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箕島 星華の恋の終わり。
しおりを挟む皆、何も話さなかったがもう安心したような表情で家に帰ると組の者に取り押さえられながらヒステリックを起こしている星華が先回りして到着していた。
「アイツ…ほんと執念だけは褒めてやりたいよ…。」
げっそりとした表情で言った愛慈は白々しく天音の腰に手を回して撫でる手をつねられている。
「愛慈だってその図々しさは褒めてあげられるほどね。」
「おま、愛慈ぃやめろよ!お嬢に堂々と手ぇだすんじゃねぇ!」
「そうすっよ!愛慈さん親父にドヤされますよ!」
「…。まずはアレどうにかすっか。」
そう言った愛慈より先に車の扉を開けて外に出たのは天音であった。
「あ!アンタッ!承知しないわよ…ッ!愛慈くんは…
「愛慈が何ですか?」
「あ、愛慈くんはもうウチの婿なのよ!!!」
「本人が承知しましたか?」
「…ッ!生意気なのよ!!!!!」
振り上げた平手を受けたのは天音ではなく、愛慈だった。
「…ぁ、愛慈くん、ちがっ、」
「星華…。これで許せとはいわねぇ、けど中途半端なことしてたのは申し訳無いと思ってる。」
「やめてよ!言わないで…愛慈くん、お願いっ!それでもいいのただ私の側に居てよ!!!!」
「…無理だよ。初めからお前の側になんか居たことないだろう。」
「なんで、そんな餓鬼なのッ?お金なら私もあるし、見た目だって負けてないでしょう!!」
「そうだとしても、ずっと俺にはお嬢だけなんだ。」
「愛慈くん、やめて!!!」
「叶う事ないって思ってた。男として意識されなくても、ずっとお嬢の側にいるつもりだった。だから無理なんだ星華。」
泣き崩れた星華に、ヤマさんが申し訳なさそうに言う。
「元々は、お前の監視も兼ねてたんだ愛慈は。男女の事はわかんねーが、こいつのだらし無さが招いた結果だ。兄貴として俺からも詫びる。だが…」
「星華、お前店の子散々してくれたな?愛慈に気が逸れてて最近は大人しかったから見逃したが、お嬢に手ぇ出したのが悪かったな。」
「なによッ!アンタ達、お父さんから私を頼まれてるんでしょ!!!偉そうに何が出来るってゆうのよ。」
「はぁ…星華。」
「愛慈くん、なによ、、」
「預かってんのは間違いねぇが、お前が思ってんのと立場が逆だよ。」
「はァ!?」
「俺がゆうのも何だけど…、家族だろ。今日は帰ってやんな。明日からは大変だろうから。」
中々入ってこない天音達の様子見にぞろぞろと家から出てきた組の者達と、天音の祖父。
その迫力に押されて星華は腰が抜けたが、地面を這うようにしてボディガードを叩き起こして逃げ帰って行った。
真っ青な表情は何かを悟ったようで、その通り翌朝のニュースでは箕島議員の不正、売春、横領、その他様々な悪事が証拠共に告発されたと報道され、
ひどくやつれた星華の父の会見が一日中映っていた。
手を回したのも、証拠を確保したのも天音の父、利仁だ。
圧力をかけて大金叩いたが彼にとってお金も労力も些細な事で、
天音や藤堂に触るとどうなるか、他の者達への見せしめでもある。
「もしもし…利仁さん。」
「何だ。珍しいな。」
「お手数をおかけしました。結局助けて貰う形になって…」
「あー。お前なりにケジメつけてきたって聞いたけど?」
「それでも、話の通じる相手じゃなかったんで。」
「俺も愛娘、拐われてるからね。」
「ありがとうございました。」
「….ウチ継げよ?天音食わしてかなきゃいけねーし親父は天音にそっちやるつもりだろう。後継困ってんのよ。」
「そ、それは俺が利仁さん達に認めて貰えるようになったら…。」
「そっちも見ながら、ちゃんといい仕事してるよ。」
「褒めるなんて、珍しいですね。」
「気まぐれだよ。…天音、泣かせんなよ。」
「はい。絶対に幸せにします。」
「気が早えーよ。ちゃんと口説いてきな。」
「ふっ、はい。」
「じゃあな。」
「はい。失礼します。」
「ーーーーーー。」
「!…え、あ、りひ…」
電話を握りしめて、潤んだ瞳をギュッと閉じた愛慈は自らの両頬を叩いて「よし!」と気合を入れた。
(天音とどうなっても、お前はもうずっと俺の息子だからな)
(なんだよ、利仁さん。俺親父と利仁さんにしかそんな事言われたことねーよ。家族ってこんなにあったかいもんなんだな。)
「でも、お嬢とどうなってもって事はナイ!どうにかなるから!」
「愛慈?なに?なんか言った?」
「っわ!お嬢なんで!?」
「ご飯だよって言いに来たんだけど…」
「すぐ行きます。」
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