上 下
3 / 24
アリス、不思議な世界に落ちる。

Ⅱ 事情説明とこれからの事

しおりを挟む
  あの後、騎士と魔法使いを下がらせた王女様――じゃなかった。普通に呼んで良いって言われたんだった。
 でね、エルティナさんと私達は、別の部屋に案内されて説明をしてもらってたんだよ。

 その話っていうのは、

 ・どうして私達が異世界に居るのか。
 ・あの人達に襲われたのは何でか。
 ・これから何をすればいいのか。

 っていう三点。

 大雑把に言うと、世界に歪みが生じて私達が落ちてきた……らしいんだけど、これだけじゃ分からないよね。

 そもそも、歪みが出来る理由は敵国の『リディアント王国』がマナを使い過ぎてるからなんだとか。
 マナっていうのは、空気中に存在する便利な生命エネルギー的な? それを戦争に使う武器で大量消費してるんだって。殆どの国は止めるように言ってるんだけど、『知るかボケ』みたいな感じでガン無視されてる。

 マナが無いと、世界を維持するのが難しくなって歪みが生じる。それが結果的にどこかの世界と繋がって、私達みたいに落ちてきちゃう。
 帰る方法は……今のところ無いみたい。
 あ、ゲームキャラでここに来た理由は不明ね。

 次は襲われた理由。
 騎士団長さんが短気っていうのはあるんだけど、僕達以外の異世界人がやらかしてるから。殺人、強姦、強盗……並べて行くとただの危険人物だね!
 ま、そういう訳で、異世界人の私達がこそこそしてたから『何か企んでいるのか!?』って襲われたんだって。特に、騎士団長の奥さんは異世界人に殺されたから……気の毒ではあるけど、斬りかかって来るのは勘弁して。

 三つ目、これから何をするのか?

「アリス様と」

「様は付けなくてもいいよ?」

「私も大丈夫よ。王女のエルティナを呼び捨てにしておいて、こっちには様付けなんておかしいじゃない」

「ねー♪」

 ホントにそうだよ。
 私はほら、この体だと歳下だからさん付けで呼ぶけど、王女様だからさん付けでも足りないくらいだと思うし。

「では、アリスにフィリスさんとお呼びしますね」

「はーい」

「分かったわ」

 口調は素なんだろうねー。
 こう、様になってるというか、品があって違和感を覚えないみたいな。つい見惚れちゃったのは仕方ないと思うんだ。

「お二人には、姫将学園に通って頂きたいと思っています」

「「きしょう?」」

「姫に将軍の将と書いて姫将と読みます」

「す、凄い名前ね……」

「どんな付け方をしたらそうなるの……?」

 女の子が将軍になるみたいな?

「姫に紋章の章と書く、一部の女性にのみ現れる〝能力を持つ証〟が元になっているんです」

 そう言って首の横を見せるエルティナさん。
 羽、かな? 桃色の羽が描かれてる。刺青、じゃないよね……?

 なんて思っていると、冗談を口にするような声音でこんな事を言う。そのものだろうけどさ。

「私は先天性でしたけど……後天性の場合も稀にありますし、お二人にもあるかもしれませんね?」

 へぇー、そうなんだ。とよく分からずに見える範囲を調べてみる。あ、胸とか普通に見える……! そっか、ゲームじゃないから制限なんて無いもんね! 
 自分の体だけど、なんか変な気分になりそう。

 姫章はやっぱり見つからないねー。
 ……はっ!? こ、これは確認、そう、確認のためだから、下を見てもいいでしょ? そっと、そーっと。

「「……………あった!」」

「え? ……あ、ありました?」

「ええ、ここに」

 フィリスは太ももという際どい所。いや、私の方が際どいですね。だって……

「こんな所にあったよ」

 と言ってへそのかなり下を指す。淫紋かな……? そう思われても仕方ないような位置。女の子相手でも見せるのは恥ずかしいよ。むしろ、女の子だからかも。

「お二人とも、なんて……」

「え、これって驚く程凄いの?」

 私が首を傾げると、エルティナは頷く。

「この国の人口はおよそ12億7000万人。姫章を持つのは、その中で3000人ほどですから。他国も含めればまだまだいらっしゃいますけど……」

「この国の人口が凄い……それでも3000人かぁ。42万分の1くらいってことだよね」

「はい。さらに、桃色は特待生として優遇されていますね。姫将学園にも15名いらっしゃいますよ」

「ん? これってみんな同じじゃないんだ?」

「……エルティナも同じ色よね」

「私も姫将学園の生徒ですから」

 ああ、てことは、さっき床を壊したのってエルティナさんなんだ。少なくとも、あれが出来るくらいには強いって……半端ないっす!

((絶対怒らせないようにしよう……))

 その時、二人の心は重なった。

「あの……どうして後ろに下がるんですか?」

 ゆっくりとソファーに戻ろうとしていた私達は、そんな風に聞かれてビクッとしてしまった。

「そ、その、王女様だし、近付かれるのは嫌かなって」

「そ、そうよね、私達は一般人だもの!」

「そんなことありませんよ? 私、友人があまり多くないので、気軽にお話出来る方っていいなぁと思っていたんです。是非、こちらでお話しましょう!」

 ポンポンと両脇を叩くエルティナさん。
 テーブル挟むと遠いもんね、分からなくはないよ。でも、私は一応男……なんだよ? たぶん。今となってはどういう扱いなのか分からないけど。

 ともかく、エルティナさんの隣に座ると、「ふふっ」と笑っている様子が見えて安心した。良く考えてみれば、あの状況でも誰一人(私を除いて)怪我をしてなかったんだから、エルティナさんが優しいのは疑いようもない。

「あ、そうでした。これをお渡ししようと思っていたんです」

 取り出したのは黒くて細いブレスレット。……じゃない。触ってみた感じ、機械だこれ。

「どちらの手でもお好きな方に付けて頂いて……ちゃんと出ましたね。それは全国民に無償で配られる情報管理端末、〝ユニオン〟」

 誰がその名前考えたのかな。……付けたらゲームのメニューみたいなのが出てきた。個人情報の欄には所持金、性別、年齢とかがあって、経歴まで――経歴!?

 現実の方の私じゃんこの経歴!
 最近の所まで来て、

『現実の体とゲームのキャラクターが世界の歪みに落下。再構成の際、VR機器に繋がれたままだった脳が誤認識。―――(男)、はアリス・ファンシア(女)、に再構成された。
 二つあった体の内一つは消滅しかけたが、アリス・ファンシアと一致する情報が多かったため、合成。その結果、特異な能力を得ることとなった』

「「ちょっと何言ってるか分からない」」

「?」

 ハモった。そりゃハモるよ、訳わかんないもん。
 ついでにエルティナさんにも見せてあげると、私が元男ってところでびっくりしてた。

「だから距離が遠いんですね……」

「あれれ、バレてた?」

「バレバレでした。でも、今は女の子じゃないですか! そういう事なら遠慮しませんよ――えいっ♪」

「ちょっ!? な、何で抱きつくの……?」

「こんな妹が欲しいなぁって、昔からずっと思ってましたからぁ~……ふふっ」

 凄く、楽しそうですね。
 一応、中身は男……? だと思うんだけどなぁ。うぅ、柔らかくていい匂いで、とにかくありがとうございますっ!

 あ、ちょっと待って?

「こちょこちょはらめぇぇ――――――――っ!!!」

 この後、いっぱいこちょこちょされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...