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想定内の入場、戦闘開始?
しおりを挟むその後、家門の高い者順に王家への挨拶を済ませると相変わらずの様子な四人をバーナードの妹を含む多くの子女達が囲んで和やかに談笑している。
大人達もそれを微笑ましく眺めながら、各自談笑していた。
その中で落ち着かない様子のローズモンド夫妻。
そんな彼らを更に地獄に突き落としたのはミハイルの入場であった。
彼の母は噂こそ知っていたがまさかそのような愚かな選択をするとは思わず、「うまくやれ」とミハイルに言っていたが、その意味を見事にはき違えた息子の公の場での愚行に凍りついた。
「ほう、これは…いくら公爵子息といえどフォンテーヌも甘く見られたものですね。」
「なにを、想定通りでこちらとしては願ったりだ。」
「あなた、他の人に聞こえますわ。」
国王とフォンテーヌ侯爵は何やらひそひそと話していたが、まるで面倒事はごめんだと散った子女達の開けた道を、堂々と歩くミハイルとメルリアの様子にローズモンド公爵は顔を青くしてふらりとした。
メルリアと目が合ったグレーシスを軽く引き寄せたシヴァが合図となり、顔色を変えたミハイルから隠すように、
アイズとバーナードがシヴァとグレーシスの前に立った。
「あら、騎士らしくなったわね。」
「何を今更、アイツは騎士としては優秀だよ。」
スカンダ夫妻がバーナードの騎士らしい姿に微笑む隣でまた、サンスネッグ夫妻もアイズの姿を見て微笑んでいた。
「あの子もきちんとサンスネッグらしくなったな…。」
「そうね。アイズは怖いほどに貴方によく似ていますよ、ふふ。」
自らが、不義の証拠の華を胸元に咲かせた令嬢を伴っている事を忘れてしまったのか、顔を赤くして怒った様子でグレーシス達に近寄ったミハイルはシヴァの装いに気づくと更に怒りを露わにした。
「グレーシスっ、これは…っどう言うことなんだ!?」
「お互いに一人での入場だった所、シヴァが気を利かせて下さっただけよ。」
「呼び捨てだと!?ドレスまで揃えているじゃないか!」
「これは偶々です。お父様が贈って下さったものですもの。」
「それ以上近づくと、攻撃とみなすぞミハイル。」
「バーナード!邪魔をするな、何なんだ一体っ、」
「言葉が分かるなら、それ以上踏み出せばどうなるか分かるはずだけど?」
「あ、アイズ卿…っ、」
「そちらこそ、揃えた装いに見えるが?それと……」
「きゃっ、殿下そんなに見つめられると恥ずかしいですっ。」
メルリアの胸元をじっと見たシヴァに頬を染めて胸を更に寄せながら言った彼女にアイズが少し笑ってから手をひらひらとさせて「あり得ないよ」と言った。
「興味ない。ただそんなものをアクセサリーのように見せびらかすのはやめた方がいい。」
シヴァが言うと、周りの者たちがくすくすと笑い出してしまったのでグレーシスが咎めるとミハイルは慌ててメルリアの肩にジャケットをかけてあげて抱き寄せた。
「ミハイル、その大切な方と早く陛下方へご挨拶に伺うべきだわ。皆順番を待っているのよ。」
「グレーシス!君だって僕の大切な人だろ!」
「…、それは過去の話でしょう。ローズモンド卿。」
「グレーシスッ、」
「い、行きましょうミハイル様っ!」
(これ以上恥をかかされてたまるもんですか!この女がどう足掻いても未来のローズモンド夫人は私なのよ!でも…)
メルリアは気に入らなかった。
誰もが憧れる子息達がグレーシスを守るように立っており、いつも凛々しい表情をどことなくほぐしてる、愛していると全身の雰囲気から伝えていた。
「それでも…ミハイル様が居ながら沢山の男性となんて……グレーシス様って何て酷いの?」
わざと誤解を招くような言い方で会場をざわつかせるメルリアに怒ったような三人と呆れたようなグレーシス。
展開を面白そうに見つめる大人達。
ニヤリと笑ったメルリアの内心はグレーシスが怒り、掴みかかってくる醜態を望んでいた。
(さあ、早くみっともなく怒りなさいな!!)
「それに、ミハイル様に捨てられたのを私のせいだと思うから辛く当たるのですね…」
「ミハイルは人ですので物ではありませんが、元婚約者として、貴方達の真実の愛を応援していますよ。」
「グレーシスっ!」
「ミハイル様は黙って!」
「そして…この方々は間違いなく大切な人ですが、侮辱する事は許しません。どなたも私如きがどうこうできる方ではありませんし、大切な友人です。」
グレーシスが軽く睨みつけるように言うと、少しシヴァに似た国王の笑い声が聞こえた。
「あっはっはっ!!大した令嬢だ。」
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