19 / 75
公爵様は守りたい
しおりを挟む先日王宮で聞いた話は真実だったようで、どうやら学園ではわたくしと殿下の婚約解消の話が真実味を増したようだった。
長い夏季休暇を目前とした学園は話の行方を見失うまいと、さらに盛り上がっていった。
そして、テオドールは夏季休暇をセシールと過ごせることを楽しみにし、落ち着かない様子である。
「テオ様…私、友達も少なくて休暇中はとても寂しいと思うのです…」
放課後生徒会ではいつものように、エミリー嬢の悲劇のヒロイン劇が始まりかけていた。
クロヴィスとセシールは呆れたように席を立ち、バルコニーへ出て気分を変えようとしていた。
ーー室内
「ああ、そうだね…。ギデオンとダグは婚約者殿とどこかへ行く予定かな?」
「い、いえ…私は解消を申し立てられまして…。」
「俺は、特に予定はありません。」
(私が寂しいって言ってんのに、なによそのそっけない態度は、テオ様ったら様子がおかしいわ、、)
「ダグ、何があったの?話が落ち着いたらまた、ゆっくり聞かせてもらおうかな、相談ならいつでも乗るよ。」
「お心遣いに感謝します、殿下。」
「友人だろう、当たり前でしょ」と笑って言うテオドールにダグラスは、殿下が明らかに溺愛しているはずのセシールをなぜか悪女だと思い、貶めようとした自分を嫌悪し、罪悪感に苛まれた。
「ダグ、ギデオン、私は休暇中は少し王都を離れる。もし時間があれば、エミリー嬢の友人として気にかけてあげてくれるかな?」
とはいえ、やはり、可憐で純粋なエミリー嬢を任されるのは嬉しく二人は笑顔で了承した。
「テオ様も、帰ってきたら顔を見せて下さいねっ?」
「そうだね、早く帰ってこれたらそうするよ」
「滞在は長くなるのですか?」
「ああ、ギデオン、その間用があれば伝書鳩を飛ばしてくれ。」
「承知した」
(テオ様ったら一体どこへ行くというの?公務かしら?)
ーーバルコニー
「セシール、休暇はどこで?」
「殿下がエラサに誘って下さったわ、公爵領だということで父からも許可がおりたの。」
「偶然だね、マケール公爵閣下より、俺の一行もエラサに招待されているよ。」
友好関係を続けてきた三家は、公爵領である月の女神の聖地だとされている、エラサの中心の塔をを守るように、中心部から少し離れた所に別荘を持っていた。
王都からあまり離れていない、面する南側がノーフォード公爵の別荘であり、シンプルで品のある作りに見えるが、機能性豊かな立派な要塞でもあり、聖地を守る砦である。
そしてエラサの北側ランスロット辺境伯家の別荘があり、こちらもまた寒々しく質素に見えるが、強固なる立派な要塞であり、西の聖なる巨大樹の森の小さな洞窟に繋がる、秘密の地下通路と 緊急時に備えてある広い地下室と食糧庫が特徴である。
そして、東側にある魔女の別荘と呼ばれる塔も、同じく普通の別荘ではなく立派な要塞であり、魔法を得意とする一族らしく古い昔、魔塔と呼ばれたものを見本として作っている。現在も多数の魔法の使い手が研究と別荘の留守を守っている。
どうやらセシールの父マケールは、今のアルベーリアは危険だと判断し、いざと言うときの助けになるよう、領地に厳戒態勢を敷いたということだろう。
「では、時間がある時は食事でもしましょう」
「あぁ、エルサは外部の影響を受けないから、安心して通信具を使えるし、いつでも連絡してくれ。」
「ふふ、そうね。では、きっとマチルダも居るわね。」
「ああ。マケール様のことだ。休暇でもあるが、お父上の勘は当たるので準備だけは整えておくよ。」
「では、殿下には私から話しておきます。」
クロヴィスは幸せそうなセシールに心が痛んだが、愛しているからこそ、邪魔はできなかった。
(いつか、この気持ちを伝える日は来るのだろうか、
来なくても、きっと俺はセシールだけを死ぬまで愛してしまうのだろう。)
22
お気に入りに追加
4,063
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる