43 / 75
公爵令嬢は残さない3
しおりを挟む「テオ、全て終わるわ」
セシールがそう言った時、アルベーリア中が闇に包まれた。
そして、王都でクーデターを起こしている者たちは次々に闇に引きずり込まれて行った。
魔力の強いものは生き残ったが、マケール達が居ればそのくらいは時間はかからないだろう。
そして、この戦いを想いセシールは涙を一筋流した。
涙が地面に落ちると、そこから順番に、血の海と化していた地面を綺麗にしていく。
エラサの街から青白い光が降り注ぎ、キラキラとダイヤのようにセシールの闇を飾った。
国一つを包むなど、容易なことではない。
普通なら魔力を使い果たして命にかかわる程。
魔力が多く、月の女神であるセシールだからこそできる大技であった。
セシールがリアムに王都を見たいと言ったのは、この為だったのだ。
詠唱や魔法陣ではなく、セシール達ごく一部の人間はイメージによって魔法を使っているからであった。
美しいエラサの街並みが戻り、たまたまリアムが掴んでいたアルフレッドの首以外の人だったものは、綺麗に消えた。
テオドールは何が起きているのか分からなかった。
いや、全員がわからなかった。
ハッとなにかを思い出したように我に返ったマチルダ、
「リアムっ、王都は…どうなったのかしら、」
リアムを含む他の者も、ハッと我に返りリアムによって映し出された王都の現状を見た。
闇が晴れて、はっきりと王都見える王都の様子を見て驚愕した。
エラサと同じく、セルドーラ軍も、エウリアス軍も居ない。
テオドールの攻撃魔法の様に、人が消滅するのか、
闇の中、どこかで人々は生きているのかはセシールにも分からなかった。
光の属性を持つセシールだが闇の方が相性が良く、それは月の女神の力と関係しているのかもしれない。
まさにセシール自体が未知であり、神秘だった。
アルベーリア中をセシールの闇が守り、
アルベーリア中でセシールの月の光が浄化した。
そしてセシールの言った通り、全てが終わった。
後、光を纏い浮遊していたセシールは気を失ったようで、プツリと電池が切れたかのように、落下してきた。
セシールに目掛けて走るクロヴィスは、セシールを受け止め、ぎゅうっと、大切そうに抱きしめた。
テオドールは咄嗟に駆け寄った。
皆も駆け寄り、眠るセシールを覗き込んだ。
「魔力の使いすぎだね、尽きたわけじゃないよ。」
テオドールが悔しそうに、セシールの頬に触れ、目をぐっと閉じた。
「セシール、また守られてしまったね…」
膝をついてセシールを抱えるクロヴィスの後ろに立ったまま涙をポロポロと流し、マチルダはセシールに回復魔法を当て続けた。
「マチルダ、もうこれ以上意味が…セシール様ならきっとすぐに目を覚ますよ。」
リシュがマチルダの手を握って悲しげに言う。
リアムとダンテは俯いたまま、拳を強く握っていた。
(お護りすると誓ったのに…なにも、出来なかった。)
マチルダはそっとセシールのマントを彼女に掛けて、涙を拭った。
テオドールと先程駆けつけた、アルマンとフェランは目の前の光景を信じられないと言う顔で見ていて、
他の者も達の表情はなんとも複雑な、読み取れ無いものであったが、セシールの事を心配していた。
ーー王都
攻め込む兵の数に、キリがないと皆が疲労を見せていた。
ノーフォード家の者たちが黙々と敵軍を殲滅して行く。
「マケール…」
ディアーナが何かを決めたような眼差しをした。
「いや、私が…。ディアーナ、君を愛している。ノーフォードの者にはもしもの時、君とセシールを任せてある。」
「だめよ、それなら一緒に…!」
「私は君の恩恵を受けている、底が尽きて命を取られるようなことは無い。」
マケールは向かってくる敵軍に、腕をひと振り、軽く上げるような仕草をすると、黒々とした闇の渦がマケール達を囲った。
それは近づくと者を切り裂き、引きちぎった。
「あ"ぁあ"ああ!う、ずにのまれるな…ッ」
そして、マケールは最期の別れかのように、ディアーナを抱きしめ、愛しむ目で、深く、深くキスをした。
そして、マケールが動き出そうとした時…
周りが闇に包まれ、視界が無くなる。
声を上げる暇もなく敵軍は闇に飲まれ消えた。
そして、優しい光が星空のように闇に散りばめられ、幻想的な美しい風景にみながここが戦地だと言うことを忘れそうになった。
「ぁ…マケール…っ」
「セシール……!」
2人にはそれがセシールの力だとすぐに分かった。
戦地だった王都は元の綺麗な街並みを取り戻し、
それが、王宮だけでなく、王都中、アルベーリア中を呑み込んだのだと分かった。
セシールの生死を案じ、静かに涙を流すディアーナを抱きしめ、残る者をありったけの力で一気に片付けた。
「陛下!私はエラサへ行かなければ!!!」
すると、陛下は悲しげにうなづいて、セシールの無事を願っていると言った。
マケールが礼をして、ディアーナと転移しようとしたその時、
「まて、マケール…ッ!!ディアーナ様は、僕の…僕のモノだ…!!!!」
王権の光の魔法を放ち、エレメントはマケールに挑んだのだ。
2
お気に入りに追加
4,064
あなたにおすすめの小説
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
【完結】王太子は、鎖国したいようです。【再録】
仲村 嘉高
恋愛
側妃を正妃にしたい……そんな理由で離婚を自身の結婚記念の儀で宣言した王太子。
成人の儀は終えているので、もう子供の戯言では済まされません。
「たかが辺境伯の娘のくせに、今まで王太子妃として贅沢してきたんだ、充分だろう」
あぁ、陛下が頭を抱えております。
可哀想に……次代の王は、鎖国したいようですわね。
※R15は、ざまぁ?用の保険です。
※なろうに移行した作品ですが、自作の中では緩いざまぁ作品をR18指定され、非公開措置とされました(笑)
それに伴い、全作品引き下げる事にしたので、こちらに移行します。
昔の作品でかなり拙いですが、それでも宜しければお読みください。
※感想は、全て読ませていただきますが、なにしろ昔の作品ですので、基本返信はいたしませんので、ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる