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三章
麻乃の夢③
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私の幸せな世界は、火の轟轟という音と共に崩れていく。
小さい頃から何度も夢に見たその光景は、燃えて燃えて燃えて、何処にも逃げ場など無い。
いつも炎の中で揺らめいて見つめていた白い虎は父だった。
炎の中で燃えて踊る人影は、母だった。
そして、やっと私は真相に辿り着いた。
思い出した。全ての元凶、私から父を奪い、母を奪った男を、ようやく何度も悪夢の様な夢に苦しんで藻掻いて、私が『透明人間』の様な存在にされた理由も。
父がその男から私を守る為に、死ぬ間際に掛けてくれた術だった。
私に悪意のある者は、私の存在が見えなくなる。
私の周りは常に、その男の配下が居たという事だ。
だから私はいつも他の人には、段々と見えなくなっていっていたのだ。
悪意のある者から守る術は、私が御守さんに出会うことで解けるようにしていたのは、父が私を御守さんに託したという事だ。
「僕の可愛いお姫様。幸せになっておくれ」
全身焼け爛れて瀕死の私を、父は全ての力を使い治癒した。
白虎とは治癒に長けた妖でもあった。
麒麟の幸志さんは別格ではあるけれど、父は全てを懸けて私を死の淵から蘇らせ、命を落としたのだ。
父の愛を、私は嬉しくも思うし、それ以上に悲しんだ。
父の命と引き換えに、偉大な白虎という妖が消えてしまったのだから……
「……の、麻乃。大丈夫か? 魘されているが……また夢を見たのか?」
寝ている私を揺り動かし、心配そうに御守さんが私を覗き込んでいる。
目を覚まして、心配そうな御守さんの顔を見るのは辛いけれど、安心もする。
「はい。私、父と母を殺した人物を、思い出しました……だから、もう、今日でこの夢は終わりかもしれません」
「……そうか。オレに、力になれることがあれば、何でも言ってくれ」
「はい。御守さんには、こんなに迷惑をかけて、申し訳ないですけど……私のそばにいつもいてくれて、ありがとうございます」
私はベッドの横で床に布団を敷いて、毎日一緒に寝てくれている御守さんにお礼を言い、微笑んだ。
御守さんは私を抱きしめてる。
この温かい人が私のそばに居てくれる限り、私に迷いはない。
「御守さん……いいえ、スイ。私、あなたが大好きです。子供の頃から、これからも」
「ああ。知ってる。オレも、麻乃が一番大事だよ」
頬を撫でられて熱がほんのりと触られた箇所から感じ取れる。
もう、ハッキリした記憶があるのだから、悪夢を見ることはないだろう。
「あの日、スイは私達家族と離れて、仕事に行っていたよね」
「そうだ。今にして思えば、オレを引き離す為の事だったんだろうな」
「私、あの日……遊園地で、スイを見たの。私はスイを追いかけた」
「オレが遊園地に行ったのは、事件の後だ」
「うん。夢で見てハッキリわかった。水越しに見る人影のようなものだったから……小さい頃はそれすらわからなかったの」
そして、私は一人、偽物のスイを追いかけた先で、一人の男と出会った。
小さい頃から何度も夢に見たその光景は、燃えて燃えて燃えて、何処にも逃げ場など無い。
いつも炎の中で揺らめいて見つめていた白い虎は父だった。
炎の中で燃えて踊る人影は、母だった。
そして、やっと私は真相に辿り着いた。
思い出した。全ての元凶、私から父を奪い、母を奪った男を、ようやく何度も悪夢の様な夢に苦しんで藻掻いて、私が『透明人間』の様な存在にされた理由も。
父がその男から私を守る為に、死ぬ間際に掛けてくれた術だった。
私に悪意のある者は、私の存在が見えなくなる。
私の周りは常に、その男の配下が居たという事だ。
だから私はいつも他の人には、段々と見えなくなっていっていたのだ。
悪意のある者から守る術は、私が御守さんに出会うことで解けるようにしていたのは、父が私を御守さんに託したという事だ。
「僕の可愛いお姫様。幸せになっておくれ」
全身焼け爛れて瀕死の私を、父は全ての力を使い治癒した。
白虎とは治癒に長けた妖でもあった。
麒麟の幸志さんは別格ではあるけれど、父は全てを懸けて私を死の淵から蘇らせ、命を落としたのだ。
父の愛を、私は嬉しくも思うし、それ以上に悲しんだ。
父の命と引き換えに、偉大な白虎という妖が消えてしまったのだから……
「……の、麻乃。大丈夫か? 魘されているが……また夢を見たのか?」
寝ている私を揺り動かし、心配そうに御守さんが私を覗き込んでいる。
目を覚まして、心配そうな御守さんの顔を見るのは辛いけれど、安心もする。
「はい。私、父と母を殺した人物を、思い出しました……だから、もう、今日でこの夢は終わりかもしれません」
「……そうか。オレに、力になれることがあれば、何でも言ってくれ」
「はい。御守さんには、こんなに迷惑をかけて、申し訳ないですけど……私のそばにいつもいてくれて、ありがとうございます」
私はベッドの横で床に布団を敷いて、毎日一緒に寝てくれている御守さんにお礼を言い、微笑んだ。
御守さんは私を抱きしめてる。
この温かい人が私のそばに居てくれる限り、私に迷いはない。
「御守さん……いいえ、スイ。私、あなたが大好きです。子供の頃から、これからも」
「ああ。知ってる。オレも、麻乃が一番大事だよ」
頬を撫でられて熱がほんのりと触られた箇所から感じ取れる。
もう、ハッキリした記憶があるのだから、悪夢を見ることはないだろう。
「あの日、スイは私達家族と離れて、仕事に行っていたよね」
「そうだ。今にして思えば、オレを引き離す為の事だったんだろうな」
「私、あの日……遊園地で、スイを見たの。私はスイを追いかけた」
「オレが遊園地に行ったのは、事件の後だ」
「うん。夢で見てハッキリわかった。水越しに見る人影のようなものだったから……小さい頃はそれすらわからなかったの」
そして、私は一人、偽物のスイを追いかけた先で、一人の男と出会った。
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