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公爵令嬢は残さない
しおりを挟む目の前の三人をみたセシールはどことなく、安心したような笑みを一瞬むけた。
「そう…来てくれたのね。」
嬉しそうに、小さな声で言った後、三人にむかって、
「あら、控えめにした方よ。」と言った。
次々と向かってくる敵の魔法攻撃をリシュがバリアで弾き飛ばす。
マチルダが高く浮遊して向こう側を覗く
「お~、凄い軍勢よ。ほんっとキリがないわ、よいしょっと!」
マチルダは太陽が落ちて来たのかと思う程の大きな炎塊を片手に造り出し、思いっきり投げた。
「お~燃えてる燃えてる!」
すると、軍の中央に小さく、アルフレッドの姿が見えた。
(アイツ、やっぱりまだセシールを…)
今度は、少し小さめの炎塊をアルフレッドの方に思いっきり投げた。
すると、アルフレッドは剣でそれを受け止め、後ろへ逸らし、マチルダに不敵な笑みを向け、人差し指でマチルダに向けて魔法を打った。
「!?」シュタ
ギリギリでかわして着地したマチルダの背中にセシールの背中が当たる。
「マチルダ、何か問題が?」
「ええ、アルフレッドよ。アイツ昔からセシールを欲しがってたから。」
「……挨拶に来たわ。理解できないわね。」
「マチルダ!!」 「セシール!!!」
リシュとクロヴィスが叫ぶと、なぜかセシール達を全員が狙っている。
そして、敵兵をかき分けて現れたのは。アルフレッドであった。
「やあ私のアメジスト、いや…セシール。」
舐め回すようにセシールを見るその視線はやはり狂気に満ちており、鳥肌が立つ。
「私達がこれで、やられるとでも?」
「貴方ごと吹き飛ばすわ。」
2人の髪が魔力の風圧で上へともちあがる。
瞳が光って彼女達の魔力が赤々とした炎と闇の黒々とした炎となり、混ざり合って爆発した。
リシュにより、こちらは全員無事であったがセシール達を包囲していた者たちは原形をとどめず、人だったものとなっていた。
すると、クロヴィスから、強大な魔力を感じて振り返る。
「セシール、まずいわ。」
「そうね、皆、クロより前に出てはいけないわ!」
その声にみんなはクロヴィスより後ろに撤退し、セシール等も戻った、
金色に光ったクロヴィスの瞳が前を見据え、剣を鞘に入れると、地面に片手をついた。
ーゴゴゴゴゴ
すると、地面どころか空間ごと、揺れたような感覚して地面は次々捲れて目の前の全て、その勢いは止まらず向かっていき、人、モノ、第一の門ごと吹き飛ばしまっ平にしてしまった。
めくれ上がった地面を呆然と眺めながらリアム呟く
「これで、魔法が苦手だと言うのだから怖いよ…」
「クロ、門が跡形も無くなったわ、」
「すまない。加減をしたつもりなんだ、」
困ったように言ったクロヴィスにセシールは
「いえ、これで見通しが良くなったわ、」
防御していた鱗の様なものが、ポロポロと落ちてアルフレッドがよろけながら出てきた。
「昔からそうだっ!!いつも追いつかない!!!クロヴィス!!お前と、あの忌々しいテオドールだよ!!!私の、私のセシールだと言うのに!!!!!」
アルフレッドは、貴族の模範的な金髪碧眼の見目麗しい顔を憎々しげにゆがませ、頭をかかえていた。
そしてアルフレッドは魔力を思いっきり放出させ、その魔力と風力によって怪我人や、重傷者がでたので、暗部の2人と、エイダとエイミーに、転移で医務室へ送らせて、メーベルの部下達に残りの騎士達を邸内へ転移させてもらった。
するとアルフレッドの横に空間魔法の窓が空き何かを引っ張り出した。
「う、うわぁ!バケモノ!はなせ!セシールお姉ちゃん!!!
