公爵令嬢は破棄したい!

abang

文字の大きさ
上 下
24 / 75

月の女神を手に入れたい2

しおりを挟む



ーーノーフォード公爵邸 ダンテside

近頃は別邸は、嬢様の休暇に向けての準備で忙しくしていた。

騎士のであるダンテがすることはあまり多く無かったが、狂気までもお嬢様を溺愛するリアムという侍従はまるで一生をエラサで過ごすのだろうかと思うくらいに用意周到であった。

口数は少ない奴であったが、旦那様や奥様への忠誠心も強く、お嬢様に関しては頭がおかしいのかと思う程盲目であった。


リアムは幼い頃よりお嬢様の影を務める5人をまとめている暗部のリーダーであり、年齢はそう変わらないがリアムが幼い頃よりお嬢様に対してこうだったらしい。


「ダンテ、エラサの別邸の地図は覚えたの?」

「リアム…またお前か。そっちはもうやる事はないのか?」

落ち着きなく仕事が終わってもウロウロしているリアムの淡いピンクの髪ががサラリと揺れるのを眺めながら、同じく淡い、こちらを睨みつけるリアムの瞳をあきれた目で見やった。

「…お嬢様をお守りしたい。彼女は僕達の全てなんだ」


「ああ、私もだよ。」


リアム達5人はとある男爵家にて、見目が麗しいというだけで誘拐され人身売買にかけられるところをたまたま、人身売買を知った幼いお嬢様が、助けてくれたのだと言う。

同じ年頃の子供が売られている事件を知って、1人でこっそり出て行ったお嬢様を後から追って来たスティーヴが、お嬢様が一瞬で片付けた大人たちの残骸と、貴族のお嬢様とは思えない、ボロボロのドレスを見て顔を真っ青にしていた話を教えてくれた。


私はお嬢様とのそのような思い出を持ってはいないが、毎日一緒に学園へ通うお嬢様をいつしか、心から慕っている。


彼女の手が私の手に乗せられ、馬車を降りる時に香る優しくて甘い香り、彼女の耳通りの良い綺麗な声は、私の身体の奥からなにかが疼き、セシール様をそのまま引き寄せてしまいたい程に心を刺激するのだ。


「お嬢様に余計なことを考えるなよ…」


じっとりとした目で私を見るリアムに、私は少し笑ってしまった。

「何を考えるんだよ、皆と一緒だよ。俺にとってもセシール様が全てだよ、剣を捧げた主人として。」


例えどんなにお嬢様が甘かろうがその味を知ることはないが側で愛でる事はできるだろうか。


「…僕も一度は考えたことあるよ」


分かるよとでも言いたげな顔で言うリアムにギクリとしたが、それ以上にセシール様を主人として慕っているので彼女の幸せをこれからも守っていこうと2人で誓った。

(私達が手に入れたいのは彼女の幸せ)


ーーエイダandエイミーside

私達双子は、どこか知らない遠い国の戦闘民族の血統であった。ただ大きな魔力を持て余していたし、高すぎる身体能力と鋭い五感は、力を欲する者たちにとっては子に欲しい血であった。

しかし、孤児である2人は平民であり、後ろ盾が必要な者ほど2人を正妻として娶るはずはなく、

また彼女達はそれに応じる訳は無かった。

すると彼女達の働く酒場を買収し、賄い飯にクスリを混ぜた。

目を覚ました2人の首には魔力を吸い取る魔道具、そしてまるで娼婦が着るようなネグリジェを着せられ、豪華なベッドに繋がれていた。

そう、彼らは彼女達をより強い子を産む為の道具として扱おうとしたのだ。

そして、市井で彼女達の噂を聞いたお嬢様の暗部達により興味を持った当主様が私達を訪ねようと探していたところ、彼らの悪事が発覚した。

突如、屋敷中が闇に包まれ、気が付いたときにはもう大人達は誰も居なかったし、幼いお嬢様は指一本で魔道具を壊してしまわれたのだから驚いた。

なによりも、私達を見て

「早くに来られなくてごめんなさい。」

と涙するお姿は心を打たれたのだった。
彼女を探していた当主様がリアムに連れられ、呆れ顔で屋敷を訪れたのはほんの数分後だった。

「うちに来るのはどうかしら、何もしなくていいわ。子供も産まなくていい、仕事もあるし…その、わたくしのお友達になって欲しいのです。」

と、恥ずかしそうに言ったお嬢様がもう好きになってしまっていたし、彼女のために生きたいと思っていた。

今回も、きっと守ってみせる、

「エイダ、お嬢様をきっとお守りしよう。」

「そうね、私達がお嬢様には何人たりとも触れさせもしないわ。」

こっそりと使用人の部屋にきては一緒にお菓子を食べる彼女の悪戯な顔を思って笑った。


(やっと手に入れた私達の大切な人なんだから)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。 レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。 【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。 そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】

処理中です...