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三章
おおかみ宿舎でいただきます<ー完ー>
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私達が話し合い、一番気になったこと……それは青龍が私を『次の青龍』と言ったことだろうか?
椿木さんに言わせれば、私には聖獣としての能力は欠片も見えないのだそうだ。
椿木さんのような聖獣の上に君臨する麒麟からすれば、聖獣同士のいがみ合いは今に始まったことではないらしい。
特に「龍虎」という言葉があるように、強大な力を持ったライバル関係にある青龍と白虎は取り分け仲が悪い。
「くだらないよねぇ」
椿木さんは眠そうな目をして、ついでに言えば欠伸までしていた。
食堂で椿木さんに話を聞いてもらい、調べてもらったけれど、私には白虎の能力も青龍の能力もなかった。
「じゃあ、何故、青龍は私を?」
「んー……もしかすると、聖獣の樹が青龍の方でも、芽吹いていたんじゃないかな?」
「麻乃が生まれてから芽吹いた苗木か……しかし、あれは麻乃の苗木なのかどうかも分からないからな……」
スイと隣り合わせで座り、私もうーんと唸りながら首をひねる。
実際、青龍のいる場所で調べるのが早い……とは思う。が、それは自殺行為というもので、深海の奥深くに身を隠している青龍に私たちが会いに行くことはほぼ不可能。
宇宙に行く方がまだ現実的な話だ。
「椿木はどうにかできないのか? 麒麟なのだし」
「僕に無茶させないでよ。それに青龍には、反省するまで自分のテリトリーから出ないように言ってるしね。まぁ、青龍は水に干渉できるから、色んなところに目は持っているだろうけどね」
「「!?」」
ふぁーっと欠伸をして、椿木さんは「ここは大丈夫だって。僕が居るんだし」と、私とスイの言わんとすることを先に一蹴してしまう。
「私が子供の頃から、人から見えなくなっていたのは、青龍が近くで色々しようとしていたからだと思っていましたけど、水に干渉できる能力があるからこそだったのね」
「青龍はね。自分以外の青龍が生まれては困るのさ。四聖獣は次の世代が生まれれば、能力を奪われてしまうからね」
「ならば、星夜の力は……どこに」
椿木さんは厨房の奥を指さす。
その先にあるのは、棚に隠された地下の扉……苗木のある場所だ。
父の能力は苗木の中にある……?
「これは内緒だよ? 聖獣の樹は能力の受け渡しの為の物だからね。あの小さな苗木はいつか生まれる白虎の為の苗木なんだよ。そして、麻乃が生まれた時に生えてきたのなら、麻乃は次の白虎を生む為の母体。青龍の方でも苗木があるとしたら、麻乃は青龍を生む母体でもあるのかもね?」
「ぼ、ぼぼ母体!?」
驚きすぎて、どもってしまったけれど、確かに……白虎と父と青龍の血筋の母から生まれた私ならば、そういったことも可能かもしれない。
「ああ、でも、確実じゃないよ。聖獣が生まれるのは何百年も掛かったりする時もあるから、麻乃の孫やひ孫という事もあるってだけ」
「なるほど」
「麻乃の子供か……」
隣のスイが私をまじまじと見て、目線が私のお腹に向かう。
私はお腹を両手で隠して「わーっ!!」と大声を上げれば、食堂に二階堂さんや安寿達のいつものメンバーが「どうかしたのか?」と不思議そうに顔をのぞかせた。
「なんでもありませーん!」
「ふーん?」
「マノ、お腹すいたー! キュウリー!」
「おやつ無いの?」
「お菓子! お菓子!」
賑やかなメンバーの声に、私は少し笑って、腰に手を当て椅子から立ち上がる。
「もう。わかりました。美味しい物を作ろうじゃないですか!」
今は、青龍が動けない状態ならば、色々考えても仕方がない。
私には私の出来る範囲の事をするしかないのだ。
もう、過去の記憶を取り戻してしまったのだから、向き合って受け入れて、妖としての『雛姫麻乃』として生きていく。
「オレも手伝おう」
「はい。スイが手伝ってくれるなら、いっぱい作れそう」
スイが着物の袖から襷を取り出すと襷掛けにして、私の後に続いて厨房へとやってくる。
