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第4話 正体

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「腰、上下に動かしてみて?」

 その言葉にどうして従ってしまうのだろう。
 私はおとなしく腰を上に上げた。
 そして下げる。

 私のナカをペニスが擦れる。
 私のナカはそれに悦ぶように蜜を垂らす。

 私は思わずあらぬ方向へと目をやる。

「ああ、ほら、ちゃんと鏡見てください」

 後ろから優しく顔に手を添えられて、私は鏡を見る。
 顔を赤らめ、全裸に近い状態で、男の人の上で上下運動を繰り返している。

「うう……」

 ぎゅっと膣が締まった。恥ずかしくて締まるなんてとんだ変態じゃないか。
 私の反応に、メガネさんは微笑んだ。

「ああ、いいです……ちょっとこれはもう……出そうですね……一旦、出してもいいですか?」
「は、はい……」

 出すと言ってもゴムを付けているのだ。大丈夫だ。

 そう思っていた私の腰を、メガネさんが鋭く突き上げた。

「きゃあ……」

 悲鳴と嬌声が上がる。メガネさんが激しく私を揺らす。

「あ……あっ!」

 鏡を見れば、髪が、顔が、胸が、腹が、体が、揺さぶられていて、淫らだった。

「ふう……ふう……」

 メガネさんの息づかいが耳元で聞こえる。くすぐったい。
 メガネさんは私の腰を掴んで、引き寄せながら自分の腰を突き上げている。

「んっ……出る……!」

 どくん、と私のナカでそれは脈打った。
 ゴム越しにも伝わる熱い感触。
 緩やかに剛直が解けていくペニス。

「はあ……はあ……」

 私は前に倒れ込んだ。

 後ろで音がする。鏡越しに覗くと、メガネさんがゴムを外し、捨てていた。
 そしてすぐに新しいゴムを付ける。

 その行為に、膣がまた締まる。期待をするように。

 メガネさんは前に倒れ込んだ私の体を抱きしめた。

 右手を胸に、左手を下腹部へ、ぎゅっと身を寄せられて、そして、後ろからまた挿入される。

「うっ……あっ……はあ……」

 奥へと入っていくにつれて、メガネさんは私の腹の下の辺りをぐいぐいと手の平で押した。
 中と外から圧迫されるその感触に、私の頭は真っ白になっていく。

「あ……あー……」
「入った」

 そういうと、メガネさんは胸を抑えていた手に力を込めた。
 私の上体は起き上がらされる。

 鏡に膝立ちでメガネさんとつながる私が写っている。

「んん……も、無理……」
「大丈夫」

 今にも力が抜けそうな私に、優しくメガネさんは囁いた。
 何が大丈夫なものか。そう抗議する元気もない。

 ぎゅっと力が籠もる。
 押しつぶされるように抱きしめられる。

「動きますね。あなたも動いていいんですよ?」

 言うが早いか、メガネさんは体を前後に動かし始めた。
 私の体がガクガクと震えるのを抱き寄せる。
 腕の力が強い。押しつぶされそう。

「ん……やっ……! 奥! 奥来るっ……!」
「行きましょう。イっちゃいましょう」

 そう言って彼は私の頬に口づけた。

 意識が飛び飛びになる。
 下半身が熱い。
 私は後ろを振り向く。
 メガネさんの顔が近い。
 唇が近い。
 口と口でキスをして、メガネさんのペニスが脈打って、私のナカでゴム越しに蠢いて、私は意識を手放した。

 次に目を覚ました時には、メガネさんは私をベッドに横たえていた。
 上から覆い被さるように抱きつかれていて、私のナカには当然のようにメガネさんのペニスが入っている。

「…………何回、するの?」
「夜が、明けるまで」

 その声に、私は諦めるように、メガネさんの背中に手を回して、彼を受け入れた。



 朝日がかすかに差し込んできて、私は目を覚ました。
 起き上がろうとして、痛みで諦める。体中が痛い。特に下半身。
 あれから何度もイかされて、抱きしめられて、キスをされた。
 優しく、なんてとんだ嘘をつかれたものだ。
 でも不思議だ。嫌だったわけじゃない。

「おはようございます」

 爽やかな笑顔にメガネをかけたメガネさんが声をかけてきた。

 私は慌ててベッドのシーツを体に引っ張り寄せる。
 私は行為の後に、寝てしまって全裸だった。

 メガネさんはバスローブで、窓のそばの椅子に腰掛け、新聞を読んでいる。
 こういうホテルでも新聞って頼めるんだ……?

「ああ、これは昨日のスポーツ紙です。仕事の一環でして」

 仕事。昨日も言っていたか。
 カメラを扱い、スポーツ紙を読むのが仕事。
 メガネさんは記者か何かだろうか?

「改めまして、わたくしこういうものです」

 急にメガネさんは事務的な口調になった。
 バスローブ姿で名刺を差し出してくる姿がおかしかったが、私も全裸だ。
 どう考えても名刺が出てくる場面じゃない。

 受け取った名刺にはこんな文字が踊っていた。

『アイドルグループ『トライアングルアルファ』担当マネージャー 瀬川せがわ深海ふかみ
 その下には会社名と電話番号など連絡先。

「アイドルグループ……トライアングルアルファ……」

 聞いたことが、ある。
 最近話題の3人組男子ユニット。
 ドラマやバラエティーにも引っ張りだこ。

 いや、待て、アイドル?

「昨夜は弊社・・の社長が突然失礼をしました。驚かれたでしょう? しかしあの人の言うことももっともなのです。よかったら、私達といっしょに働きませんか?」
「……ええ……?」

 私はベッドの上で間抜けな声を上げた。
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