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1章
街に行く準備をしよう
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ゲッちゃんの羽の色を染める為に、木で作った大きなお皿に、色の濃い花や木の実を採取しつつ、のんびりと散策してジャングルの中を、イクシオンとゲッちゃんとデンちゃんと歩く。
「この花はどうかな?」
「それなら色が濃いから良さそうだ。なるべく黄色をメインにしていこう。黄色に青なら割りと何処にでもいる鳥に見えるからな」
スカイブルーに白い線の入ったゲッちゃんの体の白い部分を黄色く染めて、少しでも聖鳥とはわからないように染めるのである。
直ぐに落ちちゃうみたいだけど、一週間もしないで帰ってくるというし、予備を小瓶に入れて持って行くぐらいで良いかな? と思ってる。
「街に行くの、楽しみだね!」
「街と言っても、ヴァンハロー領に行くだけだけどな」
私にとってはここ以外、というのが心躍るのだよ? それにヴァンハロー領は獣人の街らしいので、ケモ耳が! フサフサがいっぱいのパラダイスに違いない!!
期待しない訳が無い!!
「早く行きたいねー」
「今日中に備蓄庫の肉を平らげないとな」
街に行く前に、備蓄庫の中身も少し片づけようという事で、ここ二、三日は食事の量が多い。
どうせ、ガラス瓶の中にあれば腐らないから良いと思うんだけど、新しい物を詰め込むのに、少しでもガラス瓶は開けておこうという話で……
明日にでも街には行けそうな勢いで順調に減っていっている。
イクシオンが立ち止まると、複数の手に持っていた武器を地面に置く。
「リト、ここら辺で一度、試しても良いか?」
「うん。あんまり勢いよくやると大変だから気を付けてね? 軽くだよ」
イクシオンが手に持っているのは私が愛用している魔法の斧。
どうやら、この世界では魔法の武器って少ないそうだ。
魔法自体は人は出せるけど、それ程の威力は無いらしく、魔法の武器というのは国宝級とかなんとか……
イクシオンに武器部屋の武器を見て貰ったところ、口を開いたまま呆然としていた。
どうやら、私の前に住んでいた賢者さんは魔法の武器をかなり貯め込んでいたみたい。
イクシオンが試し切りしたいと言うので、何本か持ってきたのである。
「縦に振ったら上に飛んだから、上に向けると良いかも?」
「わかった。リトは危ないから少し下がっていろ」
「はーい。ゲッちゃん、デンちゃんこっちにおいでー」
二人を自分の近くに呼び寄せて、斧を下から上に振り上げたイクシオンに「頑張れー」と声を掛ける。
シュンッと白い光が斧から上がり、空へと消えた。
相変わらず、この魔法の斧は景気よく上がる。
「どう? 結構便利で使ってたんだけど、どういう武器か分かった?」
「ああ、凄いな。感じからして使用者の力加減で威力が変わると言うのは、ブレイカーバスターに似ているかもしれない」
「ブレイカーバスター?」
「竜人の国にある魔法の武器で、斧の形をしているんだが、使用者が力を入れる程、攻撃された相手は力を失うと言われている斧で、殺傷力は無いのに無力化してくる……と、聞いたことがある。これはその逆という感じだな」
「じゃあ、もしかしたら、ここで賢者さんがお正月の魔獣を倒して、竜人の方でもお正月魔獣が倒されて、同じ様な双子の斧が出たのかもしれないね」
私の包丁とイクシオンの所で出た包丁の鞘が同じ物だとしたら、何かしら繋がりはあるのかもしれない。
一応、鞘も魔法の武器らしいけど、効果がイマイチわからない為に二つを一つに合わせてみるつもりらしい。
包丁も効果は分からないしね。冷たく凍った物でも切れるくらいかな?
次にイクシオンにお願いして杖もやってもらった。
杖に関しては私は中二病な発言をして終わったから、実は少し気になっていたのだ。
「目くらましの魔法で良いか……『リ・オム』」
杖の先から空に向かいオレンジ色のデンちゃんサイズの炎が打ち上がり、まるで溜め込んだ炎が爆発する様に空に広がった。
「うわ……っ」
「ここまでの威力とは……」
「イクシオン、リオムってどういう意味?」
「火の玉という意味だ。あと、リで一回止める発音をする」
なるほど、ここの世界の言葉じゃなかったから、ファイヤーボールが出なかったのか……
ファイヤーボールも火の玉だしね。つまり、この世界の言葉を覚えれば、私にも使えるのかも?
「イクシオン、杖貸して」
「リト、威力は小さい物でも大きく反映されるから、気を付けろ」
「はーい。イクシオン、回復ってここの世界では何て言うの?」
「回復は、レ・ミーフだ。レで一回止める発音だが、回復魔法というのは無いぞ?」
「えぇーっ、無いの?」
「あれば、オレも怪我なんてしてない」
残念。こんなファンタジー世界なのに、回復魔法が無いなんて……回復魔法に少し夢見た私の気持ちを帰して欲しい。
でも、確かに回復魔法があれば、イクシオンはあんな瀕死状態では無かっただろう。
イクシオンが元気になったのはモギア草のおかげ。
あの染みる薬草、実はすっごく高級品で、生えている場所がほとんど無いのだそうだ。
流石、賢者が暮らしていただけはある。
また摘み採って薬にしておかなきゃ! 備えあれば患いなし!
「ワオン!」
「うわっ、デンちゃん、これは食べ物じゃないのー!」
「ワフッ!」
「デン、待て。リトを困らせるな」
「クゥーン」
手に持っていた花弁と木の実を漁っていたデンちゃんを、イクシオンが声を掛けただけで止めてくれたんだけど、デンちゃんはイクシオンの手下か!? というぐらいに言う事を聞いている。
イクシオンの話では私を守る守護獣じゃなかったのかな? おかしくない? 酷くない!?
私が口を尖らせると、ゲッちゃんが揶揄う様に「ゲキョキョキョ」と鳴いて私の周りを飛びまわる。
「もぉー! ゲッちゃんもデンちゃんも覚悟しなさい!」
「ワフッ!」
「ゲキョキョー」
「待て―!」
手に持っていたお皿を地面に置いて、私達が追いかけっこを始めて、ワァワァ騒いでいるのをイクシオンが目を細めて笑っている。
そんな姿をチラッと見て、胸がドキッとした。
空の下で見るイクシオンは、やっぱり大人の男の人で、なんだか、追いかけっこをしている私は、子供っぽいかな? とか、今まで意識しなかった、変に恥ずかしいと思う気持ちを誤魔化すように走った。
この気持ちは、何だろう? これが『好き』の感情なら、困る……心臓がもたないよ。
「この花はどうかな?」
「それなら色が濃いから良さそうだ。なるべく黄色をメインにしていこう。黄色に青なら割りと何処にでもいる鳥に見えるからな」
スカイブルーに白い線の入ったゲッちゃんの体の白い部分を黄色く染めて、少しでも聖鳥とはわからないように染めるのである。
直ぐに落ちちゃうみたいだけど、一週間もしないで帰ってくるというし、予備を小瓶に入れて持って行くぐらいで良いかな? と思ってる。
「街に行くの、楽しみだね!」
「街と言っても、ヴァンハロー領に行くだけだけどな」
私にとってはここ以外、というのが心躍るのだよ? それにヴァンハロー領は獣人の街らしいので、ケモ耳が! フサフサがいっぱいのパラダイスに違いない!!
期待しない訳が無い!!
