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2.イレーネの告白
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今は薄暗くなってきたところ。
こんな時間に寝間着姿のわたしたちが歩いているのは不思議でしょうがないんだろう。好奇の目に晒されるのは諦めるしかない。
まあ、レネは全然気にしてないみたいだけど。
「ねぇ、さっきの男から何か取ってなかった?」
「うん、ちょっとお金をね」
「……それって、大丈夫なの?」
「えー、知らないのー? バレなきゃ犯罪じゃないんですよ――っていう名言を」
「酷い迷言ね……」
「じゃあ、レネは捕まっちゃう?」
「素晴らしい名言ねっ」
はい、そうですね。
貰ってきたのはいいとして、2万コルしか入ってなかったから早く仕事を探さないといけない。
通貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順に100枚で繰り上がる。白金貨は大きな買い物をする時くらいしか使わないらしいよ。
「うぅ……寒いね……」
「そうかも……て、手でも繋ぐ……?」
「ん……あ、レネの手あったかい……」
揃って少し赤くなりながら手をにぎにぎする。柔らかくて、すべすべで、何よりレネの体温を近くに感じられて落ち着く。
ひとりじゃないって素晴らしい。
「……あのお店、まだやってるみたいよ」
「じゃあ行ってみよっか。えっと、今の手持ちだと安い服しか買えないけどいい?」
「私、こんな時に贅沢言ったりしないからね?」
そうなんだ。話し方的にいいとこのお嬢様なのかなって思ってた。
この服屋は古着が多い様子。
暖かそうなのはある。可愛くないのは仕方ないね。洗濯出来るように着替えも買って合計1200コル。古着が安くて助かりました。
……下着が売ってないのは当然かな。
「すみません、安くて安全な宿はありませんか?」
「それなら――」
ついでに宿屋を聞いてみた。
伯爵家とは違う方向にあるそうなのでそこにする。レネはよく分からないから任せるって言ってたし、相当な箱入り娘だったのかも?
今度は普通の服だから目立たない……と思ったのに、レネは美少女でわたしは先祖返りだから結局見られてた。早く真っ暗になってしまえ!
「ここかな?」
「そうじゃない? ……こう言うとあれだけれど、酒場みたいなところなのね」
「全く同意見。凄いアルコール臭が……」
狐の嗅覚が良すぎる件。
色んなお酒の匂いのする。
入ってみるとやっぱり酒場。
大丈夫、可愛い女の子がエプロン付けて運んだりしてるし、わたしたちでも泊まれるはず。
あ、人が多いから暖かいね。
「いらっしゃいませー! お食事だけですか? それともお泊まりですか?」
「んと……とりあえず一泊お願い出来る?」
「お部屋は今、一人部屋と二人部屋が空いてますよ!」
元気いっぱいでこっちも笑顔になるね。
それにしても、一人部屋と二人部屋……普通に考えるなら一人部屋を二つなんだけど、値段的には二人部屋の方が安いし、どっちにしようか迷っちゃう。
「レネはどっちがいい?」
「一人部屋をひと部屋っていうのはどうなのかしら」
「その場合はおひとり分の料金と、お食事分のみで大丈夫ですよー! ベッドが狭くなっちゃいますけどね?」
「――だって。私はそれがいいわ。……もちろん、シャルが良ければ、だけれど……」
顎を引いてるからレネの方が身長は高いのに、上目遣いになっていてドキッとした。これはもう、断れるはずがないじゃないですか。
「うん、一人部屋にしよ」
そう言って1500コルを支払う。
安くていいね……地味に古着が高いってことでもあるけど。むむ、そっか、この服でもまだいい方なんだ。少しショックかも。
「お部屋にご案内しまーす」
2階の端っこにある部屋に案内された。
ご飯は部屋でも食べられるそうなので、持ってきてもらうことに。久しぶりの運動はちょっと疲れたしね。
「安いのに汚くないね」
「? 仮にも宿屋なんだから当然じゃないの?」
「それがそうでも無いんだって」
ベッドに並んで座りながら、ここが良心的な宿であるという話をする。やっぱり寒いからと段々二人の距離が狭まっていき、肩が触れ合う距離まで近づいていた。
「お待たせしました~!」
