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伯爵令嬢に感謝したい
しおりを挟むとある伯爵令嬢レミーが王宮に保護された。
母と共に暴行に遭っている所をたまたま王宮の騎士が発見し、夫人の顔に見覚えがあったのでたずねると、デボラ伯爵家だというので、対応に困り王宮へ連れ帰った。
「うむ、伯爵と末娘は…当たり前だか本来なら一家もろ共許される事ではない。デボラ家は爵位の返還を言い渡しておる。」
「国王、お願い致します。元平民で身寄りのない母とふたり、何も知らされず突然の事に命からがら逃げ延びて参りました。どうか、命だけはお助け下さい。」
「あのっ…私は!何も知らなかったの!!夫は、夫はどうなったのでしょう…!」
礼儀正しく頭を垂れたレミーに反し、冷静さを失い叫び続ける夫人はとても見て居られなかった。
エミリーによく似た容姿のレミーであったが、その商才は少しだが王宮にも聞こえてきていた。
「母親に関しては、その態度や元より耳に入っている教育方針などを考えると責任を逃れる事は難しく。牢での生活となるだろう。」
国王は厳格に言ったが、同じ年頃の子を持つ彼は、目の前の評価も良く、商才に長けた、未来ある芽を今つむには可哀想だと同情し、きめかねていた。
「わたしだけ!?レミー、アンタ何とか言いなさい!!わたしのおかげで見つけて貰えたのよ!!!」
母親がレミーを睨みつけると、より震えを大きくしごめんなさいと何度も謝った。
「発言を許可されていないぞ!」
国王に仕える者が母親の喉元に剣を向けるとガクガクと震え、黙る。
「あの…発言をよろしいでしょうか…っ?」
レミーがおずおずと手を挙げて国王に言うと、頷き、国王は続きを促した。
「ありがとうございます。…私は父の居ない所では、母と妹に虐待をされてきました。私の純潔を野菜で奪われ、そのまま服も着させてもらえず、野菜を秘部に詰めたまま床を雑巾で拭き掃除しました。」
皆は一気にざわついた。普通は恥じて告白などできる内容ではないが、レミーは感情を失ったように告白していた。
王妃は読み取れぬ表情で冷たい瞳でレミーをただ眺めていたが、テオドールも表情には出さないものの衝撃を受けていた。
レミーは意を決したように徐に衣服を脱ぎ、鞭の痕がたくさん残っている身体を皆に見せた。
美しく白い肌に、未だ赤く鞭打たれた痕があり、尻は赤くアザになっていた。
「母は妹や夫人仲間達の前で私に洋服を与えず、人前で尻をぶったり、妹には、皆の前で慰みをするよう強要され、逆らうと鞭で打たれました。」
その告白は、部屋にいる者全員の心を動かし、母親に温情の処置を与えてはならんと皆が口々にいい、レミーに同情の声が集まっていた。
(私は、こんな所で終わる女じゃ無いわ。辛かったけれど私を虐めていた妹達に今は感謝するべきね、)
レミーは決してエミリーのように見目麗しい高位貴族を狙って愚行を起こすような者ではなかったが、その腹には商人として成功したいと野望があり、貴族として生きたいと決めていた。
(馬鹿な妹のせいで全てを失ってたまるもんですか!)
レミーは服を着ることも後回しに、傷だらけの身体で額を床につけ、はっきりと願った。
「何でも致します。お願いです。下働きでもいいので私に仕事を与え、ここに置いてください。」
その後、王宮で、メイドとして受け入れられたレミーであったがたったニ週間足らずの間で、その評価は国王にまで届くほど良かった。
やはりエミリーと同じ母親に育てられた娘。
(爵位を貰うには、大きい手柄がいるし今の立場では難しいわ。どんな手を使っても良い評判を固めてより良い相手と結婚して、商いをする支援を受けないと!)
彼女は皆が評価するレミーとは少しかけ離れていた…。
「お呼びでしょうか、陛下。」
「メイドと言っても、身内による罪で没落した身、お前にとっては不慮の事故同然、だが特別扱いしては示しがつかんのだ。」
「ええ。理解しております。」
「だが、評判は聞いておる。たまには息抜きも必要であろう。」
「勿体なきお言葉です。」
レミーはしおらしく頭を垂れながら言う!
「ほう、今度王宮でこの間の戦いを労るための社交パーティを開く。準備を手伝い、当日はドレスを新調しパーティに出るがよい。」
「ありがとうございます!!!」
(やったわ!クソ面倒くさい雑用なんて頑張ってよかった!)
「困った事があれば、テオドールかセシールを頼るといい。セシールには話しておこう。」
「御心遣い感謝致します!」
(婚約を解消したのよね?チャンスあるかしら…)
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