「早く行きたいねー」
「今日中に備蓄庫の肉を平らげないとな」
街に行く前に、備蓄庫の中身も少し片づけようという事で、ここ二、三日は食事の量が多い。
どうせ、ガラス瓶の中にあれば腐らないから良いと思うんだけど、新しい物を詰め込むのに、少しでもガラス瓶は開けておこうという話で……
明日にでも街には行けそうな勢いで順調に減っていっている。
イクシオンが立ち止まると、複数の手に持っていた武器を地面に置く。
「リト、ここら辺で一度、試しても良いか?」
「うん。あんまり勢いよくやると大変だから気を付けてね? 軽くだよ」
イクシオンが手に持っているのは私が愛用している魔法の斧。
どうやら、この世界では魔法の武器って少ないそうだ。
魔法自体は人は出せるけど、それ程の威力は無いらしく、魔法の武器というのは国宝級とかなんとか……
イクシオンに武器部屋の武器を見て貰ったところ、口を開いたまま呆然としていた。
どうやら、私の前に住んでいた賢者さんは魔法の武器をかなり貯め込んでいたみたい。
イクシオンが試し切りしたいと言うので、何本か持ってきたのである。
「縦に振ったら上に飛んだから、上に向けると良いかも?」
「わかった。リトは危ないから少し下がっていろ」
「はーい。ゲッちゃん、デンちゃんこっちにおいでー」
二人を自分の近くに呼び寄せて、斧を下から上に振り上げたイクシオンに「頑張れー」と声を掛ける。
シュンッと白い光が斧から上がり、空へと消えた。
相変わらず、この魔法の斧は景気よく上がる。
「どう? 結構便利で使ってたんだけど、どういう武器か分かった?」
「ああ、凄いな。感じからして使用者の力加減で威力が変わると言うのは、ブレイカーバスターに似ているかもしれない」
「ブレイカーバスター?」
「竜人の国にある魔法の武器で、斧の形をしているんだが、使用者が力を入れる程、攻撃された相手は力を失うと言われている斧で、殺傷力は無いのに無力化してくる……と、聞いたことがある。これはその逆という感じだな」
「じゃあ、もしかしたら、ここで賢者さんがお正月の魔獣を倒して、竜人の方でもお正月魔獣が倒されて、同じ様な双子の斧が出たのかもしれないね」
私の包丁とイクシオンの所で出た包丁の鞘が同じ物だとしたら、何かしら繋がりはあるのかもしれない。
一応、鞘も魔法の武器らしいけど、効果がイマイチわからない為に二つを一つに合わせてみるつもりらしい。
包丁も効果は分からないしね。冷たく凍った物でも切れるくらいかな?
次にイクシオンにお願いして杖もやってもらった。
杖に関しては私は中二病な発言をして終わったから、実は少し気になっていたのだ。
「目くらましの魔法で良いか……『リ・オム』」
杖の先から空に向かいオレンジ色のデンちゃんサイズの炎が打ち上がり、まるで溜め込んだ炎が爆発する様に空に広がった。
「うわ……っ」
「ここまでの威力とは……」
「イクシオン、リオムってどういう意味?」
「火の玉という意味だ。あと、リで一回止める発音をする」
なるほど、ここの世界の言葉じゃなかったから、ファイヤーボールが出なかったのか……
ファイヤーボールも火の玉だしね。つまり、この世界の言葉を覚えれば、私にも使えるのかも?
「イクシオン、杖貸して」
「リト、威力は小さい物でも大きく反映されるから、気を付けろ」
「はーい。イクシオン、回復ってここの世界では何て言うの?」
「回復は、レ・ミーフだ。レで一回止める発音だが、回復魔法というのは無いぞ?」
「えぇーっ、無いの?」
「あれば、オレも怪我なんてしてない」
残念。こんなファンタジー世界なのに、回復魔法が無いなんて……回復魔法に少し夢見た私の気持ちを帰して欲しい。
でも、確かに回復魔法があれば、イクシオンはあんな瀕死状態では無かっただろう。
イクシオンが元気になったのはモギア草のおかげ。
あの染みる薬草、実はすっごく高級品で、生えている場所がほとんど無いのだそうだ。
流石、賢者が暮らしていただけはある。
また摘み採って薬にしておかなきゃ! 備えあれば患いなし!
「ワオン!」
「うわっ、デンちゃん、これは食べ物じゃないのー!」
「ワフッ!」
「デン、待て。リトを困らせるな」
「クゥーン」
手に持っていた花弁と木の実を漁っていたデンちゃんを、イクシオンが声を掛けただけで止めてくれたんだけど、デンちゃんはイクシオンの手下か!? というぐらいに言う事を聞いている。
イクシオンの話では私を守る守護獣じゃなかったのかな? おかしくない? 酷くない!?
私が口を尖らせると、ゲッちゃんが揶揄う様に「ゲキョキョキョ」と鳴いて私の周りを飛びまわる。
「もぉー! ゲッちゃんもデンちゃんも覚悟しなさい!」
「ワフッ!」
「ゲキョキョー」
「待て―!」
手に持っていたお皿を地面に置いて、私達が追いかけっこを始めて、ワァワァ騒いでいるのをイクシオンが目を細めて笑っている。
そんな姿をチラッと見て、胸がドキッとした。
空の下で見るイクシオンは、やっぱり大人の男の人で、なんだか、追いかけっこをしている私は、子供っぽいかな? とか、今まで意識しなかった、変に恥ずかしいと思う気持ちを誤魔化すように走った。
この気持ちは、何だろう? これが『好き』の感情なら、困る……心臓がもたないよ。
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