「「あ、どうも……」」
ご飯が来たから少し離れたけれど、やっぱりチラチラとお互いのことを見てしまう。
あ、もしかして……
先に食べ終わったレネが、後ろから手を回してくる。脱がしていくレネに抵抗することなくご飯を食べ切ると、肌を撫でる手に自分の手を重ねた。
「わたしたち、ちょっと酔ってるのかも」
「ええ……私もそう思ってたところ」
苦笑しながら振り向き、レネの服も脱がす。
匂いを嗅いだだけでも酔うって相当だと思うよ。正直、わたしは酔ってない。レネに触られるのはただのご褒美だから逆らわなかっただけ。
でも、レネが赤くなってるのは酔っているからなのか、それともこの先のことを考えているのか。
「は、裸はさすがに寒いね?」
「それなら温め合えばいいと思うの」
「え? それって、そういう……?」
「裸で抱き合いましょう」
これは酔ってるな、と抱きしめられながら思う。そのまま横になるけれど、レネの柔らかさに包まれてドキドキしてきた。
「シャル……ありがとう」
「へ?」
「助けてくれたこと、まだお礼も言ってなかったから」
「ん、どういたしまして」
ぎゅっと抱きしめられると、程よい大きさのおっぱいがわたしに押し付けられて形を変える。そんなにくっつかれたら、わたしのドキドキが伝わっちゃうんじゃないかって不安で……けど、レネみたいな女の子と抱き合ってドキドキしないなんて無理。
「シャル……こうされるの、嬉しい?」
「え、う、うん。嬉しいよ……」
「そうなの……」
何故か頭を撫でられ、緩やかに無言の時間が過ぎていく。それは、レネの鼓動すらも感じられるほどで……彼女も緊張しているのだと、気づいてしまった。
「あの、シャル……」
レネが震える声でわたしを呼ぶ。
「わたしのこと、貰ってくれない……?」
なるほど、そんなことを言うつもりだったなら声が震えてても仕方な――えっ!?
「いや、えっと……どういう意味で?」
「心も、体も、全部」
「あ、あの場所がそんなに辛かったの? 大丈夫だよ、わたしが一緒に居てあげるから。だから、ね?」
「私を貰っても迷惑?」
「そんなことないよ!」
反射的に大声を出してしまった。
迷惑なはずがないから。少し一緒に居ただけだけど、友達が出来たと喜んで、手を繋ぎたがるほど人懐っこくて、そして怖がりで、わたしが困っていることも分かってくれて、その上わたしを優先してくれて……うん、いい子。
「よかった。じゃあ……貰ってくれるわよね?」
「い、嫌じゃないけど……急にどうしたの?」
「別に急じゃないわ。ずっと、考えていたの」
頭を撫でていた手が体に回る。
くすぐったくて足を動かしていると、レネの足がわたしの足を挟んで捕まえてくる。ぎゅっと、逃がさないとばかりに。
「私、帰るところも無ければ、自分で生きる力も無いの……そして、シャルだけが私を守ってくれる。なのに、私は何も返せない。強くもない、家事も出来ない、全然何も……」
「ううん、一緒に居られるだけでもわたしは嬉しいよ? 寂しくないし、こんなにあったかいから」
「シャルは優しいわね……でも、だめよ。何もせずに養われるなんて、シャルだったら受け入れられる?」
え? う、うーん……さすがにそれは。
罪悪感とか無力感とかで押しつぶされそう。
そう思ったわたしの顔を見て、
「そういうこと。だから私、何を返せるか考えた。考えた結果、私の持っているものは自分だけだったの」
「そ、そこまでしなくても少しづつ返して貰えれば……」
「シャル、あなたは私が無理をしていると思っているようだけれど、全然そんな事ないのよ? むしろ、これは私にとって都合のいい話になってしまうかもしれない」
「?」
どういうこと?
もう汚されちゃったからどうでもいい、とかそういう事を言ってるわけじゃないよね。顔は照れくさそうな感じだし。
「実はね、私、人に触ったり、触られたりするのが嫌いなの。所謂潔癖症とは違うのだけれど……」
「えっ!? じゃあ、わたしとこうしてるのも嫌々ってこと? なら離れた方が――」
「待って待って! 私から誘ったのにそんなはずないでしょ?」
「だ、だって、レネが……」
「話を最後まで聞いて」
はい、ごめんなさい。
でもよかった……わたしは例外ってことでいいんだよね? こうしていられるのもわたしだけなんでしょー? えへへー。すっごく嬉しい!
