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初めての買い物
しおりを挟む初めて、自分で街に出て天音は驚いていた。
「わあ!これ凄く安いのね!可愛い!!」
「ほんと!色違いで買っちゃう?」
二人は買い物を楽しんで、着替えもした。
「天音、ミニ初めてなの?」
「そうなの…若い内に一度は履いてみたくて….」
薄いグレーのチェック柄のタイトスカートにピンクの薄手のニットをオーバーサイズでインして足元は短めのブーツを履いた天音はいつもの落ち着いた大人っぽい雰囲気のままだが、その服装のおかげで、可愛さを溢れさせていた。
二人が門の前で、先に愛慈を待っていると。
黒のポルシェが止まって、愛慈だとわかった途端に、車が勢いよく開き、天音の格好を見て固まった。
「お嬢…その格好は?」
「休講になったので、買い物に付き合って貰ったんです!愛慈さんからお釣り頂いたので、」ニコリ
にこりと笑って天音の沢山の紙袋を愛慈に手渡した。
愛慈は天音から目を離さないまま、
「ああ、そう。次からはちゃんと先に連絡するように。」
「はい、すみません。…どうですか?、」
「は?」
「天音ですよ~、」ニヤニヤ
「あの…愛慈を驚かせたくって。いつも選んで貰ってるから、自分で選んでみたの。…似合うかな?」
天音がおずおずと話し始めると、にこやかに愛慈は言う。
「ええ。似合ってますよ。」
(うわ、ずるい。これは怒れなくなるでしょ)
「よかったぁ!」 「でも…短いのは外ではダメです。」
すると、ヒソヒソと声が聞こえてきた。
「え?藤堂さんのミニスカって初めてみたよな、」
「可愛くね?うわ~めっちゃいいわ~!」
「でもよ、あの人いつも居ね?お兄さんかな?」
「え、彼氏じゃねえの?」
「居ないらしいぜ。いかにも年上だし兄じゃん?」
「でも、あんなに兄とベッタリだと引くわ、」
「確かに、可愛いけど彼氏はできねーよなー」
「ブラコンかぁー残念ー。」
愛慈は内心かなり満足していた。
(そうそう。兄っつーのはムカつくけど…お嬢は俺にベッタリなの。お前らごときで満足させられるかっつーの)
だが、天音はショックを受けていた。
大学では、普通にいろんな事を経験して、友達を作ったり、恋をしたかった。
(やっぱり、愛慈に頼ってばかりじゃだめね…)
「と、とりあえず。せっかくだからデートしてきたらどうですか?」ニヤニヤ
(なんか気づいてんな…)
「お嬢さえよければ、俺は喜んで。」
「へ?あ、勿論、愛慈の為に着替えたんだもん、どこか寄ってこうよ。」
(愛慈の為に………なんて素晴らしい響きっ)
「咲は?どうするの…?」
「私は心配しないで下さい。陽翔先輩と約束があるので」
「あ、そうだったの!?きゃ~、楽しんできてね!」
「へぇー、じゃあ、遠慮なく。」ニコリ
助手席を開け天音を座らせてからシートベルトをしてやり、扉を閉めて運転席へ戻って、後ろからブランケットを天音の膝にかけたのをみて、咲はキャ~♡と目を輝かせて見送った。
「お嬢、飯にはまだ早いし…どこ行きたい?」
「えっと…映画、とか?」
「わかりました」
優しく微笑んで、映画館へ向かう。
「わぁ、あんまり人居ないね…」
「平日のまだ昼過ぎですからね、」
「あ、席見つけた。」
嬉しそうに先に座って自慢げな顔をする天音に、思わず吹き出してしまう愛慈も、飲み物とポップコーンを置いて座った。
映画が始まると、初めは落ち着かない様子だった天音も真剣に映画を見始めた。
天音は愛慈にもたれ掛かるように映画を見ており、ポップコーンを摘んで唇に当ててやると、天音は当たり前のように愛慈の手からそのままパクリと食べてしまう。
その微かに当たる柔らかい唇の感触に悶えていると、
--パクリ
集中しすぎてポップコーンを押し込んだ愛慈の人差し指先ごと食べてしまい、離す訳でもなくそのままボーッとスクリーンを眺めている。
悪戯心が刺激された愛慈はそのそのまま前歯をこじ開けてなぞる、恥ずかしがって怒る天音の姿を想像していた愛慈は、天音がその指を軽く何度か甘噛みするその仕草に全身に電撃が走ったような甘く痺れる感じがして焦って手を引っ込めた。
一方天音は映画に集中していて、全くなにも考えておらずただ映画のアクションシーンを真剣な眼差しで見ているだけだった。
(なんだ、無意識。びっくりしたぁ…)
愛慈はそっと天音のブランケットに手を潜らせ、太ももの間にてを挟むように滑らせた。
「ひゃ、愛慈、何っ?」
小声で訝しげに言う天音に、子猫ような雰囲気で愛慈は…
「お嬢、俺寒い。温めて?」
と、言うと困ったように愛慈の手を両手で包んでブランケットの中に入れる。
「こ、これでいいでしょ?」
「だめ。……ココの方があったかい。」
「……っくすぐったいよ、愛慈。」
スルリと太ももの間に手を持って行った愛慈を恨めしげに見て、
「くすぐったいから、じっとしててね」
と言ってすぐ許してしまう天音に複雑な気持ちになった。
(単純に意識されてないだけだろうな…)
ナルとか言う男に怒って抵抗していた天音を思い出して、自分の意識されていなさに肩を落とした。
その後も、真剣な天音の太ももを時々撫でてやると、愛慈の手を軽く叩いて無言の抵抗をした。
「愛慈、やめてってばほんとに。」
「俺の為のミニでしょ?」
「だからってそんな…っ」
天音の体温が上がってくるのを感じ、そっとスカートの中に近づけていくと、むわんと熱気を感じた。
(まさか感じて……る訳ないか。)
(ダメ。愛慈気づいてもうスカートの中だよ~)
勿論、天音にはそんな事はわからないので、愛慈の妙な甘え方にドギマギしていた。
(なんか今日の愛慈、色っぽく感じる…まぁ彼女いるらしいし昔からずっと一緒だし変な事はしないだろうし気のせいかな…。)
しまいには愛慈に頭を預けて眠ってしまった天音を苦笑しながら起こす愛慈は、もういつもの愛慈だった。
(やっぱ気のせいか。)
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