公爵令嬢は破棄したい!

abang

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幸せなアルベーリアのその後

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テオドールはその後見事アルベーリアを治め、善良王と名を馳せた。その立場上世継ぎの問題が心配されたが、孤高の王として独身を貫き王位継承権は王族の血を引くセシールの子が一位となった。



北の辺境伯であるクロヴィスは一途に妻を愛し続け、その様子はまさに溺愛と言っても過言では無かった。

セシールとクロヴィスはその相性の良さから隠しきれない圧倒的な魔力を持った北の辺境伯は月の女神に愛された青年だと、すぐに噂となったがそれもテオドールの政権を確固とする勢力の一つとなった。


紅の魔女は魔女の末裔には珍しく、テオドールへの忠誠を貫きまた、夫であるリシュも家督を継ぎ彼もまた宰相となりテオドールを支えた。


彼女達の仲もまた噂となる程仲睦まじく、商売としてマチルダの兄がメーベルの魔塔の一部を解放すると「恋が叶う」と訪ねる客が絶えなかった。



ダンテはその生涯を捧げると言う言葉通り、命の限りセシールだけに忠誠を尽くし、その最期にはセシールへの愛を何度も口にしたと言う。


彼の剣にはその想いが魔力となり込められ、ノーフォード家の女児に受け継がれる守護の剣として家宝になった。



そして同じくリアムもまた彼女以外を女性として受け入れる事はなく、美しいまま記憶に残りたいと、朽ちる姿を見られない為に最期の瞬間には愛していると強引にセシールに口付け、その魔力を彼女に移す禁呪を使い消滅した。



エイダやエイミー、アン…彼女の部下達はその強さから殉職することなく寿命まで命を全うし生涯セシールの部下として、友としてセシールを心身共に支えたという。



ノーフォードやランスロット、メーベル、そして王家の寿命は魔力の高さと精神の強さ故に長く同じだけその統制は続き、マケールやディアーナ、各両親もその生涯を幸せに全うした。


セシールはノーフォードの特色上、王家の闇を背負う仕事が多く王妃として表舞台に立つのとは違いノーフォード公爵として王家の立場を守った。

ディアーナに似た儚げな美しさからは考えもつかない、かつて冷徹だと言われたマケールの生き写しだと謳われる程に完璧に公爵の仕事をこなした。




彼らは皆、生涯を終えるまでその強い絆で支え合いながら生きたが、


国王テオドールが孤高の王である理由は他国にも知れ渡っていたし、その相手が月の女神である辺境伯夫人である事はテオドールを知っている者であれば皆知っていた。


後にノーフォードの漆黒の騎士と呼ばれ、その容姿と柔らかい雰囲気からも人気の高かったダンテ。

皆が知るセシールの側近として有名人で彼女意外の女性には冷酷な程の無関心さを見せるがその見た目の美しさ故に惹かれ、憧れる者が多かったリアム。

そして、かつての大国セルドーラの美しき暴君が月の女神に夢中になり、その身を滅ぼしたこと。


夫であり、美丈夫。その鍛えられた身体と膨大な魔力で衰えることを知らずセシールと同じ若々しい姿と強さ、正統さ、国王テオドールの親友としても有名であったクロヴィス。


万人へその優しさを分け与える半面、彼の愛は生涯セシールだけに注がれ、孤高の王として君臨し続け時に、彼女の夫を不安にする程に彼女の理解者であった国王テオドール。


それに……エラサで戦う彼女の背中に惚れた王宮の騎士達、幼い頃の恩人であり友である故周りには盲目的に見えた、ノーフォードの彼女達、各家の者たちからの溺愛ぶり……


何より孤高の王、テオドールがセシールが産んだ長男の王位継承権を指名したことにより、時代を経てその歴史書には


彼女は男女問わずその美貌と強さで彼らを生涯虜にし、時には一国をも滅ぼした

「傾国の美女」であり「傾国の悪女」として語り継がれることとなったのであった。




それから三百年を経た……




「ロゼリア・グレース・ノーフォード王女殿下の入場!」



かつて傾国の悪女と言われた女神は私の祖先だ。


歴史書に書かれた話に、ロマンスとして憧れる者たちは多かったが、様々な憶測を勝手にして国を乗っ取った悪女だと忌み嫌う者も少なくは無い。


シルバーブルーの髪色と金色の瞳の儚げで美しい少女がまた、新しいアルベーリアの物語へと足を踏み入れた…


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