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1章 

年末年始2

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 真夜中にグラッと地面が揺れて、バシャンガシャンと外から激しい音が響いた。
ベッドから飛び起きると、またグラッと揺れて、窓の外にガラスが落ちる様な音が響く。

 まさか、ガラス割れてないよね!?
ガバッと窓ガラスを覗けば、ちゃんと窓ガラスはある。
無いのはいつも叩き落している氷柱つららが無い事から、氷柱が振動で落ちたのだろう。
またグラッとして、「バウバウ!」とデンちゃんが玄関で騒いでいて、「ゲキョ―ッ!」とゲッちゃんも珍しく起きて玄関で輪騒いでいた。

「二人共どうしたの!?」
「ヴーッ! バウ!」
「ゲキョキョー!」

 大騒ぎする二人と地響きのような振動に玄関のドアを開けると、雪が止んでいて、細い月の光の下で木彫りの熊を、そのまま氷にしたと言わんばかりの巨大な熊が歩くたび、ズシンと地面が揺れる。

「なっ、なにアレ……」
「ガルルルッ」
「ゲキョー!」
「ちょっ! 駄目だよ! 二人共帰ってきなさいっ!?」

 ゲッちゃんが先に飛び出すと、デンちゃんも外に飛び出して氷の熊に向かって走って行っている。
これは、マズい……予想外というか、滅茶苦茶ヤバーいッ!!

 二人を追うべきか考えて、寒さに心臓がキュッと冷えて、先ずは服を着こまないと凍死だと、急いで服を着こむ。
手が上手く動かずに、心臓がドキドキと騒いで、急がなきゃどうすれば良い? と、この状況で自分が取らなきゃいけない行動は何かを必死で思い起こす。

 服を着こんで、小屋が壊された時にせめて無くさない様にしたい物……傷薬、食料、あとは何だろう? とにかく、武器だ。
魔法の武器は斧と剣しか試したことは無いけど、持てるだけ持ってる方がいいかな? 

「リュックサックに入れるのは、えーと、本とメモと傷薬と飴の缶……紳士さんの手紙、あと、デンちゃんのジャーキーに乾パン……あんまり入らないな……」

 外ではズシンと振動が細かくして、デンちゃんの唸り声やゲッちゃんの声がしている。
急げ、急がないと、こんな事なら、弓の練習はちゃんとしておくんだった。
距離があった方が逃げやすいのに、危険な物は黒い大地からこっちの緑の大地に来れないと思ってたのに、何で、何で、ここに来るのよ!?

 武器を玄関近くに色々置いて、リュックサックを背負って武器を手にドアを開けると、氷の熊にゲッちゃんとデンちゃんは攻撃していて、私は雪を薙ぎ払うのに使った剣を手に持つ。
五メートルくらい届くからリーチは五メートル、近付き過ぎず、ゲッちゃん達に当たらない様に気を付けなきゃ。

「この武器で、大丈夫……? 斧、リーチなら、軽く振っただけの斧、そう、斧の方だ」

 木を倒した時、かなり遠くの木まで倒した斧なら、軽く振ってあの威力なら、力一杯振ればかなりの距離が稼げるはず。
試した事がないけど、やれる? いや、やるしかない!

「私の……私の、この四ヶ月半を、壊されてたまるかっ!!」

 魔法の武器の威力は凄かったんだから、大丈夫だ! ウサギを解体するより、氷の熊を壊すことの方が楽に決まってる!
ビビッてたまるか!! 絶対に、この小屋もゲッちゃんもデンちゃんも、私が助けなきゃ!
玄関に集めた荷物の中にあった、紳士さんが『まだ見ぬ君へ』さんへ入れていた、ファー付きのケープを羽織って、斧を手に外に出る。

「ゲッちゃん! デンちゃん! 退いてえぇぇぇ!!」

 両手で斧を持って、走り出すと雪に足をとられて走る速度は失速するけど、意気込みだけは失ってはいない。
横には薙ぎ払うと二人に当たりそうだから……縦に斬る!
縦に思いっきり振りかぶって雪の中に上から下におろすと、空に向かってシュッンと三日月型の光が上がっていく。

「無理かっ! ああもう! ゲッちゃん! デンちゃん邪魔ぁぁぁ!!」
 
 二人を怒鳴りつけると、二人が氷の熊の背中に飛び掛かって、今なら横払いでイケる! と斧を横に思いっきり振ると、シュンッと三日月型の光がまた出る。
氷の熊の足が弾け飛んでドシンッと地面によろける。そこへデンちゃん達が襲い掛かっているけど、非常に戦いづらい。
せめて体の大きなデンちゃんだけでも退いてくれないと、攻撃のしようが無い。
 リュックサックを肩から下ろして、中からジャーキーを取り出す。

「デンちゃーん! ご飯だよ! ほら、おいで!!」
「ワフッ!!」

 手でジャーキーを左右に振って、デンちゃんがこちらを向いて尻尾を振ると真っ直ぐこっちへ駆けて来る。
デンちゃんにジャーキーを渡すと、デンちゃんが夢中になっている間にもう少し近寄って、もう一撃と、斧を構えながら歩いていると、ズボッと雪の中に体が沈む。

「うわあぁっ!?」

 腰の辺りまで雪に埋まってもがくと、余計に雪に足をとられて体が沈む。
私が雪に埋もれている間に、氷の熊はまた立ち上がる。

 ガアアアァァァ!!

 氷の熊の声に、ヤバい死んだ!? と、今更ながらに少し頭の血が下がり始めた時、体が下から押し上げられて、雪の中からバッとジャンプする様に浮かび上がる。

「へっ?」
「ワフッ!」
「デンちゃん!?」
「ワフッ!」

 雪の下から、デンちゃんが潜って背中に乗せて、私を雪から救い出してくれたらしく、ジャンプ力が凄く高いようで、氷の熊の上を飛び越えていた。

「ふわぁぁぁ!!」
「ワオーン!」
「ゲキョー」

 ゲッちゃんが私の方へ飛んできてデンちゃんの頭の上に乗る。
氷の熊に攻撃するのに二人が私の所に居るなら、遠慮なく放てる。今ならイケる。
もう一度、斧を手に構えると、ゲッちゃんがデンちゃんの耳を自分の両羽で押さえ込んで、私が斧を振ってもデンちゃんの耳に当たらない様にしてくれる。

「てりゃああぁぁ!!」

 斧を横に振ると、三日月の形の光がまたシュンッと音を立てて熊の体に当たって、ガッコンと音がすると、氷の熊の体がゆっくりとスライドして二つに分かれていく。
ズシンッズシンッと地面が揺れて、氷の熊が雪の上に倒れて動かなくなる。

「か、勝った!? やった!?」
「ワフッ!」
「ゲキョキョー!」

 興奮気味に、マジマジと氷の熊を見て、もう動かないだろうかと息をのむと、氷の熊が眩しいぐらいに光り輝き、辺り一面が目が明けられないくらいの光に包まれる。

「うわっ! なに!? なにこれ!! 眩しっ!」

 目を瞑って、光が収まるまで薄目で見ていると白い光は空へと飛んで行って、徐々に光は消えて行った。
何だったんだろう……今の?

 あとに残ったのは、氷で出来た包丁。
持ち手が可愛い熊のマークの包丁……いや、マジでこれ、なに? 
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