僕らでメイクしたこともありました……」
瀬川さんがちょっと遠い目をした。
マネージャー大変だな……って他人事のように思っている場合ではない。私もその内やるかもだ。
「打ち合わせお願いしまーす!」
「はーい!」
3人が廊下を移動する。ついていく。
「今回は番組のコーナー用の撮影なので司会者の方に挨拶などはありませんが、普通のバラエティーではあります」
「なるほど」
会議室での打ち合わせ、飛び交う言葉はよく分からない言葉が多くて、だけど、さすがに打ち合わせでいちいち瀬川さんに解説してもらうわけにもいかない。
私は聞きに徹した。
スタジオに入る。
テレビで見覚えのあるセットがそこには組まれていた。
まずはコメント撮り。
いつものあの挨拶から入って、3人が軽妙にトークをしていく。
瀬川さんは私の隣で真剣なまなざしでそれを見つめていた。
「ドラマ共々新曲よろしくお願いします!」
締めの言葉が揃う。3人は息ピッタリだ。
「はいオーケーです! Vチェックいきます!」
瀬川さんがモニタに走り寄る。
「時間どうでしょう?」
「ちょうどいいです」
「そつない感じ、いいですねトラアルさん」
「ありがとうございます。シュン、手!」
シュンくんはまた手を髪に伸ばしかけていた。
瀬川さんの言葉にスッと下ろした。
「じゃ、本撮り行きまーす!」
同じ事を繰り返し、オーケーが出た。
「移動お願いします!」
めまぐるしい。素直にそう思った。
このマンションの3LDKの部屋に3人暮らし。
地下駐車場の一角に停車する。3人が借りている部屋の駐車場だそうだ。
携帯を鳴らしながら、瀬川さんが口を開く。
「僕はたまに泊まることもありますが……高山さんはそういうことはしないでくださいね。絶対ですよ」
「そうですよね」
三角家は絵里子さんもいたからいいが、さすがに男の子3人の家に泊まるほど世間知らずではない。
「あとそうだ。仕事が遅くなったら社用車でそのまま家に帰ってもらうこともあるので、その場合用に駐車場を見繕っておいてください。経費で落ちます」
「分かりました」
「引っ越すのが一番早いと思いますけどね」
「それまだ諦めてないんですね……」
「一挙両得じゃないですか」
「何と何が得なんだろう……」
そう言い合っている内に、トライアングルアルファの3人が降りてきた。
「おはよう、みんな。改めて紹介するよ。本日から君たちのマネージャーとして正式に就任した高山由香さん。今後は僕と高山さんで君たちのマネジメントをしていきます。よろしくね」
「よろしくお願いしまーす!」
小さめの声でそれでも元気にトライアングルアルファの3人が私に頭を下げた。
こうして私のマネージャーとしての初仕事、テレビ局に到着した。
テレビ局は『刑事藤野の初恋』を放送する局だった。
「今日のお仕事はCDの宣伝と番宣を兼ねた音楽番組向けの撮影です。コメント撮りして一曲歌って帰ってきます」
「なるほど」
「今のうちに一週間の予定をお伝えしますね」
火曜日:朝からシュンくんがドラマ撮影。二人はダンスの自主練(事務所にて)。
水曜日:シュンくんは大学、エイジくん・リクくんはスポーツバラエティーの予選参加。
木曜日:オフ。
金曜日:朝、シュンくんはドラマの番宣、生放送。午後は新曲の打ち合わせ。
土曜日:3人揃ってお昼の番組生放送。
日曜日:オフ。
シュンくん忙しいな……。
「明日のドラマ撮影は早いので僕が担当する……つもりだったんですが、ドラマの現場にお詫びと紹介もかねて高山さんにも同行してもらいます」
「はい」
「スポーツバラエティーの予選は全体は長いですが、出番自体はそう多くはならないので、のんびりいきます。リク、エイジ、着替え必須な」
「はーい!」
「はい!」
「金曜の朝は僕が担当します。高山さんは定時に事務所に出勤しておいてください。とりあえず以上です」
「なんだかんだ週休二日ですね」
「酷いときは月休1日とかにもなりうるのがこの世界ですね……」
瀬川さんは遠い目をした。
想像もつかないが、そう言うこともあるのだろう。
……あれ? これブラックでは? ブラックからのブラック転職では?
入り口で入館証を示し、テレビ局の地下に入る。
瀬川さんの指示で停車場所を決める。
「トライアングルアルファさん、おはようございます!」
スタッフさんが待ち構えていてくれた。
「おはようございます!」
皆で元気な挨拶。
「控え室ご案内します!」
控え室は畳だった。
「着替えてお待ちください! メイクさん呼んできますね!」
「はーい!」
トライアングルアルファの3人は即座に服を脱ぎ始めた。
「お、おう……」
私は目をそらすが、退室はしない。
ライブの現場で言われたことを覚えていた。
着替え中に指示を出すことはあり得るから慣れてくれ、そう言われた。
ちゃんと覚えている。
慣れねば。
瀬川さんが3人の脱ぎ捨てた服を丁寧に畳んでいく。
手伝おうと手を伸ばしたが、首を横に振られた。
「フカミン、背中のチャック上げてー」
「はいはい」
あっという間にトライアングルアルファの3人は衣装に着替え終えた。
土曜日にライブで見たのと同じ衣装だ。
「毎回この衣装ですか?」
「サードシングルの間はそうなりますね。シュンは鑑識の衣装のときもありますが、そのときはテレビ局側が用意してくれます。ライブ衣装は持参です」
「なるほど」
こう言うのってメモ取った方が良いのかな……。
メイクさんが飛び込んできて、素速く3人の顔を仕上げていく。
ライブの時より若干メイクは薄めだ。
「ライブだと観客から遠くなるのに対し、テレビはアップで撮れる、その違いですね。ガチで新人の頃は僕らでメイクしたこともありました……」
瀬川さんがちょっと遠い目をした。
マネージャー大変だな……って他人事のように思っている場合ではない。私もその内やるかもだ。
「打ち合わせお願いしまーす!」
「はーい!」
3人が廊下を移動する。ついていく。
「今回は番組のコーナー用の撮影なので司会者の方に挨拶などはありませんが、普通のバラエティーではあります」
「なるほど」
会議室での打ち合わせ、飛び交う言葉はよく分からない言葉が多くて、だけど、さすがに打ち合わせでいちいち瀬川さんに解説してもらうわけにもいかない。
私は聞きに徹した。
スタジオに入る。
テレビで見覚えのあるセットがそこには組まれていた。
まずはコメント撮り。
いつものあの挨拶から入って、3人が軽妙にトークをしていく。
瀬川さんは私の隣で真剣なまなざしでそれを見つめていた。
「ドラマ共々新曲よろしくお願いします!」
締めの言葉が揃う。3人は息ピッタリだ。
「はいオーケーです! Vチェックいきます!」
瀬川さんがモニタに走り寄る。
「時間どうでしょう?」
「ちょうどいいです」
「そつない感じ、いいですねトラアルさん」
「ありがとうございます。シュン、手!」
シュンくんはまた手を髪に伸ばしかけていた。
瀬川さんの言葉にスッと下ろした。
「じゃ、本撮り行きまーす!」
同じ事を繰り返し、オーケーが出た。
「移動お願いします!」
めまぐるしい。素直にそう思った。
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