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第15話 お肉!

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 インナーバルコニーとは屋根付バルコニーのことらしかった。
 半分外で、半分中、換気が出来て雨風もしのげる。
 そんな一挙両得な場所で、三角社長が網でお肉を焼いていた。

 トライアングルアルファの3人はそれをジッと待つ。

 その光景を眺めながら、瀬川さんが口を開く。

「絵里子さん、いつものことですが……」
「お酒を3人には飲ませないように、よね。了解了解。あ、瀬川くんも泊まっていくでしょう? 飲むわよね?」
「あー……」

 瀬川さんは困ったように私を見た。
 普段なら瀬川さんはお酒を飲んで社長のお家にお泊まりするようだ。
 しかし今日は私が居る。
 瀬川さんが迷う。

「あ、私、タクシーでも呼びますよ、大丈夫です」

 いつものお酒を邪魔するのも心苦しい。そう思うと私の口は自然に開いていた。

「大丈夫ではありません」

 即座に瀬川さんはそう言った。
 顔がちょっと厳しい。

「タクシーでも何があるか分かったものではありませんから。帰るのなら送ります」

 真剣に私を心配してくれているようだった。

「ああ、由香ちゃんの分の客室ならあるわよ。あ、それともご実家暮らし? 門限とかあるかしら?」
「あ、いえ、1人暮らしです。そこは大丈夫です」
「よかった。じゃあ、由香ちゃんも泊まっていってちょうだい。ね、瀬川くん、飲みましょう。お祝いなんだもの」

 絵里子さんが嬉しそうに笑う。
 泊めてもらうのもなんだか申し訳ないのだが、絵里子さんの嬉しそうな顔を見ていると、遠慮するのも失礼な気がする。

「本当に大丈夫ですか? 高山さん」
「あ、はい、あの、泊まるのが絵里子さんたちの迷惑でないのなら」
「迷惑なんてことないわ! すっごく嬉しい!」

 絵里子さんはそう言うと、インナーバルコニーに一歩踏み出した。

「じゃあ、ふたりのグラス持ってくるわね。ほら、みんな、瀬川くんと由香ちゃん到着したわよ!」

 絵里子さんの言葉にトライアングルアルファの3人と三角社長がこちらを向く。

「あ、フカミン、由香ちゃん、おっつー!」

 相変わらずチョコ菓子『もやしの山』を食べながら、リクくんが手を振った。
 焼き肉前にチョコ菓子とは若さとは恐ろしい。

「おつかれさま」
「おつかれさまです!」

 シュンくんとエイジくんも口々にそう言って頭を下げてきた。

「お、おつかれさまです」

 私も頭を下げる。

「おー、瀬川くん、渋滞に捕まったのかと思ったよ」
「ちょっとハマりましたねえ」

 そう言って瀬川さんはスーツの上着を脱いで、バルコニーにおいてある椅子にかけた。
 そして腕まくり、意外と筋肉のついている上腕が露わになる。
 瀬川さんは三角社長の隣に行って、トングを手に取った。

「あ、私も何かお手伝い……」
「いいのいいの。高山くんはまだお客さんなんだから! 今日は座ってお肉をお食べなさい!」

 三角社長はそう言って、お肉をひっくり返した。

「お肉ー社長お肉早くー」
「ほらリク、お肉だ!」
「いやっほー!」

 三角社長がお肉を中心にトライアングルアルファの3人に網で焼いた食材を配り出す。
 トライアングルアルファの3人は皿を突き出して待てをしている。
 餌を与えられるひな鳥みたいでちょっと可愛かった。

 瀬川さんが新しく具材を網に載せながら、口に片手を当てて叫ぶ。

「高山さん! 食べられないものとかあります?」
「ホルモンが苦手です……!」
「分かりました!」

 トライアングルアルファの3人のお皿がこれ以上は載らないと言うくらいの大盛りになる。
 続いて三角社長が4つのお皿に常識的な量を盛り付ける。

 絵里子さんがインナーバルコニーにグラスとワインを持って現れた。

「由香ちゃんはワイン、飲める? ジュースも色々あるし、だいたいのお酒もそろってるから飲みたいもの何でも言って」
「ワイン飲めます。いただきます」
「分かったわ」

 絵里子さんが手際よくワインを注ぐ。
 トライアングルアルファの3人は好きなジュースを勝手に用意している。
 瀬川さんが私に、三角社長が絵里子さんにお皿を持ってきてくれる。

「みんな準備できたな! それじゃあ今日のライブ成功を祝して……」

 三角社長がワイングラスを持ち上げた。

「かんぱーい!」

 声が揃う。グラスの重なる音がする。
 私はワインを一口含んだ。お高い味がした。
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