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1章 

雪かき

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 深々しんしんと雪が降り、私は学んだ。
暖炉のフック、実はコレはお湯を沸かす為に常に必要な物だからだったのではないかと……
朝、ドアの前にお鍋のお湯を流してドアの前の雪を溶かしつつ開き、デンちゃんが散歩に行った後は、ひたすら玄関前が雪に埋もれないように雪かきの日々である。
サボると雪が積もり、ドアが開けられなくなるからサボれない。
 雪かきから戻ると、お鍋のお湯と水で手を温めたりするのに必要な物で、かまどに火を入れてお湯を温めるより断然、暖炉で常にお湯を沸かせた状態の方が部屋も暖かいし、私の手間も省ける!

「学習するのに時間かかったけどね……ハハハ」

 本当に、雪と戦う日々は辛い。
しかも日々、寒さと雪との戦いで、雪素人の私には過酷な日々である。

 雪が私の膝丈まで積もり、これは雪かきだ! と、雪かきをした次の日にサバちゃんよろしく熱を出した私は、三日間程ベッドの上でゼキキノコの熱さましを飲んで、ヒンヒン泣いていた。
その間、雪は降り積もり、折角雪かきした玄関にはまた雪が膝丈まで積もってしまったのだった。
それからはなるべく頑張って雪かきをしている。

 一度、あんまりにも雪が多いから、木べらじゃスコップにならないと、大きめの板でちりとりの様にして雪かきをしたら、割りと良かったので、ちりとりの様なスコップを作ろうと、木を彫りたかったんだけど、丁度いい板が無くて、木を倒しに雪に足を取られながら庭の門まで出た。
門の外は、デンちゃんが散歩に行く時にジャンプしながら歩く穴ぼこだらけの雪で埋もれている。

 そこで私が取り出したのが武器庫の魔法の武器。
スパーン横薙ぎに払う様に振ると雪がブワッと飛び散って、扇状に雪が半径五メートル程無くなる。
思った通りの魔法の便利さに、私はデンちゃんの散歩のしやすさも考えて、スパンスパンと薙ぎ払い、小屋の周りを粗方雪の高さを低くすることに成功した。

 小屋の周りでは使えないのが残念でもあるけど……小屋の周りでやるとあやうく小屋を斬るところだった。こんな雪の中で家無しにはなりたくはない。
だから、家の周りは自力で雪かきしかない。

 前に薪を切った所まで行き、小屋に引き返して斧を持ってきて、軽く斧で木を切って丁度いい大きさと分厚さの板を何枚か作り、小屋に引き返して、黙々と木を彫り、ちりとり型のスコップを作って、毎日の雪かきに使っている。

 ただねー……本当、軍手でもいいから手袋が欲しい!!
しもやけは出来るし、手の感覚は無くなるし、包帯でぐるぐる巻きにしてその上に靴下を被せて頑張ってるけど、冬が終わる前に手が凍傷になりそうで怖いよ。

 毛糸があっても手袋とか編んだことが無いから、私には無理。
編み物の本は小屋には無いし、網籠の作り方で応用出来たら良いけど、多分、編み方自体が違うと思うから失敗すると思う。
たまに思う……ウサギの毛を剥いだヤツを捨てずに縫い合わせて手袋にでもすれば良かったって。

 来年もまだここに居るとしたら、ウサギの皮を剥いだ時に、冬の為に取っておこう。

「うーっ、寒ーい!!」

 歯をガチガチいわせて、小屋の中で雪かきを終えて戻った私は、木のお玉でお湯をお風呂場にあった鉄の桶に入れてお水を入れつつ手を突っ込む。
ジンジンと指先から熱が入り込み、「はぁぁ~」と声を出す。
 ついでに手袋代わりの靴下と、包帯も洗って硬くギュッと絞ると、木の棒と紐で作った十字架の様な物にぶら下げて十字架の上にくくり付けた紐を壁に掛ける。

 ハンガーを本当は作りたかったのだけど、私の技量では十字架の大きな物が精々だった。
服もこの十字架のハンガーに掛けて家の中で洗濯物は乾かしてる。
外に干したら……パリパリに凍ったのだ!!
有り得ないでしょ!? 薄氷が張って風になびいた状態でカチンカチン。

 冬場は家の中に干すことを学んだ私である。

「デンちゃん、肉球にモギア草塗ろうねー」
「キュウゥーン」

 デンちゃんが耳を下げて、尻込みするのを捕まえてガラス瓶から緑のねばねばを木のスプーンですくい上げて、手に広げる。
 モギア草は傷薬の薬草なんだけど、デンちゃんは雪の中で遊びまわるから、可愛い肉球がバックリ割れて血が出てしまって、それ以来、毎日塗り込んでいる。
 ついでに私のしもやけになってしまった手も、薬草で少しだけ状態が良くなるからね。 
毎日の雪かきにお散歩だから、お互いに手のお手入れは欠かせない。
染みるけど、塗らなかったらもっと酷い事になるから、嫌がられてもデンちゃんを逃がすわけにはいかないのだ。

 塗り終わると、ジャーキーをあげて暖炉の前でガジガジ噛んでいるのがデンちゃんの嫌なことをされた後のご褒美であり、オヤツタイムだ。
私も自分用の鶏肉ジャーキーを一枚食べて、少しコショウの辛さで体を温める。
よく噛んで、じっくり味わいつつ、私も雪かきのご褒美とオヤツタイムとしている。
人間、ご褒美があった方が動きやすいよね。
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