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騎士団長は情けない
しおりを挟む王宮の門の前で膝付き頭を下げたギデオンに、鎖に繋がれたエミリーは恥ずかしげもなく脚を広げてギデオンをゲシゲシと蹴っていた。
「離しなさいよ!嫌よ!捕まってたまるもんですか!誰か!
見てないで服を寄越しな、見てんじゃねーよ!!!!」
皆が目を疑った、元々平民寄りではあったが、みるからに下品な所作と言葉遣い、そして恥じらう様子も無かったことだ。
そして、ギデオンはすぐに謁見の間に通され、経緯を説明することとなった。
ギデオンは罪を認め。自分を恥じていたが、彼の父親であり騎士団長のドレッグが現れた時には涙を流し。崩れ落ちていた。
一方エミリーは牢へ行く道のりを衛兵2人に連れられていた。
「ねぇっ!ねえってば!貴方達取引きしない?」
引かれる鎖をに前のめりになりながら焦って2人に追いつき、
脚を大きく開いたが、、
「何を言っているんだ?」
「私には妻がいる」
二人の衛兵は全く興味を示さず、エミリーを牢まで引き摺っていった、
エミリーは自信を失っていた。
(ああもうこんな雑魚どもにすら見向きもされない、)
ーー謁見の間
「ギデオン、おぬし…大馬鹿者めが!!国王、儂もこの愚弟と共に処分して下さい!!!!」
ドレッグは額を床につけ嘆願した。
「ならん。お前は騎士団長であろう!」
「このような事態を招き、このまま団長として居るわけにはいきません!!」
「ギデオンの処分は追って決める。このまま待機するように!ギデオンは牢に!!」
ギデオンは牢に入れられ、エミリーが捕まった事すぐにアルベーリアに広がった。
そして集められたのは少ない家門の者達であった。
着る物を与える配慮もないまま、皆が見守る中、床より何段か高い処刑場のような場所で剣を首にあてられ、涙と鼻水を流しながらガクガクと震えて、太ももには生温かい液体が伝う。
隣にいるエレメントは目を閉じて、ただ判決を待っていた。
ギデオンについては、魅了により巻き添えになった事と、直接的な罪を犯していない事を配慮し、無罪となったが、本人の希望もあり、神官の見習いとして南の国境近くの教会へ引き取られることとなった。
「して、デボラ嬢。罪状は分かっているな?」
「そ、そんな!私はこのエレメント様に騙されただけで、何もしていません!!!!!」
「うむ、身内の犯行に気づくことすら出来なかった…私にも責任があるということか…」
国王とエレメントは血を分けた正真正銘の兄弟であり、中が悪い訳では無かったし、テオドールも懐いていた。
「エレメント、私がどんな王であったらお前と今も笑いあえていたのか…そればかりを思ってしまう。…だが、私はこのアルベーリアの国王だ。」
「エレメント・シズリー・アルベーリアを絞首刑とする。」
あたりがざわつき、王妃は自分の手を国王の手にそっと重ねた。
そして、大丈夫だというように頷いた国王は、エミリーに向かって提案をした。
「罪人であろうと弟だ、デボラ嬢が愚弟にされたことは聞いている。」
エミリーは震えが止まり、シメたという顔をした。
「そ…そうよ!その男は私を辱めたわ!!」
「…うむ。では過酷で危険もあるがデボラ嬢の好きな仕事をひとつ用意する。そこで生涯を働き終えるか」
「もしくはエレメントと同じ絞首刑だ。」
「働くわ!死ぬよりマシだものっ、お願いします!!」
(生きてりゃチャンスあるわ!)
「では、このアルベーリア監獄の精神棟にて、奉仕するように。衣食住は補償されるが、あくまでお主も刑務である。ワガママは通用せん。奴らにも慰みが要るであろう。」
王妃は扇で顔を半分隠して、これ以上目に入れたくないと言うように目を閉じたが、口元は笑っていた。
これを提案したのは王妃だったからである。
アルベーリア監獄の精神棟は更生の見込みのないサイコパスや、精神を殺人などによって病んだ者、元々精神を病んでおり、改善の余地がないものを、他の囚人と収監すると他の者に危害を加えてしまう可能性のある為、別の棟で治療し収監している場所である。
名目上、カウンセリングとして見目麗しいエミリーを送り、彼らの心を癒すと言う目的であったが…
本当の所は、そんなにキレイ事ですむような話のできる者達ではなかった…。
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