手伝ってくれる気は満々のようだ。
私も厨房の壁に掛けているエプロンを手に取る。
「さて、今日も美味しい物作りといきましょうか!」
私は職場、厨房で元気に声を出し、卵と小麦粉に牛乳を片手に業務用の大きなボウルをスイに手渡す。
簡単なパンケーキ作りに「手抜きだ!」と食堂から声が上がるものの、「おやつは業務に含まれていません。サービスですからね?」と笑って返す。
スイが隣で「そういえば、朝と夕飯だけの話だったからな」と、今更の業務内容の確認にも私は笑う。
熱したフライパンにパンケーキの種を流して焼いて、白いお皿の上に載せ、バターとメープルシロップを出しておく。
各自が自分の分を持っていき、声を合わせる。
「いただきまーす!」
元気な声が宿舎に響き渡ると、いつの間にか、食堂に妖達が顔を覗かせて、私は厨房へ引っ込むと再びパンケーキを焼くために腕を振るう。
私、雛姫麻乃。
少し不思議な職場で、自分自身も不思議な生き物ではあるのだけれど、今日も元気に食堂の厨房で働いています。
おおかみ宿舎、本日も大賑わいの食堂です。
____麻乃の章・完_____
あとがき
後書きとか書く場所があれば良かったのですが、無いので……
まだ伏線回収できていませんが、キャラ文芸の大賞参加用の話ですので、長々と書くと収拾がつかない長編になりますので、一旦、ここで完結です。
(他のアルファポリス作家様達と「書いてみようー!」と、一緒に参加していましたので、ノリで書いておりました)
キャラ文芸の大賞では三位にランクインで終了致しましたが、皆様の投票のおかげでございます。
ありがとうございました!! キャラ文芸は初めて書いたので、勝手がわからず、キャラ文芸とは逸脱した恋愛小説になっていたような……すみません;;
また機会がありましたら、頑張らせていただければと思います。
もう一つのキャラ文芸の方を終了させるために、中途半端で申し訳ありません。時間が足りなかったので💦
時間がありましたら、色々書き足したり、話を膨らませて、最後まで書きたいです。
椿木さんに言わせれば、私には聖獣としての能力は欠片も見えないのだそうだ。
椿木さんのような聖獣の上に君臨する麒麟からすれば、聖獣同士のいがみ合いは今に始まったことではないらしい。
特に「龍虎」という言葉があるように、強大な力を持ったライバル関係にある青龍と白虎は取り分け仲が悪い。
「くだらないよねぇ」
椿木さんは眠そうな目をして、ついでに言えば欠伸までしていた。
食堂で椿木さんに話を聞いてもらい、調べてもらったけれど、私には白虎の能力も青龍の能力もなかった。
「じゃあ、何故、青龍は私を?」
「んー……もしかすると、聖獣の樹が青龍の方でも、芽吹いていたんじゃないかな?」
「麻乃が生まれてから芽吹いた苗木か……しかし、あれは麻乃の苗木なのかどうかも分からないからな……」
スイと隣り合わせで座り、私もうーんと唸りながら首をひねる。
実際、青龍のいる場所で調べるのが早い……とは思う。が、それは自殺行為というもので、深海の奥深くに身を隠している青龍に私たちが会いに行くことはほぼ不可能。
宇宙に行く方がまだ現実的な話だ。
「椿木はどうにかできないのか? 麒麟なのだし」
「僕に無茶させないでよ。それに青龍には、反省するまで自分のテリトリーから出ないように言ってるしね。まぁ、青龍は水に干渉できるから、色んなところに目は持っているだろうけどね」
「「!?」」
ふぁーっと欠伸をして、椿木さんは「ここは大丈夫だって。僕が居るんだし」と、私とスイの言わんとすることを先に一蹴してしまう。
「私が子供の頃から、人から見えなくなっていたのは、青龍が近くで色々しようとしていたからだと思っていましたけど、水に干渉できる能力があるからこそだったのね」
「青龍はね。自分以外の青龍が生まれては困るのさ。四聖獣は次の世代が生まれれば、能力を奪われてしまうからね」
「ならば、星夜の力は……どこに」
椿木さんは厨房の奥を指さす。
その先にあるのは、棚に隠された地下の扉……苗木のある場所だ。
父の能力は苗木の中にある……?