「シャルとこうして居られるのは嫌じゃない、というか嬉しいの。私、あなたの事が好きだから。実は一目惚れでね? 外を見ている時に飛び降りてきたあなたが凄く綺麗で、助けて欲しいと思うよりもあなたと話したくて声をかけたの。それにね――」
「ちょ、ちょっとレネ!? 好きって、一目惚れって……? というかなんでそんなに一気に言うんでしょうか!?」
「……だ、だって、こうでもして一気に言わないと恥ずかしくて仕方ないんだもの……」
あ、その顔可愛い……じゃなくて。
キュン死しそうなほど可愛いけど、わたしを好きって言ったよね? 今の言い方はlikeじゃなくてLoveの方。なにそれ? いいの?
「や、やっぱり、女の子同士は嫌……?」
「ううん、嫌じゃないよ。レネがわたしを好きって言ってくれるなんて思ってなかった。これは、返事とか、した方がいい……?」
「お、お願いします……」
断る理由があるのか考えてみる。
性格、そこまで知らないけどさっきも言った通りいい子。容姿、どう考えても超絶美少女。アイドルとかモデルさんとかを並べたら可哀想になってくるくらいに。
お金とかは、まあ、わたしがなんとかするっていう話をしたばっかりだし……いいんじゃないでしょうか。付き合っても。
こんなに可愛いんだよ?
わたしのこと、好きって言ってくれたんだよ?
逆になんで断れるの?
こんな、潤んだ目で見つめられたら……
「……ちゅっ」
「……え? 今、キス……」
「うん……これが答え、でいい?」
「あ……嬉しい……」
レネの手がわたしの頬に添えられ、深いキスをされる。……って、冷静に考えてる場合じゃないよ!? し、舌がにゅるって……やば、気持ちいい……唾液とか、舌とか、吐息とか、色々絡み合って蕩けそう……
「えへへ……気持ちいい……」
もう一回、ちゅーしたい……
……レネさん? 下半身を触ってるのはそういう……?
「レネ、だめだよ……」
「ご、ごめんなさいっ……そうよね、いきなりこんなこと、ダメに決まってるわよね……」
「違くてね、明日も色々あるだろうから疲れちゃうと良くないかなって思って」
「……そうね、完全に忘れていたわ」
わたしも忘れてたからお互い様。
「えと……大丈夫になったら、いっぱいしたいな……」
「っ……シャルっ!」
「きゃっ!?」
この後、いっぱいちゅーされた。
というか、され過ぎて蕩けました。
こんな時間に寝間着姿のわたしたちが歩いているのは不思議でしょうがないんだろう。好奇の目に晒されるのは諦めるしかない。
まあ、レネは全然気にしてないみたいだけど。
「ねぇ、さっきの男から何か取ってなかった?」
「うん、ちょっとお金をね」
「……それって、大丈夫なの?」
「えー、知らないのー? バレなきゃ犯罪じゃないんですよ――っていう名言を」
「酷い迷言ね……」
「じゃあ、レネは捕まっちゃう?」
「素晴らしい名言ねっ」
はい、そうですね。
貰ってきたのはいいとして、2万コルしか入ってなかったから早く仕事を探さないといけない。
通貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の順に100枚で繰り上がる。白金貨は大きな買い物をする時くらいしか使わないらしいよ。
「うぅ……寒いね……」
「そうかも……て、手でも繋ぐ……?」
「ん……あ、レネの手あったかい……」
揃って少し赤くなりながら手をにぎにぎする。柔らかくて、すべすべで、何よりレネの体温を近くに感じられて落ち着く。
ひとりじゃないって素晴らしい。
「……あのお店、まだやってるみたいよ」
「じゃあ行ってみよっか。えっと、今の手持ちだと安い服しか買えないけどいい?」
「私、こんな時に贅沢言ったりしないからね?」
そうなんだ。話し方的にいいとこのお嬢様なのかなって思ってた。
この服屋は古着が多い様子。
暖かそうなのはある。可愛くないのは仕方ないね。洗濯出来るように着替えも買って合計1200コル。古着が安くて助かりました。
……下着が売ってないのは当然かな。
「すみません、安くて安全な宿はありませんか?」
「それなら――」
ついでに宿屋を聞いてみた。
伯爵家とは違う方向にあるそうなのでそこにする。レネはよく分からないから任せるって言ってたし、相当な箱入り娘だったのかも?
今度は普通の服だから目立たない……と思ったのに、レネは美少女でわたしは先祖返りだから結局見られてた。早く真っ暗になってしまえ!
