公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢は婚約したい2

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元の穏やかなアルベーリアを取り戻し、公務に追われながらも、ゆったりとした時間を過ごした、長い休暇もあと少しとなり本日はノーフォード家とランスロット家の顔合わせとなった。



「すごく久しぶりね!とても楽しみだわ!」


姉妹かと見紛えるほど若く美しい母が誰よりも楽しそうにしている姿を何か堪えるように見ている父はきっと、母が可愛くて仕方がないのだろう。


(クロが居るから、格好をつけているのね…)


「申し訳ありません。遠方となる為に気を使って頂いて…」


「ん?…あぁ、良い。転移で来て帰れば楽だしな。」


本来はきちんとそれなりの家臣を連れ、訪問するのだが…お互いに気の知れた中であり、忙しい事もお互い承知していた。


父同士の話で、転移で少人数こちらを訪ねて、食事をしてゆるりと過ごし朝にまた転移で帰ることになったのだ。




ーーフォン

「どうやら、来たようだな。」


転移空間から出てきた男女と数名の使用人を見て母は目を輝かせてから完璧なカーテシーをした。

マケールがクロヴィスの父、エドヴィンに挨拶をすると、次々に久しぶりの再会を喜んだ。

「良くきてくれたな、エド、そしてブリアナ夫人。」


クロと同じ濃紺のさらりとした髪は短く切られ、ウェットにセットされており、瞳は同じく濃紺である男性はクロヴィスの父である。


濃紺というよりは青よりの長い艶やかな真っ直ぐな髪を持つ、つり目がちな目に濃い青の瞳を持つ女性はクロヴィスの母である。



その二人の容姿から見ても、クロヴィスの金色の瞳は特異であることが分かる。

父や母達が楽しげに話しているのを見ていると…




「セシール、大きくなったなぁ~!」



「おじ様、おば様、ご機嫌よう!ようこそおいで下さいました。」



一見スマートで隙のない見た目のエドおじさまが朗らかに声をかけてきた。



「もう、こんな姿は見られないと思っていたよ。」

「え?」



いつの間にか手を繋いでいたクロとわたくしを見て嬉しそうに目を細めた二人に、カァと顔が急に熱くなり急いで手を離した。




「あら、恥ずかしがらなくってもいいのよ?昔はずっと離さなくて困ったくらいですもの、ふふふっ」



「そうねぇ、私も二人には手をやいたわぁ~、気づいたら手を繋いでどこかにすぐに行ってしまうのよ…。」



頬に手を当てて困った様に言った母に父の瞳が一瞬だけ恋色に揺れたがすぐに元に戻り。何事もない様に皆の話を聞いていた。



「…マケールお前、相変わらずだな。」クスクス

「なんだ?」

「ディアーナ夫人の事を好きで堪らないって顔してる、…ふっ」


「笑うな。お前とてそう変わらんだろ。」


「まぁな、」



そう言って笑ったエドおじ様はどちらかと言うと妖艶な雰囲気のおば様をチラリと見てから。急に真剣な顔になり言った。



「もう、調べているかもしれんが…気にはならんか?」



チラリと、ディアーナとブリアナに構われて顔を赤くし不貞腐れているクロヴィスを見てエドおじ様が言った。


「おじ様、それはクロの瞳の事ですか?」


「ああ、それもある。」


「エド、セシール。食事をしながらゆっくり聞こう。」


マケールの言葉で出てきた執事のスティーヴが現れ、案内した。



「スティーヴ、久しぶりだな!」


エドおじ様が声をかけると、スティーヴはいつもの表示を崩すことなく、「お久しぶりです」と言った。


「なんだよ、畏まって…まぁあとでゆっくり飲もう!」


不満そうに、言った後にブリアナおば様に手の甲をつねられて、表情を元に戻して歩いたていた。


「…」プルプル

「セシール、笑ってもいいぞ。」


小声で言ったクロヴィスの手の甲を今度はセシールがつねって、皆の後に続いて歩いた。


濃紺に金を貴重とした装飾に王家の紫がちらほらと見える。
大きな食卓で皆が席に着くと、父がが咳払いを一つして、エドおじ様へ目配せをした。


「そうだな、さてクロヴィス。お前達の話はちゃんと分かっているし、ウチとしてセシールが相手ならば何も文句は言うことがあるまい。そうだろ、ブリアナ?」


「ええ、とーっても嬉しいわ!セシールがお嫁さんだなんて、大歓迎に決まってるわ。」


「では、これついてはこちら側からは特に何も言うことはありません。結納について等は此方は出し惜しみせんので、じっくりと話し合って行こう。」


「エド、えらく気が早いな。」

「あら、貴方ったらセシールを取られるのが嫌なのねぇ、ふふ」



すかさず言った父に母が可笑しそうに笑うと、皆少し笑って、エドおじ様が黙ったのをきっかけに、皆話を聞く体勢を取った。


「まず、クロヴィスの瞳だが。これはランスロット家に伝わる神話のような物でまさか信じては居なかったが…今も魔力の成長が留まる様子が無いのを知って、確信した。」



「ほお、女神に愛された青年の話か…。」


とある昔、月の女神はアルベーリアの北部、かつてよりランスロット領であるリーセンで一人の青年に恋をしたという。



月の隠れる夜に、嫉妬した悪い魔女によってその純潔の危機となった女神はたまたま通りかかったランスロット家の息子であった青年の魔法によって助けられたという。


そして月の女神は彼にその純潔を捧げ、地上に降りられない日も彼のために祈りを捧げたという。


すると、彼の瞳は月の女神の恩恵を受けた証に金色に輝き、その魔力は膨大に膨らんだという。


それを知った人間が月の女神の恩恵を狙った為、地上に降りてくる事は無くなり、彼と女神は子を持つ事はなかったが、時たま金色の瞳を持つ男児が産まれると言う。


女神の恩恵による、膨大な魔力とその金色の瞳が証だという。



「まるで….クロのようだわ。金色の瞳に膨大な魔力…」


「ああ、ランスロットの者で、いやリーセンの者で知らない者はいない話だ。だが直ぐにこの話はランスロットの歴史にないただの神話だと公表することになった。」



「なぜ…?」



クロヴィス自身も知らなかったのか、眼を軽く見開き、エドおじ様に尋ねた。



「力の偏りを恐れた他国との争いを避ける為、自由の地リーセンを守るために、国王には許しを頂いている。」




「だが、既にテオとセシールが居る上、ノーフォードには私やディアーナも居る。恐れるなど今更…………あぁ、」



何かに気付いたようにマケールがクロヴィスを見て、セシールを見ると、セシールはハッとした顔をして頬を染めた。



「まさか、父上は俺の為に…?」



「あぁ。そうなったお前のセシールへの恋は叶う事がないだろうと…」



ランスロットは表向きは中立派である為、どちらに転ぶか分からない物が力を得る事の脅威を貴族達が許すとは思え無かった。
きっと争いの火種となったはずだ。



元々幼いとはいえ殆ど許婚のようなもの、お前との可能性を排除しようも王宮派の貴族が黙っていないだろう。


そうなれば、争いを納める為に、王宮もテオドールとセシールとの結婚を早めざるを得なくなる。


「お前の気持ちは知っていた。国の均衡を保つという意味でも、すでに殿下という婚約者がいたので、せめてお前の気持ちが落ち着くまでは、その可能性を無くしてやりたくなかった。」



「リーセンの者達、皆で仕掛けたことだったわ。貴方の気持ちの整理がつくまでは自由に想わせてやりたいと。」




ブリアナおば様が眉尻を下げて微笑むと、クロヴィスは立ち上がって頭を下げた。



「俺の、我儘で皆を振り回してしまった。申し訳ない………それと、ありがとう。おかげでセシールは今隣に居てくれている。」



「仕事も勉学も稽古も、あんなに必死頑張って時間を作ってはセシールを追いかけ回していたんだ、応援せざるを得ないよ…」


笑うエドおじ様に、ゔっと言葉を詰まらせ、此方をチラリと見る、

「そうだったの…」
 

と嬉しそうにしながら顔を真っ赤にするセシールに、クロヴィスまで赤くなり、そんな二人をみて微笑ましげに皆で笑った。



「いつも娘の側にいてくれてありがとう。」



ディアーナはまるで本物の女神のように微笑んで、クロヴィスに言った。

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