公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢は謝りたい

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セシールは苦しそうにもぞもぞと動いた。


「ぅん…」


当番の時間で寝室の入り口に待機していたダンテはドキリと身を跳ねさせ、セシールに駆け寄った。



「…セシール様?」

苦しそうに手を伸ばしたセシールの手を、少し悩んで握った。



「大丈夫です、セシール様の言う通り、全て終わりましたよ。」



聞こえたのか、それとも偶然か、セシールは安心したようにすぅっと息をして微笑んだ。

そしてそのままダンテは手を握り祈った。

(セシール様が元のように元気な姿で目を覚ましてくれますように。)

しばらくするとダンテの手を弱い力で握り返し、ゆっくりと目を開けるセシールのアメジストの瞳とぶつかった。


「ダンテ…、?…ありがとう、えっと…」


ダンテは思わず彼女の手を両手て包み、手の甲にそっと口付けたまま、潤んだ目で、良かったと安心したように笑った。


「お嬢様は3日ほど眠っておりました。」

ダンテは愛おしそうに、彼女の手を離さず親指で撫でながら話すのでセシールは困惑した。セシールは男性との触れ合いになれておらず、思わず顔を赤くした。

彼は無意識のうちにセシールへの気持ちを行動に示してしまっていたのだろう、


「あ、あのダンテ。手がくすぐったいのだけれど、」



「あっ!セシール様…申し訳ありません。つい…」

「ダンテはお嬢様が目を覚まされて嬉しかったのですよ、」


ニコリと、笑いながらリアムが部屋に入ってきた。


ダンテを疑わしげに見てから、セシールが笑っているのを見て急に吹き出て来たかのような大量の涙を流して、ベッドの横に膝をついてベッドに上体を預けて泣き出したのだ。


「お"嬢ざまっ…信じでおりましたっ」



「リアム…ごめんなさい。

わたくしやお父様は普通とは少し違って、魔力を失って死んでしまうような事はないわ、だから心配しないで。

ダンテも心配かけたわね、」


リアムの頭撫でながら、子供に戻ったようねと笑って、お医者様をお願いできるかと聞いた。


主治医の診察では身体への異常はみられず、すぐに動いてもよいということであったが、マケールが今日1日はベッドで大人しくしているようにと命じ、目覚めたセシールは休暇となった。


「お父様…エラサは?」

「大丈夫だ、アルベーリア中がセシールに救われたよ。」


「多くの命を…奪ってしまったわ。」

「だか、戦わなければ、私達や大切な人達が理不尽な侵略によって殺されていた。

我々は国と国との戦争によって、こうやって子供達や兵たちの命を巻き添えにしてきた。

私や国王はそんな世界を変え、子供達や国民の命を尊み尊重する国を作ろうと、平和なアルベーリアを守っていたつもりだった。」

悔しげに俯いたマケールはセシールを抱きしめ、苦しげに



「すまない、セシール」と言った。


「お父様…。#わたくしはお父様達の志を、理解していたつもりです。ですが、このノーフォードに生まれた時から守る側の者である覚悟はしています。」


「セシール、……よくやったな。」


ぐっと言葉を呑み込んでただセシールを褒めた。


「弱音を吐いてごめんなさい、自分の目の前の人達を守ることに必死ではなから相手の兵のことなど、考えない手段をとったの。あの場では皆が生きる事に必死だった。ただそれが情けなかっただけ。」


物語の女神は、聖なる光ひとつで皆の心を争いから安らぎに変えてしまうというのにね、

と、眉を下げたいつも大人びているセシールは今は年相応の娘に見えた。


「もう寝なさい。ディアーナが明日は一緒にお茶をするんだと意気込んでいたぞ。」

「まだお昼よ、そんなに寝れないわ」クスクス


一度だけ心配そうに振り返ったマケールを見送って、明日帰ってくると聞いたエラサに残った者たちを想った。


そして、セシールは祈りを捧げた。

(命を落とした人々、大切な人を失った人々がせめて、これ以上奪われることのない世界を私達も創って行きます。月の女神よどうか私をお赦し下さい、そしてお見守り下さい。)



ーーそして王都では、


鬼の形相のギデオンによって引き摺られてきたエミリー嬢の姿に皆が軽蔑し、驚愕していた、





「罪人を連れてきた。国王陛下、または王太子殿下に取り次いでもらいたいっ。」
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