「これは内緒だよ? 聖獣の樹は能力の受け渡しの為の物だからね。あの小さな苗木はいつか生まれる白虎の為の苗木なんだよ。そして、麻乃が生まれた時に生えてきたのなら、麻乃は次の白虎を生む為の母体。青龍の方でも苗木があるとしたら、麻乃は青龍を生む母体でもあるのかもね?」
「ぼ、ぼぼ母体!?」
驚きすぎて、どもってしまったけれど、確かに……白虎と父と青龍の血筋の母から生まれた私ならば、そういったことも可能かもしれない。
「ああ、でも、確実じゃないよ。聖獣が生まれるのは何百年も掛かったりする時もあるから、麻乃の孫やひ孫という事もあるってだけ」
「なるほど」
「麻乃の子供か……」
隣のスイが私をまじまじと見て、目線が私のお腹に向かう。
私はお腹を両手で隠して「わーっ!!」と大声を上げれば、食堂に二階堂さんや安寿達のいつものメンバーが「どうかしたのか?」と不思議そうに顔をのぞかせた。
「なんでもありませーん!」
「ふーん?」
「マノ、お腹すいたー! キュウリー!」
「おやつ無いの?」
「お菓子! お菓子!」
賑やかなメンバーの声に、私は少し笑って、腰に手を当て椅子から立ち上がる。
「もう。わかりました。美味しい物を作ろうじゃないですか!」
今は、青龍が動けない状態ならば、色々考えても仕方がない。
私には私の出来る範囲の事をするしかないのだ。
もう、過去の記憶を取り戻してしまったのだから、向き合って受け入れて、妖としての『雛姫麻乃』として生きていく。
「オレも手伝おう」
「はい。スイが手伝ってくれるなら、いっぱい作れそう」
スイが着物の袖から襷を取り出すと襷掛けにして、私の後に続いて厨房へとやってくる。
手伝ってくれる気は満々のようだ。
私も厨房の壁に掛けているエプロンを手に取る。
「さて、今日も美味しい物作りといきましょうか!」
私は職場、厨房で元気に声を出し、卵と小麦粉に牛乳を片手に業務用の大きなボウルをスイに手渡す。
簡単なパンケーキ作りに「手抜きだ!」と食堂から声が上がるものの、「おやつは業務に含まれていません。サービスですからね?」と笑って返す。
スイが隣で「そういえば、朝と夕飯だけの話だったからな」と、今更の業務内容の確認にも私は笑う。
熱したフライパンにパンケーキの種を流して焼いて、白いお皿の上に載せ、バターとメープルシロップを出しておく。
各自が自分の分を持っていき、声を合わせる。
「いただきまーす!」
元気な声が宿舎に響き渡ると、いつの間にか、食堂に妖達が顔を覗かせて、私は厨房へ引っ込むと再びパンケーキを焼くために腕を振るう。
私、雛姫麻乃。
少し不思議な職場で、自分自身も不思議な生き物ではあるのだけれど、今日も元気に食堂の厨房で働いています。
おおかみ宿舎、本日も大賑わいの食堂です。
____麻乃の章・完_____
あとがき
後書きとか書く場所があれば良かったのですが、無いので……
まだ伏線回収できていませんが、キャラ文芸の大賞参加用の話ですので、長々と書くと収拾がつかない長編になりますので、一旦、ここで完結です。
(他のアルファポリス作家様達と「書いてみようー!」と、一緒に参加していましたので、ノリで書いておりました)
キャラ文芸の大賞では三位にランクインで終了致しましたが、皆様の投票のおかげでございます。
ありがとうございました!! キャラ文芸は初めて書いたので、勝手がわからず、キャラ文芸とは逸脱した恋愛小説になっていたような……すみません;;
また機会がありましたら、頑張らせていただければと思います。
もう一つのキャラ文芸の方を終了させるために、中途半端で申し訳ありません。時間が足りなかったので💦
時間がありましたら、色々書き足したり、話を膨らませて、最後まで書きたいです。
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