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王弟殿下の妻になりたい
しおりを挟むエミリーは寒い牢獄でうずくまりながら、震えていた。
その震えは、寒さからか、または怒りからなのか自分でも分からないほど怒りで自分を見失っていた。
(あいつは絶対殺してやる…きっとエレ様が迎えに来てくれるわ…そうしたら…)
破かれたはずのドレスは、元に戻り、あれは夢だったのかと考えたが、髪や顔、体中にベットリとついたソレは固ままエミリーの美しい容姿を穢していたし、動くたびに溢れて太ももを伝うのであれは現実だったのだと、吐き気がした。
すると空間に丸い光の穴が開いて、エレメントが現れた。
「エレさ…「静かに。」
ノーフォード邸ではもしもの時の避難先にと、王家の数少ない一部の者に、結界を不適用としていて、エレメントもその内の1人であった。数名で時間をかけて作った複雑な結界を、一晩やそこらで書き換えられる代物ではなかった。
「今見つかっては、僕ではテオドールやセシールに勝つことはできないからね、静かに。」
エミリーはコクコクと顔を何回も上下し、勢いよく頷いた。
「僕は3人が限界なんだ、あっちの君の友人は連れて行けないんだけどいいかな?」
またもや、エミリー嬢は頷いて、助けを求めた。
「エレ様…助けて…」
エレメントは感情のない瞳で微笑んだ。
「では、もう少し頑張れるかな?僕が王になるためには、聖女を救った英雄にならないと行けないんだ。」
「なります、聖女にでも何でも、王妃になるの私は…っ」
エミリーが言うと、エレメントの魔法によって汚れた身体や髪が綺麗になり、悪かった顔色は元の白い肌に血色の良い頬になった。
エミリーは、3人と言ったことを不思議に思っていた。
「あの…私とエレ様で2人ですよね?もう1人って…」
「ああ、用が終わったら来るよ。挨拶に行くんだって、彼も悪趣味だよね。」とどうでも良さそうに言った。
ーーセシールside
殆どの準備を終え、兵が到着するであろう最短の日にあと1日と迫って来ていた。
皆大切な戦力として、忙しいので。戦前、最後になるであろう湯浴みを1人で軽く済まして着替えをしようと思えば、何者かに壁に身を押さえつけられた。
「貴方は…!アルフレッド?」
バスローブ一枚でも失うことのないその気品にアルフレッドは身震いし、興奮冷めやらない様子でセシールの頬に触れた。
「私のアメジスト、やっと会えたね。」
嫌悪感で背中に冷たいものが走った感覚がした。
セシールは彼の身体の自由を魔法で奪い、攻撃しようとしたところで、転移の空間が開いてエレメントが出てきた。
「あなたは!?やはり!」
「セシールセシールセシールッ…強くて美しい私のアメジスト!!!必ず迎えにくるからね、愛してるよ!!」
狂気を含んだ目線でセシールを見るアルフレッドはセシールの記憶の中の彼とは大きく違っていた。
そしてエレメントが、セシールをみて軽く目を身開いて言った。
「ほぉ、こうして見ると、ディアーナ様にそっくりだな…」
その粘着質な目線にセシールは嫌な予感がしていた。
セシールの魔力の気配に駆けつけた、リアムとダンテが素早く攻撃を仕掛けたが、空間はもう閉じており。
顔を青くしたセシールだけが、リアムとダンテの目に映った。
「お嬢様!」「セシール様!」
2人は彼女に駆け寄ったが、バスローブの胸もをギュッと掴んで、閉じているものの、彼女の美しい脚はそのバスローブから太ももを覗かせており、湯浴みの後のバスローブは水気を含み、軽く肌に張り付いて、セシールの身体を強調していた。
リアムとダンテは赤面し、「エイダとエイミーを呼んできます!」と急いで部屋を出ていった。
まもなくして、2人が部屋にやって来て、彼女の為に作った、騎士服を彼女に着せたのだった。
エイダが不可解だという表情で、問う。
「お嬢様、アルフレッド殿下はなにをしに?」
「エレメント殿下と手を組んだのでしょう。とても気味が悪い感じがしたわ…。」
エイミーがセシールを心配そうにして言う。
「彼は昔からお嬢様に執拗なまでの執着を見せておりましたので、注意して下さい。」
できましたよ!
2人に言われて見ると、濃紺と白で統一された騎士服に、濃紺に金でノーフォードの家紋が刺繍されたマント、高く結われた髪が鏡に映っていた。
「お嬢様、素敵です!」
「衣服には魔法付与が施されています。マチルダ様からです。」
セシールはマチルダに感謝した。
(ありがとう、マチルダ。きっと勝つわ。)
数分後、結界の修正と、エミリーが牢獄から姿を消したことが報告された。
そして、エラサのすぐそこまで敵は迫っていた。
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