「ここかな?」
「そうじゃない? ……こう言うとあれだけれど、酒場みたいなところなのね」
「全く同意見。凄いアルコール臭が……」
狐の嗅覚が良すぎる件。
色んなお酒の匂いのする。
入ってみるとやっぱり酒場。
大丈夫、可愛い女の子がエプロン付けて運んだりしてるし、わたしたちでも泊まれるはず。
あ、人が多いから暖かいね。
「いらっしゃいませー! お食事だけですか? それともお泊まりですか?」
「んと……とりあえず一泊お願い出来る?」
「お部屋は今、一人部屋と二人部屋が空いてますよ!」
元気いっぱいでこっちも笑顔になるね。
それにしても、一人部屋と二人部屋……普通に考えるなら一人部屋を二つなんだけど、値段的には二人部屋の方が安いし、どっちにしようか迷っちゃう。
「レネはどっちがいい?」
「一人部屋をひと部屋っていうのはどうなのかしら」
「その場合はおひとり分の料金と、お食事分のみで大丈夫ですよー! ベッドが狭くなっちゃいますけどね?」
「――だって。私はそれがいいわ。……もちろん、シャルが良ければ、だけれど……」
顎を引いてるからレネの方が身長は高いのに、上目遣いになっていてドキッとした。これはもう、断れるはずがないじゃないですか。
「うん、一人部屋にしよ」
そう言って1500コルを支払う。
安くていいね……地味に古着が高いってことでもあるけど。むむ、そっか、この服でもまだいい方なんだ。少しショックかも。
「お部屋にご案内しまーす」
2階の端っこにある部屋に案内された。
ご飯は部屋でも食べられるそうなので、持ってきてもらうことに。久しぶりの運動はちょっと疲れたしね。
「安いのに汚くないね」
「? 仮にも宿屋なんだから当然じゃないの?」
「それがそうでも無いんだって」
ベッドに並んで座りながら、ここが良心的な宿であるという話をする。やっぱり寒いからと段々二人の距離が狭まっていき、肩が触れ合う距離まで近づいていた。
「お待たせしました~!」
「「あ、どうも……」」
ご飯が来たから少し離れたけれど、やっぱりチラチラとお互いのことを見てしまう。
あ、もしかして……
先に食べ終わったレネが、後ろから手を回してくる。脱がしていくレネに抵抗することなくご飯を食べ切ると、肌を撫でる手に自分の手を重ねた。
「わたしたち、ちょっと酔ってるのかも」
「ええ……私もそう思ってたところ」
苦笑しながら振り向き、レネの服も脱がす。
匂いを嗅いだだけでも酔うって相当だと思うよ。正直、わたしは酔ってない。レネに触られるのはただのご褒美だから逆らわなかっただけ。
でも、レネが赤くなってるのは酔っているからなのか、それともこの先のことを考えているのか。
「は、裸はさすがに寒いね?」
「それなら温め合えばいいと思うの」
「え? それって、そういう……?」
「裸で抱き合いましょう」
これは酔ってるな、と抱きしめられながら思う。そのまま横になるけれど、レネの柔らかさに包まれてドキドキしてきた。
「シャル……ありがとう」
「へ?」
「助けてくれたこと、まだお礼も言ってなかったから」
「ん、どういたしまして」
ぎゅっと抱きしめられると、程よい大きさのおっぱいがわたしに押し付けられて形を変える。そんなにくっつかれたら、わたしのドキドキが伝わっちゃうんじゃないかって不安で……けど、レネみたいな女の子と抱き合ってドキドキしないなんて無理。
「シャル……こうされるの、嬉しい?」
「え、う、うん。嬉しいよ……」
「そうなの……」
何故か頭を撫でられ、緩やかに無言の時間が過ぎていく。それは、レネの鼓動すらも感じられるほどで……彼女も緊張しているのだと、気づいてしまった。
「あの、シャル……」
レネが震える声でわたしを呼ぶ。
「わたしのこと、貰ってくれない……?」
なるほど、そんなことを言うつもりだったなら声が震えてても仕方な――えっ!?
