離婚届は寝室に置いておきました。暴かれる夫の執着愛

abang

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新しい幸せなんて強引に

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あれからリジュは戻って、来なかった。

迎えの馬車も居ないし、エルシーが連れていた使用人はどうやらリジュに馬車から降ろされたらしく、馬車のあった場所で途方に暮れていた。



「どういう事……?」



「リジュ様が、エルシー様は暫く王宮で世話になるようにと……申し訳ありません」



「仕方無いわ、相手がリジュだもの」



眉を下げて笑ったエルシーが少し泣きそうな表情に見えて、エルディオは考えるよりも先に言葉が出た。




「とりあえず、部屋を用意させる」

「でも……」


「大丈夫だ。王宮の者は口も堅い」


「ご迷惑では?」


「そこに居る皆、全員来ればとりあえず君の世話はその侍女がすると思うが?」


「……ありがとうございます」



リジュの意図はわからなかったが、とりあえず「帰ってくるな」と言われている事は分かった。


いい女性と出会ったのだろうか、それとももう自分に見切りをつけたのだろうか?


エルシーは考え得るすべての可能性を脳内に並べたがどれも答えとしてはしっくりこないものだった。


「……顔をみたくないって事でしょうか?」


「明日、私がリジュと話そう。それまで来賓室で悪いが」


「いいえ!身に余るお部屋です!感謝してもしきれません」


「いいんだ、したくてしてることだから」


「え……」


「とにかく今日は休め、廊下に出て両隣は使用人用の部屋だ」


「ありがとうございます……」


エルディオの表情で彼が本当に心配をしてくれている事が伝わって巻き込んでしまったことに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



急だと言うのに用意してくれたのは、王宮の中でもとても良い来賓室で要人たちがこの階でプライベートを過ごせるように配慮された特別な部屋だった。


リジュは分からないが、エルシーはこんなにも良い待遇を受けたのは初めてでましてや王宮だ。

あまりに落ち着かない気持ちだった。



「明日の朝食は一緒にどうだ?」


気遣ってくれたのか、エルディオは控えめにそう言った。


確かに心細かったのもあってエルシーは頼りなく頷いたものの、もう今エルシーがどう行動するのが正解なのか分からない状態だった。


「……ほっとけないな」


「……?何か仰いましたか?」


「いや、なんでも。無理はするな、話なら聞く」



まるで兄か父かにされるように、頭を優しく撫でられてほっとするような声でそう言われる。


これ以上エルディオと居れば涙が溢れてしまいそうで、慌ててエルディオを見上げて笑顔を作った。


「ありがとうございます、明日宜しくお願いします」

「……、ああ。また迎えに来る」


エルディオもまたこんなにも弱ったらエルシーを見るのは初めてで、これ以上側にいたら抱きしめて私にしろと言ってしまいそうで慌ててエルシーを部屋に入れた。


「ーふぅ、リジュ……どういうつもりだ」


エルシーは改めて部屋を見渡して感動する、今にも泣きそうな表情の自分が写るほど装飾品はピカピカで、急だったというのにとても綺麗に整えられていて準備されている軽食に気遣いが感じられる。



まだ別邸へ移る前にリジュが毎晩自ら使用人達に私への待遇を確認していたのを知ったのは最近だったけれど嬉しかった。


こんな時にもそんなことを思い出してしまうほどにリジュが好きなのだと実感させられてしまって辛くなった。


もうこのままリジュとは終わってしまうのだろうか、

確かにもう彼とは無理だと思っていたのは自分だった筈なのに、涙が溢れて止まらなくなった。

これが惚れた弱味というものだろうか、どうしても止まらない涙を一晩中流すエルシーは翌日腫れた目でエルディオとの朝食を迎えることになる。



「エルシー、大丈夫……では無さそうだな」

「大丈夫です殿下。反ってすっきりしました」






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