婚約破棄された地味令嬢(実は美人)に恋した公爵様

abang

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45.君の全てを守る為に

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「……ロベリアが?」


一瞬、悪寒がして身を震わせるとメイドのアンが肩にブランケットを掛けてくれたところで目の前で部下から報告を受けていたケールがロベリアが捕らえられたとエリスに伝えた。


今の悪寒がロベリアからの強い恨みだと思うと少し怖い気もするが、兎に角今までの刺客達が彼女の仕業だというのは確たる証拠こそ手に入れられ無かったものの自分でも調査済みだ。

「行こうか、エリス」

「はい。でもどうして突然……」

「妃殿下のブローチを盗んだらしい」

「セイラン様の……っ!?」


どうやったかは知らないがロベリアは確かに王宮によく出入りしていた。

夫だった者の跡を継いで仕事があるのだと言っていたが嘘だと気付いていたので王太子妃宮には最大の気配りをして来た筈なのに。



「そう考え込むな、真相は今から明らかになるだろう」

ふと、シーエスが居ないことに気付く。妻になる人だからと公爵家から新しく任命された護衛騎士のシーエスは穏やかな風貌とは裏腹にかなり腕の立つ上に機転が効く者だ。

それに加えてジョルジオへの忠誠心が時々驚くほど強く勝手に仕事を投げ出す人ではないだろうと理解しているだけに心配になる。



「そうね……エスは今日は居ないのかしら」

「あ……、今日はジョルジオ様に呼ばれてな。側に俺がいるしな」


そう言うことなら納得が行くなと完結させて其々の身支度を済ませに行く。


ただ証人として被害者として王宮に真相を明かしに行くだけにも関わらずアンは何故かジョルジオから預かっていると言う黒いドレスを見せた。


「華やかで美しいわね……けどこれじゃあまるで」


本来の葬儀では着ないだろう華やかなドレスではあるものの、黒いチュールのヘッドアクセサリーも手袋も、靴も黒で統一されたそれはまるで葬儀を連想させる。


相反してアクセサリーは真っ赤なルビーで王族の瞳のように深く煌めいている。

(待って……これは!?)


「これって……、アン!」

「ジョルジオ様のお母上の物です陛下が祝いにお贈りになったそうです」

「こんな大切なものを」

「きっと陛下もお喜びになると仰られました」

不思議な輝きを放つルビーのアクセサリーを一式見渡して覚悟を決めた様子で頷いたエリスは何故これを今日送ったのだろうかと思案したがそれは王宮に到着してすぐに分かった。



ロベリアを処罰するのに証人など必要なく、間違いなくセイラン様のものであるブローチとその他王宮や他の人達から盗んだだろう盗品。


全ての罪名に対する確かな証拠が両陛下の前に並べられており、エリスのことについても「もう王族同然の甥の婚約者にした仕打ちは許し難い」と怒りを露わにしていた。



「エリス!大丈夫だった?何故言わなかったの?」


「セイラン様こそ……警備が至らず申し訳ありません」


「貴女の所為じゃないわ」


そう言ってセイラン様の瞳が見た事のない感情を映し出して戸惑うが、レイヴンに至ってもジョルジオに至っても、ましてや一緒に来た筈のケールに至ってもその他の被害者達も……違和感がある。


まるで、初めから全部知っているかのような。


「!」

「ふふ、レイヴンもジョルジオも心配してたわ。勿論私も、でももう大丈夫よエリス」

「はい……セイラン様、あの……」

「さあ、尋問が始まるわ前に行きましょ!」

促されるまま席に向かうと膝をついて中央で両手を後ろ手に捕えられたロベリアと目が合って彼女は大きく目を見開いて、暴れ出した。



(何アレ!死刑だとでも言うつもり!?それにあのルビーは王族にしか身に付けることの許されないものじゃ無い!!私はこんなに惨めなのに、華々しく私の死刑を見守ろうって訳!?)


「アンタ!!絶対に許さない!手を汚さずに、良くやったわね!!!」

「何を言って……っ!」


咄嗟に取り押さえられ口を塞がれてしまったものの、エリスには十分だった。

(辻褄が合ったわ)


ジョルジオをばっと見ると、優しく慈しむような微笑みがエリスの視線を迎えてくれて大きくなる心臓を落ち着かせるようにケールが背中をぽんぽんと優しく叩いた。



今まで証拠が無かったのではなく、先に誰かがみんなが手に入れていたのだ。


どうやったかは分からないが、盗まれたと言うのも嘘だろう。

いつもなら文句のひとつでも言うだろうセイランは落ち着いて微笑んでいるし、セイランの事になれば些細なことでも見逃さないレイヴンもまた小さく微笑んだままだ。


いくらなんでも貴族の邸から盗んだり、高位貴族の令嬢に危害を加えたりなど今のロベリアにはできっこ無い。

エリスの事をよく知っていたから出来ただけのこと。


(でっち上げたのね……確実に処分する為に)


気付いた所で事実である罪については逃れられ無い上に、これだけの者達が全員共謀者となるともう覆る事はないだろう。



けれどそんな罪悪感や、同情心はすぐに消え去ることとなった。


暴れた末に外れた口枷の落ちた音、ロベリアの叫び声。


「七歳の時にアンタが大切にしてた平民のメイド達を売ってお金にしてやったのは私よ!!死んでくれたお陰でバレなかったわ!あの子達は最期までアンタを恨んでたわね!!!はははっ」


「ーっ」
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