公爵令嬢は破棄したい!

abang

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公爵令嬢は憤慨している2

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少しして、リシュにも話を聞きたいと、テオドールの提案で、エイダが彼を迎えに行くことになった。

だか、下の階へ降りるとリシュ様は不貞腐れた顔で脚を組んで、テーブルの席に座っていた。


「リシュ・グランデ・レイモンド侯爵令息様。急なお呼び立てで申し訳ありませんが、テオドール殿下とセシール様が2階でお待ちです。お時間が宜しければ、ご案内しても宜しいでしょうか。」


エイダがいつもの崩れない表情で、リシュに伝えると、



「遅いよ~!ずっと待ってたのに、さぁ!えっと…」

「エイダと申します。」

「エイダ、案内してしてくれる?」


「かしこまりました。」


人前に姿を表さないと聞いていたので気難しいのかと思っていたが、案外フレンドリーなリシュに内心エイダはホッとした。



「此処でございます。」


扉を開けて、リシュを中へ案内すると重い雰囲気でお茶を飲む彼らにリシュは眉間にシワを寄せた。

「失礼します。皆様、ご機嫌よう。殿下、只今参りました。」

「急に呼び立ててしまい申し訳ない。」

「ご機嫌よう、リシュ様。」

「リシュ、貴方に少し話を聞きたくてね。」

「はい、殿下。エミリー嬢のことでしょうか。」


リシュは大体の予想がついているらしく、渋い顔をして話を始めた。


「まず、本日のことから。エミリー嬢とギデオンがホテルに戻っておりません。何か勘付いたのか、昨晩の事で逃亡したのかは分かりませんがら、部屋はチェックアウトされており、今朝から姿を見ていません。」


皆が驚いた顔をして、リシュを見たが、セシールの続きを促す強い目に口を閉じた。

「そして、彼女の魅了についてですが、詳しくは解りませんが、何か特別な法則や条件があるのでは無いかと考えております。」


「では、彼女はそれを隠しながら使用していると?」


「はい。ダグラスを見ただけでは気づきませんでしたが、彼女が接近した際に微量の魅了を感じましたが、効果は感じられませんでした。ですが、彼女の側に居ればいるほど彼らに、魅了の効果が見られたので、何か条件があるのかと…」


「証明できなければならない。」

クロヴィスが口元に手を置き、考えながら言った。


しばらく目を閉じて、考えていたセシールが、短く息を吐いて言った。


「いえ、此処はノーフォード領です。

わたくしの件は今は良いでしょう。私の力不足で起きた事で私達の問題です。

ですが、次代を担う高位貴族の子息達を、未知の魅了の力で惑わした事は、国家転覆を図った罪に問われます。

その上このノーフォード領で殺人が起きたとなれば話は別です。

直ちに、彼女達を捜索し。身柄を拘束致します。」



「では、私達が昨晩の事件を証言致しましょう。」



リシュがニコリと笑ってセシールに申し出た。



「そうですね、リシュには魅了についての説明をぜひお願いしたいと思います。セシール様、お力添えさせて下さい。」


ダグラスも頭を下げて、セシールに力添えを願い出て、


クロヴィス、テオドールはもちろん、侍従へ小さなメモを手渡し、すぐに捜索に手を打った。


セシールがリアムに目配せをすると、リアムの姿は一瞬にして消え、その場からいなくなった。


そして、まもなくして、エラサを北に向かう2人を拘束したと報告が届いたのだった。


ノーフォード邸の客室で各自待機していた彼らと、後から駆けつけたマチルダは、連行され邸の地下牢に居るという、エミリーとギデオンに会いに行くことにした。


一見冷静だが、怒りを含んだ不安定なセシールにクロヴィスは小さな声で言った。


「俺が居る。安心しろ。」

そんなクロヴィスに少しだけ、悲しげに揺れた瞳は弱々しく、小さな、小さな声で一言だけ答えて、セシールは前へ歩いて行った。

わたくしが見落としたせいで、ニルダは死んだわ。」

身勝手な理由で人を殺め、セシールを貶めようとするエミリーにクロヴィスは、心から怒りが込み上げてきた。


そんな2人の様子を見て皆はそれぞれ思うことがあったが、
誰も何も話さなかった。



ただ地下牢への道を前へ進んだ。
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