」
それは市井の孤児院でよく遊んであげていた小さな男の子であった。
「あなた!どうしてこんな所に!?」
「ひなんする前に、へんな男に魔空間に引きずり込まれて、他にもいるんだ、セシールお姉ちゃん、あしでまといになって、ごめんなさい、、」
幼い子が足手まといになってごめんと謝るのだ。
セシールはなんて悲しい事なのだろうと心を痛めた。
「謝らなくていいわ、貴方は私に、助けてと言っていいのよ。」
その子は、糸が切れたように泣き出して、だけどはっきりと言った。
「お、おねぇぢゃんっだずげでっ!!!!」
セシール達は頷いて、アルフレッドに向き直った。
「おっと、セシール。この子を助けても、捕らえているのは1人じゃ無いよ。」ニヤニヤ
そんなセシールにアルフレッドはニヤケ顔で提案した。
「セシール、こちらへ。」
全員の子ども達を返す代わりにセシールを身代わりにと言ったアルフレッドに怒りを抑えられないようにクロヴィスが叫ぶ。
「お前!!セシールに触れてみろ、必ず殺す!!!」
マチルダはセシールを引き止めたが、
「セシール、君が先だ。でなければ子供達は殺す。」
アルフレッドの言葉に、セシールは選択肢が他に見つからなかった。
皆が、囚われた罪なき子供の命を前に、動けずにいた。
セシールは瞳を閉じて、そっと頷き、マントをマチルダに預けて、アルフレッドの元へ行った。
するとアルフレッドは魔力吸い取る魔道具をセシールの首に付け、それに繋がる鎖をジャラリと引っ張った。
「セシール、私のセシール!」
セシールの首元に鼻を近づけ、堪能するかのようにセシールの香りを嗅ぐアルフレッドに、クロヴィスもリアムもダンテも、マチルダも、皆が殺気立っていた。
「子供が先よ、アルフレッド」
「…ああ、そうだったね、はい、」
興味無さそうに捕らえていた子供達をマチルダ達の方へ魔法で放り投げ、セシールから目を離さず返事をした。
嫌そうに少しでもアルフレッドと距離を取ろうとするセシールを鎖を引き引き寄せ、見せつけるようにセシールを撫で回した。
「見ろ、クロヴィス!私のセシールだ!何をしてもいい!!何をさせてもいい!!私だけが、そうできるんだ!!!」
セシールは嫌そうに、アルフレッドから顔を背けながら、遠隔魔法が得意なリアムにお願いした。
「…っ。リアム!!王都の様子を映せる?」
「お嬢様っ!!それどころじゃ………分かりました。」
王都のクーデターの様子が映し出される。
「クレマン、子供達を殿下の所へ、」
「セシール様、ですが…「行って!…お願い、」
………っ分かりました。」
「あっはははは!そんなもの見て何になる?親の顔を一目みたいか?可愛い所もあるものだな。」
ダンテは怒りが抑えられないようで、アルフレッドに向かって、凄いスピードで斬りかかったが、
顎を上げられ、腰を、抱かれたセシールを盾にし、隙を見せたダンテを吹き飛ばした。
「もう私のだよ、こんな事だってできる。」
セシールの高く結った髪を引っ張り膝をつかせ、もう片方の手の指を2本、口の前に持って行き、後ろから抱きしめるように、顔を寄せて囁く。
セシールは訳が分からず、いつのまにか拘束されている手足を見て、アルフレッドの目を見て、鋭く睨みつけた。
すると、ああ何も知らないんだね。と言ってセシールの口に詰め込み、口内を掻き回して、「大切に舐めろ。噛むなよ。」と苦しそうなセシールに恍惚とした顔で空を仰ぎ身を震わせていた。
クロヴィスはダンテを受け止めて、射殺すような目でアルフレッドを睨んだが、アルフレッドの指を思い切り噛んで、吐き出したセシールが何か伝えようとして、やめたのを見て。
何か考えがあるのだとそれを読み取ろうとしていた。
(彼女の魔力を吸い切れるほどの魔道具などないはずだから。)
「クロ、マチルダ、ダンテ、リアム、後はお願いね。」
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