暴君に相応しい三番目の妃

abang

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直視できないほどの輝き

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全身鏡に映るドルチェ様は本当に同じ人間なのかと疑うほどだ。


キラキラとどの角度からも輝く特殊な輝きを放つラメを埋め込んだの黒のシンプルなドレスは滑らかな白肌によく映えている。


銀糸のような髪が緩く巻かれて、揺れるたびに甘い香りがし、吸い込まれそうなアイオライトの瞳と目が合うと、ララは鏡越しにしかも同性だというのにも関わらず不規則に心臓が波打った。




「リビィ、手袋取ってくれる?」

「はい、ドルチェ様」


どうやら幼い頃から互いを知っているというリビイルさんは、ドルチェ様のこの眩いばかりのお姿を見ても、それがさもあたり前かのように瞬時に受け入れるのだ。


何となく漂う二人の親密な雰囲気に色っぽさは無いが、陛下が時々、嫉妬しているのには皆気付いている。

それ程に二人の信頼関係は厚い。



「ララ、どうしたの?」

「あ……いえ、あまりにも美しくて」

「ふふ、大袈裟だけどありがとう。貴女も綺麗よ」

「私までこのようなドレスを……ありがとうございます!」

「似合っているわよ、とても」



ドルチェ様にリビイルさんが手袋をそっと着けて差し上げたところで、ドルチェ様が立ち上がって不敵な笑顔で声をかけた。



「さぁ、みんな準備は出来てるかしら?」


「はい。先程確認しましたが全員きちんと待機しております」


「じゃあ、行きましょう」


皇妃宮の守衛の為に持ち場に付いた者、会場に参加する者、ドルチェ様に付き添う者とそれぞれの役割ごとにきちんと正装した部下達が配置されており、

その中でも貴族出身の者は会場で夜会に参加し護衛を兼ねた情報収集をする役割だった。


このような場合の貴族出身の情報収集を得意とした班を統括するのが私ララで、騎士達をレンさん、その他の部下達をリビイルさんが纏めている。


私達三人は主にドルチェ様の身の周りの世話や警護に当たっているので、今日もまた私たちはドルチェ様の後ろに控えて皇宮の一番大きなホールへと同伴し、しっかりと周囲を見渡してから陛下の傍へとお送りした。


「楽しんでね」

「「「いえ、職務中ですので」」」


「私には大陸一番のボディガードがいるのに?」


ドルチェ様が皇帝陛下をボディガード呼ばわりした事にびくりと肩を揺らせて恐る恐る陛下を見た私とは違って、表情を変えずに陛下を見てから少し考えて後ろに下がったリビイルさんと、苦笑いしながら「そうでしたね」なんて冗談を返す余裕のあるレンさん。

どうやらいまだに陛下が怖いのは私だけらしく、レンさんに言わせればドルチェ様の方がよほど怖いらしい。


色味とデザイン、装飾を合わせた装いのお二人はどこからどう見てもお似合いで思わずうっとりとしてしまうのは私だけではないようだと会場をさりげなく見渡した。



「護衛が必要か?」

「ふふ、そうね。それよりも……」


悪戯に笑ったドルチェ様が陛下の手を取って、首を小さく傾げて「エスコートしてくれる旦那様が必要ね」なんて言うものだからすっかりと陛下は気を良くした様子だった。


にも関わらず、その空気を凍りつける一瞬の出来事。



「お姉様……え……っ?」

「……シェリア、どういうつもり?」

ドルチェ様が怒りに任せてその台詞を発した訳では無いと、帝国の貴族達には直ぐに分かった。


確かに、お二人の装いについてはドルチェ様に任されていた事ではあるが恐れ多くもを着ているシェリア嬢、どうやってデザインを盗んだのか、

という意味が隠れている言葉だとは夢にも思ってもいないのだろう愛らしく甘えるようにドルチェ様の腕に抱きついて仲睦まじい姉妹のように振る舞っている。




「信じて……っ私、帝国に来たばかりだし不可能よ?」



シェリア嬢の言葉に会場の誰かがポツリと言葉を落とす、


「確かに……それなら皇妃殿下が真似を……?」

「馬鹿!そんな訳ないだろう!!」

「ひっ、そ、そうだよな……」



疑心と好奇の視線、ドルチェ様に向けられたそんな視線にシェリア嬢は悲しげに、けれどもきちんと陛下を潤んだ瞳で見上げて言った。



「私、絶対にそんな事しません……」

「ドレスの話だって、お姉様にしかしていませんもの」



「なっ!?」

「大丈夫だ、ララ殿」

「リビイルさん……、これじゃまるで此方が……っ!」

「大丈夫だよ、見て」


混乱する会場と、気分を損ねた陛下の恐ろしい雰囲気。

とうとうウルウルと泣き始めたシェリア嬢に同情の声が集まる中、クスクスと笑ったドルチェ様はシェリア嬢の頬に手を添え涙を拭って優しく凍りつくような声でその場の空気を変えた。



(あ、リビイルさんの言う通りだわーー)


「ごめんなさいね、こうなる事ならドレスの話をしなければ良かったわね……」

「え……」

「いいのよ、シェリア。ずっと欲しがって居たじゃないこの素材のドレス……今季は二着分しか作れなかったのだけど……」


ドルチェ様が遠くに居るアエリ妃に微笑みかける。


「それも、予備の一着は盗まれてしまって……」

「えっ!? なにそれ、聞いてない……」

「そのドレスはどなたかのプレゼントなの?シェリア」



これでシェリア嬢の取るべき選択肢は二択になった。


自らを泥棒とするか、

他の誰かを泥棒として差し出すのか


どちらにせよ盗品を着た彼女は祝宴に出られないだろう。



「そろそろ整理したいと思っていたのよ、怒らないわ」


ドレスの事ではない、直感でそう思った。


「揶揄われたのね可哀想に、さぁお姉様に教えて頂戴……それは誰からの贈り物?」


ドルチェ様の隣で小さく陛下が笑ったのが聞こえた。




















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