「いや、えっと……どういう意味で?」
「心も、体も、全部」
「あ、あの場所がそんなに辛かったの? 大丈夫だよ、わたしが一緒に居てあげるから。だから、ね?」
「私を貰っても迷惑?」
「そんなことないよ!」
反射的に大声を出してしまった。
迷惑なはずがないから。少し一緒に居ただけだけど、友達が出来たと喜んで、手を繋ぎたがるほど人懐っこくて、そして怖がりで、わたしが困っていることも分かってくれて、その上わたしを優先してくれて……うん、いい子。
「よかった。じゃあ……貰ってくれるわよね?」
「い、嫌じゃないけど……急にどうしたの?」
「別に急じゃないわ。ずっと、考えていたの」
頭を撫でていた手が体に回る。
くすぐったくて足を動かしていると、レネの足がわたしの足を挟んで捕まえてくる。ぎゅっと、逃がさないとばかりに。
「私、帰るところも無ければ、自分で生きる力も無いの……そして、シャルだけが私を守ってくれる。なのに、私は何も返せない。強くもない、家事も出来ない、全然何も……」
「ううん、一緒に居られるだけでもわたしは嬉しいよ? 寂しくないし、こんなにあったかいから」
「シャルは優しいわね……でも、だめよ。何もせずに養われるなんて、シャルだったら受け入れられる?」
え? う、うーん……さすがにそれは。
罪悪感とか無力感とかで押しつぶされそう。
そう思ったわたしの顔を見て、
「そういうこと。だから私、何を返せるか考えた。考えた結果、私の持っているものは自分だけだったの」
「そ、そこまでしなくても少しづつ返して貰えれば……」
「シャル、あなたは私が無理をしていると思っているようだけれど、全然そんな事ないのよ? むしろ、これは私にとって都合のいい話になってしまうかもしれない」
「?」
どういうこと?
もう汚されちゃったからどうでもいい、とかそういう事を言ってるわけじゃないよね。顔は照れくさそうな感じだし。
「実はね、私、人に触ったり、触られたりするのが嫌いなの。所謂潔癖症とは違うのだけれど……」
「えっ!? じゃあ、わたしとこうしてるのも嫌々ってこと? なら離れた方が――」
「待って待って! 私から誘ったのにそんなはずないでしょ?」
「だ、だって、レネが……」
「話を最後まで聞いて」
はい、ごめんなさい。
でもよかった……わたしは例外ってことでいいんだよね? こうしていられるのもわたしだけなんでしょー? えへへー。すっごく嬉しい!
「シャルとこうして居られるのは嫌じゃない、というか嬉しいの。私、あなたの事が好きだから。実は一目惚れでね? 外を見ている時に飛び降りてきたあなたが凄く綺麗で、助けて欲しいと思うよりもあなたと話したくて声をかけたの。それにね――」
「ちょ、ちょっとレネ!? 好きって、一目惚れって……? というかなんでそんなに一気に言うんでしょうか!?」
「……だ、だって、こうでもして一気に言わないと恥ずかしくて仕方ないんだもの……」
あ、その顔可愛い……じゃなくて。
キュン死しそうなほど可愛いけど、わたしを好きって言ったよね? 今の言い方はlikeじゃなくてLoveの方。なにそれ? いいの?
「や、やっぱり、女の子同士は嫌……?」
「ううん、嫌じゃないよ。レネがわたしを好きって言ってくれるなんて思ってなかった。これは、返事とか、した方がいい……?」
「お、お願いします……」
断る理由があるのか考えてみる。
性格、そこまで知らないけどさっきも言った通りいい子。容姿、どう考えても超絶美少女。アイドルとかモデルさんとかを並べたら可哀想になってくるくらいに。
お金とかは、まあ、わたしがなんとかするっていう話をしたばっかりだし……いいんじゃないでしょうか。付き合っても。
こんなに可愛いんだよ?
わたしのこと、好きって言ってくれたんだよ?
逆になんで断れるの?
こんな、潤んだ目で見つめられたら……
「……ちゅっ」
「……え? 今、キス……」
「うん……これが答え、でいい?」
「あ……嬉しい……」
レネの手がわたしの頬に添えられ、深いキスをされる。……って、冷静に考えてる場合じゃないよ!? し、舌がにゅるって……やば、気持ちいい……唾液とか、舌とか、吐息とか、色々絡み合って蕩けそう……
「えへへ……気持ちいい……」
もう一回、ちゅーしたい……
……レネさん? 下半身を触ってるのはそういう……?
「レネ、だめだよ……」
「ご、ごめんなさいっ……そうよね、いきなりこんなこと、ダメに決まってるわよね……」
「違くてね、明日も色々あるだろうから疲れちゃうと良くないかなって思って」
「……そうね、完全に忘れていたわ」
わたしも忘れてたからお互い様。
「えと……大丈夫になったら、いっぱいしたいな……」
「っ……シャルっ!」
「きゃっ!?」
この後、いっぱいちゅーされた。
というか、され過ぎて蕩けました。
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