40 / 75
公爵令嬢は負けられない3
しおりを挟むセシール達は、リアム、マイロ、カインと合流し、二の門に到着していた。
降りて来たセシール達を見て、安心したような目を向けた後、セシール達が来たことに士気が益々高まった。
ダンテは声を上げた。
「これより我々はセシール様と二の門を死守する!!!!」
王宮より来た兵士達は、前に出たセシールのノーフォード当主かのような堂々とした雰囲気に、希望が見えて、失いかけた戦意を奮い立たせた。
元よりノーフォード家の騎士である者たちは、セシールのその後ろ姿にゾクゾクと、何か込み上げるものを感じ、抑えきれない高揚感は彼らの魔力を膨らませた。
ウオォオオオオオオオォォ!!!!!!
それは地響きが成程の声であった。
そして、セシールはよく通る声を大きく上げ、皆に言う。
「この門より先は戦場!!!私を庇いながら戦えるほど甘くはありません!!!例え私の手足がもげようと、命を落とそうと捨て置きなさい!!!!」
「それは…!」できません。と続けようとしたクレマンがあんなにセシールを溺愛しているリアムに制され、その顔を見ると、
真剣な眼差しでセシール見て、もう片方の手を握りしめていた。
その覚悟を決めた表情にクレマンは何もいえなかったしリアムもノーフォードの者だと、その強さを実感した。
そして、セシールのその後ろ姿に、皇后となれる者の器を感じた。
「今より私はただの貴女達の仲間です。守るべきは殿下のお命、そしてアルベーリアです!私はノーフォードの名ににかけて勝利に導きます!!!!」
そういうと、セシールは開門の合図と同時に闇を放った。
凄い勢いで、闇な門から流れて出てて、撤退した兵を追い、門の前まで来ていた敵軍を闇の炎が焼き尽くす。
その隙に、全軍門を出て、二の門は閉じられた。
決して狭くはないノーフォード邸の敷地、次々と流れこむ大量の兵士たちに。100人に満たない此方は圧倒的に不利な状況であったが、誰一人、その目から光を失ってはいなかった。
すると、小柄でいかにも女の子らしいマイロが突然両手をあげると、地面が黙々と盛り上がって二の門を塞いだ。
そしてそのまま三体のゴーレムを作り出し、小さな声で呟いた。
「マチルダ様に強いの作り方教わったの…」
そんなマイロにため息をついて笑ったカインも両手を上に挙げ、そのまま下ろした。
すると、カインの魔力がパチパチと弾けながら、兵士たちの上に次々と真っ直ぐ振り落ちてきて刺さった。
「なっ!なんだアイツら!詠唱も魔法陣も、ひっひかないぞ!!!」
「これじゃあおいつかねぇよっ!!!!」
敵軍はザワザワと騒ぎ出したが、後ろから突き刺さるアルフレッドの魔力に、意を決したように、
「に、逃げ場はない!!進めぇーーーッ!!!」
セシールの周りに浮かんだ小さなブラックホールが次々と飛んでいきそのまま敵を焼き尽くす。
リアムの魔法により正気を失った者たちが相打ちを初め、攻撃の魔法により、一の門より流れ入る兵は次々と斬り刻まれた。
その身を強化し、剣に魔力を纏うダンテの足元は地についておらず、魔力により浮遊しながらすごいスピードで薄紫のオーラをバチバチと発しながら、斬り倒して行った。
エイダとエイミーはセシールの両側少し離れた所より、体術にて応戦。剣も通らぬその安定した魔力を纏う身で、
次々と敵を殴り倒して、彼女達の触れた所は内側から破裂した。
「エイダ、心臓なら一発でイケる」
「エイミー、頭でも一発よ」
次々と倒されていく兵だか、新たに攻め入る兵も多かった。
だか、数で圧倒する筈だったアルフレッドも焦っていた。
「ハァ、ッ!中々数が減らないですね!」
「ダンテ!ええ、私の前を少しだけお願いしてもいい??」
「喜んで。」
セシールを守るようにして立ったダンテは背中から、強大な魔力を感じていた。
すると、目の前の兵士から、一の門を挟んだ向こう側から、所々から血飛沫が上がる。
セシールは少しだけ辛そうに、「ごめんなさい」と言ってその目を一瞬見開いた。
「ギィヤァアア!!!!」
「なんっ」ブシュ
人が次々に内側から引き裂かれていく。
エイダとエミリーは目を閉じて、リアムとマイロはただそれを眺めていた。
カインは眉を顰めてその光景を見ていたし、クレマンは目を見開き、驚愕した後、そっと目を逸らした。
そして、片手で魔法の針を飛ばして、セシールへ向かおうとする死に損ないにとどめを刺した。
そして、辺りが静かになった。
「…終わったのか??」
するとセシールはゆっくり首を横に振った。
「全軍、恐れず前へー!前へー!!!」
また新たに大量の敵兵がなだれ込んでくる声が聞こえて、
クレマンは短く息をすって深呼吸した。
「お嬢様、奴らどんだけいるのでしょう?」
「リアム…見当もつかないわ、大国ですものね、、」
ダンテが、振り返ってセシールを心配そうに見た。
「セシール様、無理をなさらないで下さい。」
すると、赤々とする炎が一の門の前に広がった。
そして、セシールの前を庇うように、三つの光が空間を開け、現れた。
立っていたのは鮮やか紅の魔女と、蜂蜜のような髪と瞳を持つ青年、そして濃紺の髪に金色の瞳が輝く青年であった。
「あら、セシール。派手にやったのね。」クスクス
「綺麗な庭だね。」ニコリ
「はぁ、全くお前達は……」
17
お気に入りに追加
4,073
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる